第59話 エピローグ
「ちょっと、あなた。そろそろ起きて」
「ん……もう、ちょっと、あと5分だ……け」
「こら、起きなさい!遅刻するでしょ!」
身体がユサユサと揺さぶられている。
ゆっくりとゆっくりと意識が覚醒してくる。
でも油断すると、また深い眠りに落ちていきそうだ。
「ん?」
そのまどろみの中で何か柔らかな感触が唇に触れた。
そしてゆっくりと目を覚ます。
そして目の前には……
「やっと起きたかぁ~ホントに朝弱いんだから。
朝ごはん出来てるから支度できたら降りて来てね」
そう言って俺に笑いかけながら、背中を見せて部屋を出ていく。
懐かしい夢を見た。とてもとても懐かしい夢を見た。
いつの頃だろうか?……そうか、高校生の頃の夢か。
とても懐かしく色々なことが起こった高校生の記憶。
夢に見た光景は懐かしく、そしてとても感慨深い。
いま俺は26歳。高校を卒業し大学へと進んだ。
留年するようなこともなく無事に大学も卒業。新卒で会社に就職して今に至る。
そして先ほど俺を起こしてくれたのは妻だ。
彼女からは高校1年の時に告白を受け、高校1年の夏休みに定番で悪いが花火大会に一緒に行った時に俺から改めて告白をした。そして、彼女からも承諾を得て付き合うことになる。
そして大学卒業を機に、新卒で就職が決まったところでプロポーズ。快く受けてもらえたので結婚。いまは結婚して4年目だ。
しかし何故今になって高校生の頃の夢を見たのか。
それも夢の最後は、あの三枝光一事件の時を思い出すとは笑えない。
そういえばあの男、今頃どうしてるだろうか?
いや、全くこれっぽっちも関心はないよ?何とかなく思い出しただけだ。
俺はベッドから起き上がり、伸びをする。
「三枝光一か……」
何となく声に出してしまった。
あの事件後、そういえば久遠家、三枝家で家族会議になり、離婚していた楓と紅葉の両親がまさかの再会を果たしたんだよなぁ。
まあ、三枝家の長男が未遂とはいえ、久遠家の長女に暴行に及びそうになり、その父親に対しては恐喝を画策していたのだ。因縁があるとはいえ家族会議にはなるだろう。
警察沙汰になるかと思えば、両家の話合いにより和解となったと聞いた時には驚いた。確かに未遂ではある。罪には問えないのかしれない。でもそのままで済ませて良いのかと。俺はあの後に楓から連絡を受けた時に考えたものだ。
まあ、厳罰を強く望んだのは三枝家の方で、和解を勧めたのは被害にあった久遠家だったのは不思議なものだったが。
いや、楓の父は当然ながら烈火の如く怒り狂っていたそうだ。大事な娘に加え自身が標的になっていたのだから当然だろう。
しかしそれ以上に怒り狂っていたのが、事情を聞いて駆けつけた三枝光一の父だったらしく、途中からは久遠家が宥めるくらいだったそうだ。
しかし俺は何故、いまさら三枝光一のことを思い返しているのだろうか?
もしかして、誰かに顛末を聞かせたいのだろうか?
よし!もうあの男のことは忘れよう。それに会うこともないだろう。
何しろ三枝家からは絶縁され、二度と久遠家並びに今回の件に関わった全ての人とは金輪際接触をしないと取り決めがなされていたから。
当の本人も久遠美里さんからの明確な拒絶を受けて、全てを受け入れたそうだ。
だから俺が会うこともないだろう。
そして1階に降りると天使がいた。
「パパぁ~おはよぉ」
俺を見つけると凄い勢いで俺に飛びついてくる俺の天使。
もちろん天使は、俺と妻の間に生まれた娘である。
天使の熱い抱擁に全力で応え、娘を抱えたままにテーブルへと向かう。
そこには妻の用意した朝食が並んでいる。
俺は幸せだ。俺は自分の選択には一切の後悔がない。
あの時に想いに応えられなかった子たちに対しては、申し訳ない気持ちを一時期持ったこともあった。
でも、気持ちに応えられなかった子たちは笑っていた。例え内心で泣いていたとしても、笑って俺と彼女を祝福してくれた。
俺は彼女たちの本気に、自分の本気の気持ちを返したのだ。
それこそ俺が後悔の感情を持ち、彼女たちに慰めの言葉などかけること等できようはずがない。
だから俺は、自分を選んでくれた彼女と、そして自分が想いに応えた彼女と幸せになるのだ。
「……愛してるよ」
「ブッ!!
な、何よ、と、突然!?
わ、私も愛してるわよ!あなた……」
「パパぁ!!アタシは!?」
天使が俺にすねた顔を見せる。
「もちろん、パパの一番は……」
俺の言葉に天使は満面の笑みを浮かべ、そして妻は……
「(もう、一番は私でしょ!?)」
小声で呟き、少しだけすねていた。
幸せな日常の生活がこうして今日もはじまる。
幼馴染に浮気?された(告白前だから浮気じゃないけど)から絶縁してやる!そうしたら、いろんな幼馴染が俺の前に現れたんだが!? -完-
―――――――――――――――――――――――
【あとがき】
私の拙い作品にここまでお付き合い頂き、誠にありがとうございました。
後半は非常に遅筆でご迷惑をおかけしました。
仕事はしょうがないですが、様々な
一定の数の読者様がそれでもお付き合いくださったのは、本当に嬉しくそして感謝の気持ちでいっぱいです。
さて、今回で一旦「幼馴染に浮気?された(告白前だから浮気じゃないけど)から絶縁してやる!そうしたら、いろんな幼馴染が俺の前に現れたんだが!?」は終了です。
唐突にしかも曖昧な決着つけやがってと。
お怒りの読者様も多いかとは思いますが、考えに考えての結論です。
一応反響次第では告白シーン&その後を各幼馴染ごとに書くかもしれません。
ですが、一旦はこれでおしまいです!
少しお暇を頂いて書き溜めたあとに、次回作を執筆しようかなと思います。
やはりある程度は書き溜めしないと厳しいですね。今作は書き溜めなしで勢いのままにプロットもないままにガンガン書いてましたので、次回作では少し考えようと思います。
それでは「幼馴染に浮気?された(告白前だから浮気じゃないけど)から絶縁してやる!そうしたら、いろんな幼馴染が俺の前に現れたんだが!?」にお付き合い頂きましてありがとうございました。
次回作、またはもしかしたら書くかもしれない本作のオマケエピソードでお会いしましょう。
あ、そうそう。
幼馴染に浮気?された(告白前だから浮気じゃないけど)から絶縁してやる!そうしたら、いろんな幼馴染が俺の前に現れたんだが!? 鷹匠 @hawk99
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