第5話

時は少し遡り、ハミルトン中将とダウディング元帥との通信にまで辿る。


互いに軍人であり、軍艦と司令部との通信上、通信は軍当局によって監視されていた。

また、その後の降伏通信ももちろん当局も把握しており、傍受していた。


「で?首席参謀、あの恥ずべき中将の艦隊ごと敵艦隊を滅ぼすことは可能かね?」

「はっ、法務上でも彼らはまだ降伏したことになっておらず、また敵艦隊との交戦は一切の禁止事項は司令部より下令されておりません、射線上にたまたま友軍艦艇がいたという事になるでしょう。」

「射撃参謀のドローム中佐です、艦隊座標把握用の位置ビーコンの情報を流用し、全砲台による一斉射撃を行うことにより、効果的に撃沈することが可能でしょう。」

「なるほど、なるほど……いいだろう、やりたまえ。」

「了解しました。全砲台撃ち方用意。」


この号令とともに、地球軌道の全砲台群と月面要塞司令部が動き出した。

「撃ち方用意、第八砲台群、加速」

「第四十八月面軍用エネルギープラント全力稼働開始」

「第二観測衛星連隊、測距開始」

「第九砲台群は定期メンテ中だ!砲撃プランから外せ!」

「第三十八砲台破損!整備中の第六砲工兵連隊より第三砲台群への増派要請!」

「第二砲台群、稼働率90%へ」

「全球砲台群統一射元システム稼働開始」

「GGRUFSS稼働開始、システムの起動を確認」

「地球防衛司令部より発射コードを受信!想定される射撃計画は33号4項!」

「334了解、GGRUFSSに入力開始」

「座標きました!全砲台群のエネルギー伝達率85%!」

「月面軍用エネルギープラント群の稼働率、46%」

「出港管制および内軌道管制に警報送れ」

「各砲台の初期安全装置の解除を確認」

ここで、要塞司令部の全員が静かになった。

彼らは軍人であり、自分の上官の命令が(もし倫理的に相入れない物だとしても)遂行する義務がある。

そして、要塞砲全ての安全装置を解除するキーは地球防衛司令部と要塞司令のみが持っており、これを入れることで全要塞砲の射撃が可能になる。

そのキー入力を、司令部要員は固唾を飲んで見守っていた。

このキー入力により、敵もそうだが、友軍艦艇も沈む。

しかも戦力がほぼない状態で敵に向かった、英雄を沈めるのだ。

彼らは心のどこかで、司令の射撃中止命令を待っていた。

だが、無常にも時はすぎる。

「認識番号132–198–E6 国連宇宙軍出向南米特別弁務官区治安軍所属、カステロ・ゴナ准将」

「認識番号を確認、声紋及び所属認証確認、ようこそ准将」

「発射コード334」

「発射コード334を受理、キーを回してください」

このアナウンスとともに、二本のキーが出てきた。

先に送られた防衛司令部のキーとこの要塞司令部のキーだ。

准将は何の躊躇もなくそれを回した。

「発射命令を受理、全砲台の安全装置を解除」

「よかろう、全砲台、撃ち方初め」

「了解、全砲台撃ち方初め」

「GGRUFSSのリンク良好、統制射撃カウント開始」

「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0」

「撃てっ」

「稼働全砲台、エネルギーの消費を確認」

「光学系による射撃を確認」

「弾着までのこり6秒」

「第108砲台、オーバーヒート、点検不良と思われます」

「弾着、命中」

「予測戦果、18STF残存艦艇の掃討に成功、一部敵艦隊にも着弾」

「敵艦隊、回避行動開始」

「第二射諸元入力」

「敵は散開した!各砲台の射撃を統制射からバースト射撃へ!」

「了解、33号計画稼働」

「射撃開始」

「連続弾着、敵の主隊は動揺しているようです」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

星の海を越えて 提督(w) @teitokuwww

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ