第23話 知らせ
王宮が新しい聖女の召喚に成功した、と知らせが入ったのは、こちらに来てから丁度一週間経った頃でした。
多分その聖女は夕実だと思われます。聖女と言うからには命の危険はないと思われますが、近づいてくる貴族には気をつけた方が良いでしょう。
夕実は頭がいいので、何とかしてくれるとは思いますが、やはり心配です。ゲームでは、そんなに厄介な貴族は出てこないからです。
祖父母の家に厄介になって、祖父には泣いて喜ばれました。公爵家にはまだ内緒にしてもらいましたが、少し残念そうに見えました。もしかしたら、使用人の一部は心配してくれているのかもしれません。
祖父と蒼は、血は繋がっていませんが、どこか似た雰囲気があり、すぐに打ち解けていました。
私は使用人が着るような作業着を着て過ごしています。ドレスを着てしまうと、どこかで見られて正体がバレてしまうかもしれません。メイクで別人になることができるので、変装はしっかりして、日々を過ごしています。
誰も、私が新しい侍女だと思うだけで、アンネリーゼだとは気づかないようでした。声でバレてしまうことも考えて、少し低めの声で、極力話しすぎないようにしています。
蒼は、買い出しに一緒に行ってくれたり、料理を作ったりして、普段と変わらない生活をしています。
「あー、花に水やれないとやっぱり枯れるよなー。」
あちらの世界から急に呼ばれてきたのですから準備できるわけもないですが、せっかく育てていた綺麗な植物が枯れてしまうのは残念です。
祖母が意外なことを言います。
「あの家なら今時間が止まってるから大丈夫。ついでに見えなくしておいたからね。」
蒼は、不思議そうに尋ねます。
「どう言うこと?」
「私が死んだ後、あの家を売りに出しただろう、あの子達は。でも何度不動産屋が足を運んでも見つけられなかったんだよ。私が蒼と夕実のために残した家だからね。」
「ああ、確かに。売る話がなくなったって言ってた。」
「今回あんた達を召喚したのも、あんたの両親が急に来ることを察知したからだよ。あんた達二人がいなきゃ、あんたの両親はあの家に入れないからね。」
「さっぱり言ってることはわからないけど、でもありがとう。あの人達に、会いたくはなかった。」
「いいんだよ。私もあの子達には、家の中に入って欲しくなかったからね。お互いさまだ。」
二人が話しているのは蒼と夕実のご両親でしょうか。蒼と夕実を見ていると、そんなに酷い人達には思えないのですが、それこそ、私も人のことはいえないので、理解します。
「聖女様のお披露目会があるみたいだけど、あんたはどうする?」
祖母に聞かれた蒼が、答えます。
「勿論、行くよ。夕実に、会えるチャンスだから。」
私達二人は祖父母の使用人としてついて行くことになりました。
聖女様が夕実ならいいのですが、違う場合もありますので、目立つわけにはいきません。
蒼は、細いですが身長があるので、正装もきちんと着こなします。私は男性の正装など見慣れているにも関わらず、蒼の姿にドキドキしていました。
ギャップ萌えって言うのですか?こう言うの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます