第24話 聖女様との対面
祖父母の使用人に扮した私達は、夜会の会場には入ることを許されてはいません。控室から覗きつつ、夕実に接触を試みます。お手洗いに行く時に私が近づくのが、一番いいのですが、今回は聖女様を王宮内で預かっているようで、アンネリーゼをよく知る人達の前に立つのは勇気がいります。
そして、多分呼ばれているであろう公爵家に関係のある人達に見つからないようにしなければいけないのです。蒼が極力守ってくれるとは言え、不用意にバレて迷惑をかけたくないです。
用意する私の手が止まります。底知れぬ恐怖が自身を支配していきます。大丈夫、大丈夫。夕実に、一人ではないことを伝えに行くだけなのですから。
メイクのおかげなのか、服装のおかげなのか、私に気づいた者はいないようでした。一度お酒に酔った男爵家の方が、絡んできたぐらいで、それも蒼が丁寧に引き剥がしてくれました。
蒼は華奢ではありますが、やはり男性なので頼りになります。
王族が会場に入られます。陛下と王妃様が、通られる瞬間、凄く緊張しました。特に王妃様は、何もかも見透かしていらっしゃるような瞳をされていて、今は怖くて仕方ありません。幸いにも私は気づかれませんでした。
聖女様は、アラン王子にエスコートされています。やはり、でした。
あの顔は夕実に間違いありません。夕実は蒼に気がついたみたいで、私の方も見たようです。私は、王子に気付かれたくない一心で終始俯いておりましたが、夜会が終わった後の蒼の表情から察することができました。
蒼が小さく折りたたんだ手紙を夕実に渡したそうです。王子の監視が厳しく、渡すだけで精一杯だったと悔やんでいました。
夕実のことですから、どうにか頑張ってくれるはずです。夕実はホッとした様子だったようです。やっぱり一人で、全く何もわからない場所に放り出されるのは、怖いです。
私が、蒼と夕実に会った時は、二人が私の敵ではないと、すぐにわかったので、助かりましたが、この世界では誰が敵で誰が味方かは、はっきりわかりません。
ましてや、平民の夕実には、貴族の腹の内や、駆け引きなど、わからなくて当然なのですもの。
私はずっと逃げていて、今更名乗ることすらできない臆病者ですが、夕実のために、できることがあるのなら、力になれると思います。
例えば、貴族のしきたりやら、どの派閥、考え方などです。
王子がいたら、大丈夫でしょうが、夕実はゲーム内の王子に良い印象を持っていなかったので、ストレスを感じるのではないでしょうか。
夕実は、私があの家に転がり込んでからはずっと一貫してゲームの中のことや、ラノベという書籍を貸してくれて、対策を講じてくれました。
今私はその知識を総動員する時期かもしれません。でもあくまで、夕実の邪魔をしないようにしなければなりません。
彼女は頭の良い人なので、常に先のことを考えられるのですから。
悪役?令嬢を召喚したけど、可愛すぎて色々無理 mios @mios
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。悪役?令嬢を召喚したけど、可愛すぎて色々無理の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます