第1章 14話
シェルファ(シェラウ魔王国王女)との生活も二ヶ月を過ぎた頃には
家族として受け入れられた感じになった。
ここは彼女を発見した場所からかなり離れた場所であり、家の敷地全体に
魔力反応を封じる結界魔法をリケッツに施してもらい外部から探知され
る事は無いとの事。
彼女には少々不自由を感じさせると思うが家族の安全の為、我慢して
ほしいと伝えたら、あっさりと承諾された。
以前の様に封じられるよりはマシとの事。
程々に広い敷地と家の中で好きな事をしながら彼女なりに楽しんでいる
感じだ、まずは一安心。
僕の方は元の世界での資金調達(投資活動など)について考えを整理
していた、此方の世界で手に入れた物資を元の世界で売った資金を投資
に回して増やしているのだが、将来的には元の世界で商売なんかをして
生活できればと考えている。
何故かと言えば異世界と元の世界では命の危険が違いすぎる、現代日本
では余程の無茶や運が悪くないかぎり普通に生活してて死ぬ事はない。
魔法や魔獣が普通に存在する異世界では自分の命は自分で守るのが一般的
なのだ、この世界にも騎士や憲兵は存在するが基本は自己防衛だ。
弱い者は強気者に蹂躙される事は珍しくない、平和な世界を経験した者に
とっては異世界に定住するのは少し抵抗がある。
でも異世界の全てを否定はしない、今まで出会った人々には素朴さと
誠実さが有る様に思えるからだ、普通に生活するだけでも緊張感が伴う
事が少なくない状況ではお互い思いやりや助け合いが必要となる。
だから集団生活で互いの結びつきが重要なのだろう。
関係性が希薄な元の世界の方が孤独だった自分状況を考えるとどちらが
良いのか考えさせられてしまう。
異世界で結婚した僕は子供を儲けると思う、どちらに似るか分からない
けど見た目が人族であれば元の世界で教育を受けさせた方が・・・
なんて考えたりもする。妻(シャナ)には怒られるかな?
異世界での教育は読み書き計算を教える小学校みたいな所はあるようだが
庶民の教育はそこまでらしい、貴族は初めから家庭教師による教育を受け
複雑な算術や魔術、歴史などを学ぶらしい。
しかし教育水準などは生きていく環境に合っているのが良いのではないか?
僕の場合で考えると元の世界の知識を異世界で有効活用できたとは思って
いない、異世界には場合によっては科学を超える魔法が存在しているからだ。
比較すれば科学で出来る事は魔法でも可能な事が多いと思うし、逆に魔法
で出来る事を科学技術でしようと思えば僕一人では多分不可能であろう。
何より魔法の優れている点は個人の力である所である。
例えるなら火を使うだけなら簡単な魔法らしく異世界に生活する者なら
殆どが使えるが僕は来たばかりの時はライターでもないと無理であった。
今では簡単な生活魔法は習得したので元の世界と遜色ない環境で生活が
できている。
不便と言うか不満に感じる事は娯楽だと思う、異世界では音楽、映像、
遊びなどは比較にならない程クオリティーが低い。
音楽などは単純な弦楽器を使った演奏であり、歌と言えば吟遊詩人が
いるだけである。
配信による映像文化も無い、遊びと言えば子供の遊び程度で大人が楽しむ
事と言えば酒を飲み友と騒ぐなんて事くらいだ。
そもそも生きる事で精一杯な異世界では娯楽は必要無いのだろうが
僕としてはボードゲームの様な物はあっても良いのではと思うのだが。
ん?、これってもしかしたら売れるのでは・・・リバーシなら木で作れる
かもな、そのうち試作してみよう。
異世界との往復商売で元の世界での現金は500万程貯蓄できた。
200万は異世界で仕入れた置物などの売上で他は株の売買をこまめに
行った成果である。
ある程度資金ができた事で投資(現物取引)に本腰を入れようと思う。
コツコツと狩りを行いロックラビットの魔石を貯めたので未来の新聞を
取り寄せる事が出来るので全額投資でもリスク無く運用する事ができる。
目標はカフェ開業の資金である、まだ構想の段階ではあるがコスプレカフェ
を考えている、何故なら従業員がエルフや獣人でも自然に受け入れられる
と思う。
シャナや子供達も一緒なら定住じゃなくても皆で一緒に過ごせる時間が
多くなるし楽しいのではないだろうか。
シャナも連れてきた時は凄く楽しそうだった、子供達も楽しめると思う。
この辺も含めて今度シャナに話してみるかな。
今日はヤニスの店で仕入れる為にシャナと街に来ていた、狙いは金属製
の置物である、銀製の置物は査定も早く高値で売れるからだ。
前回も一つ20万程で買い取ってもらった。
『雄靖さん、二人で街に来るのは久しぶりですね』
『そうだね、最近は子供達の事で忙しかったしね、仕入れが済んだら
食事でもしながら、ゆっくりしないか?』
『はい、嬉しいです』
ヤニスの店で物色していると、ちょっと変わった置物を見つけた
僕から見たら特に変わってるとは思わないが、異世界に有る事が
不自然なのだ、それは観音像によく似た・・・いや観音像だよ。
異世界では偶像崇拝は殆ど無く、自然信仰が普通と以前シャナから
聞いた事がある。
それにたまたま似てるって言うか、そのまんま観音様ですよ。
ん〜見れば見る程・・・僕以外にも転移者はいるのだろうか?
ちょっと気になるのは額にはめられた宝石の様な石かな、魔石とは
ちょっと違う感じの光を放っていて、僕の知識ではダイヤモンドに
似ている感じがする。
魔石は少しくすんだ光を放つので僕でも違いがわかるのだ。
こちらにも宝石はあると思うが僕はまだ見たことが無い。
聞いてみるか・・・
『ヤニス、ちょっと良いか? この置物の額に付いてる石は魔石か?』
『ああ、それか、魔石ではないぞ、ただ綺麗な石ってだけの価値の
無い石さ、気になるのか?』
『これはよく取れるのか?』
『そうだな、石材を採取する際に一緒に取れるのさ、魔石に似てるが
魔力は無く使い道の無い石さ』
『この置物はいくらなんだ?』
『何か他の物を買ってくれたら、おまけに付けるさ、売れなくて
困っていた物だからな』
この置物には何か秘密が有りそうな気がする、持ち帰って調べてみるか。
他に銀製の置物数点とギルド依頼で使用できそうな魔石を何個か購入した。
『シャナは何か欲しい物はある?』
『そう言えば母から怪我用の治癒のポーションを買ってきてと』
『ヤニス、聞いた通りだ、何個か追加してくれ』
『今は3本しか在庫がなくてな・・・いいか?』
『分かった、全部貰おう』
商品仕入れを終えた僕達はしばらく街を散策してから今晩宿泊
する宿屋の食堂で食事をする事にした。
二人でゆっくりと過ごすには宿屋の方が良い、お酒も飲みたいし
酔っても宿屋だしね。
『そう言えばポーションって誰か怪我してるの?』
『シェルファさんが時々魔法を暴発させる事がありまして、擦り傷
が絶えないのですよ、大怪我になる事は無いと思うのですが・・・
備えですね』
『シェルファは魔力も多いし時間を持て余してるんじゃないかな?
魔法以外にも何か興味を持ってくれると良いのだけれど』
『賢い子ですから心配はしていませんよ、魔法で怪我をしてからは
考え込んでいたようですが、最近何か始めようとしているみたいで
雄靖さんが集めてたロックラビットの魔石を弄っている事が多い
ですよ』
『え、あの魔石を・・・』
ちょっと怖いな、彼女は魔族だし僕が世界を行き来している事と
魔石の関係を・・・知っているのだろうか?
でも話してないし・・・それとも異世界転移の方法を知っているのか?
今度聞いてみるか、今はシャナの事に集中しよう。
仕入れを終え僕達は宿の食堂で食事をする事にした、お互い軽めの
食事を取りお酒を飲みながら時間を過ごす事にした、普段は仕事や
生活の雑事に追われ二人でゆっくりと話す時間が最近は取れない事が
多くお互い話したい事が溜まっていた。
『食事、美味しかったね、今日はシャナと色々話したくてさ・・・
どうかな?』
『私もよ、あなた。あ、そうだわ・・・変わった置物を買ったみたい
だけど、貴方にはあれが何か分かっているの?』
『あ〜あれか。僕も驚いたんだけどさ、あれは僕の世界の仏像・・・
解らないよね、神様の像なんだ。
僕も見た時は驚いたよ、まさか此方の世界にあるなんて・・・』
『神様?あなたの世界には人の様な神様がいるの?』
『いや、実在はしてないよ、中には熱心に信じている人もいるけどね
僕は違うけど。
でもちょっと違和感があったから調べようと思って買ったのさ。
それに僕以外にもこっちの世界に来ている人がいるのかと思ってね』
『そうなのね・・・。 他にも色々と仕入れたみたいだけど近々
元の世界に行く予定はあるのよね? 黙っていかないでよね!』
『行く時は話しますよ、それに一緒に行きたいしね。 それに相談
した事があるんだよ』
『相談?』
『2つの世界を行き来しての商売で結構お金が溜まってさ、前から
計画してた事があって・・・・・・・』
僕は彼女に一定の資金が出来たら元の世界で商売を計画していた
事を話した。
商売はコスプレカフェ、彼女に理解しやすく異種族が働く軽食屋と
説明した。
それを聞き疑問に満ちた顔をしていたのは以前一緒に元の世界に
来た時には人種族の世界でありそれ以外の種族は存在していない事を
知っていたのだ、なので異種族が働く軽食屋を不思議に思ったようだ。
これを理解いしてもらうにはコスプレを説明しなくてはならない、
元の世界には好きな想像上の存在を変装によって表現する文化があり
そのような行為をコスプレと言う。
それにこれが上手く行けばシャナや子供達も一緒に過ごせる可能性が
ある事も付け加えた。
『面白そうね、私も貴方と過ごす時間が増えれば嬉しいわ、それに
あなたの来た世界も好きだし、また行きたいわ、でも子供達は
どうかしら・・・シェルファは興味を示しそうだけど魔法を使われ
たら大変じゃなくて?』
『そうだね、興味があれば何回か連れて慣れさせる事とあちらの世界
の常識を教えてからかな』
『お母さんも連れて行きたいわ、二人で買い物なんかも行きたいし
きっと喜ぶと思うの・・・いかがでしょうか?』
『そうだね、今後お母さんの理解を得る為にも必要かもね、でもこの
事を知ったらどんな反応をされるか・・・ちょっと不安かな
でもいつかは話そうと決めていたんだ、良い機会だと思っている』
『お母さんは理解してくれると思うわ、だって私の幸せを一番に考えて
くれるお母さんが私の愛した人を信じているだろうし、あなたの
誠実さも分かっているのだから、貴方が何処から来たのかは気に
しないと思うから、あまり心配しないで』
『話す時は傍にいてくれるかい?』
『そのつもりよ』
『二三日後に行きたいと思っている、大丈夫かい?』
『じゃ、母には出かける事を話しますね』
しかしこの後、予想外の展開になった。
シャナの母が付いて行くと言い出したのだ、僕と娘の行き先が気に
なっていたらしくシャナが問い詰められてしまった。
詳しくは後から僕が話す事で納得してもらったらしい。
何時かは話さなくてはならない事だったし、良い機会と考え話す
事にした。
『お母さんに話すのは問題ないよ、僕も話さなければと思っていたし。
でも、一緒に行きたいんだよね?
僕の真実を知って、それでも同行したいとなった場合さ子供達は
どうしよう・・・ここに置いてくわけにもいかないよね』
『そうですよね・・・困りましたわ』
『その辺は後から考えるとして、できるだけ話すのは早い方が良い
と思うんだ、今晩あたり話さないか?』
『そうよね、私も同じこと考えていました』
その夜、食事を済ませ子供達を寝かしつけてから三人ではなしを
した、初めは僕がこの世界に来た経緯と2つの世界を自由に行き来
できる様になった事。
彼女に対する気持ち、今後は元の世界と両方で生活する事を考えて
いる事などを話した。
大雑把な説明を終え次に彼女が僕に対する想いと僕の来た世界に共に
渡った時の事や両世界での生活に同意している事を話した。
一通り話し終えると母は質問してきた。
『雄靖さん、貴方が来た世界へ私も行く事はできますか?娘の話を
聞いて私も行ってみたくなりました』
『大丈夫ですよ、でも三人で行くとなると子供達を残しては行けません
から子供達に色々話さなくてはなりません。
僕の来た世界は人族だけの世界なのでエルフや魔族は見た目を何とか
ごまかせると思うのですが、獣人はちょっと工夫が必要でしょうね』
その後は三人で行くことを前提に何からすべきか話し合った。
お母さんについてはシャナと同様に耳の特徴を隠せば問題は無い、
シェルファも同様で外見はエルフと変わらないので外見は良いのだが
魔族なので魔力が多く常識も他の種族とは違うようで行く前に丁寧に
理解しやすく教える必要があるな。
難しいのはアズ(猫人族)だな、人族とはちょっと顔立ちは問題ないが
耳が猫耳なんだよな・・・ずっと部屋にって理由にもいかないし。
『そうですわ、いつ聞いたか忘れましたが身に付けると姿を誤魔化せる
魔石があると聞いた覚えがあります、詳しくは分からないのですが』
『あ、お母さん・・・私も聞いた事ありますわ』
『それは良いですね、何処かで売っているのですか?』
『よく覚えていないのだけれど、何処かで売ってたような・・・』
『今度ヤニスの店で聞いてきますよ』
話は子供達も連れて行く事で話は纏まった、僕が異なる世界から
来た事は驚かれる事も無く受け入れられたのは・・・なぜだろう?
不安や疑問よりも興味の方が勝ったのだろうか・・・
僕としては驚きの表情が見たかった気持ちもある、でも心配されたり
拒絶される方が怖いかな。
お母さんが行きたい気持ちも何となくだが理解できる、僕だって
話を聞いたら、そして危険が感じられなければ行きたいと思うよな。
異世界って言葉はワクワクする言葉だしね。
話し合った結果、元の世界には全員で行く事になった、時期は
身に付けると姿を誤魔化せる魔石を手に入れてからになるだろう。
僕はヤニスの店に行き情報収集、シャナは子供達の着替えなどの
準備を始めた。
『ヤニス、ちょっと聞きたい事が有るんだが』
『いきなりだな、おい。物事には順序ってのがあんだよ、始めに
挨拶じゃないか・・・』
『あ、すまん。元気か?ヤニス、来たぞ〜、これで良いか?』
『何だそれ、しかたね〜な、で、何を聞きたいんだ?』
『身に付けると姿が変わるって魔石が有ると聞いたんだけど
ここでも手に入るのか?』
『ああ、それか・・・売り物じゃないぞ、確か・・・何処ぞの
魔女が魔石に魔法を施して作るはずだ』
『何か簡単ではなさそうな気がするが・・・』
『何でも魔女はお金で引き受けないらしく、作る為の条件を
言うらしいな、条件は俺には分からんがな、魔石はここでも
売ってるぞ、買うか?』
『そうなのか!買わせてもらう』
『これが魔石さ、求言保の魔石だよ、一つで良いのか?』
『高くなければ二つ欲しいな、いくらだ』
『あまり使い道の無い魔石だから安いぞ、一つ銀貨一枚だ』
『なるほど、魔石にしては安いな、二つ貰うよ』
魔石を購入し魔女の事を聞こうとしたがヤニスは知らない
らしくギルドなら情報が有るかもしれないと聞きギルドに向かった。
ギルドでの情報は誰でも聞けるのだろうか?
やはり受付で聞くのが無難だろう。
『すみません、聞きたい事があるのですがギルドでの情報提供を受ける
には何か手続きが必要なのでしょうか?』
『そうですね情報の秘匿性にもよりますが、差し支えなければどの様な
情報なのか教えていただけますか?』
『じつは魔石に魔法の付与を依頼したく付与が行える魔女の居場所を
知りたいのですが』
『そうですか、ギルドは仕事依頼の仲介も行っておりますので何人かの
魔女様の紹介は可能です、ランクにより付与費用は異なりますので
どうなさいますか? ランクはA〜Cの三段階です』
『ランクによる違いを知りたいのですが可能でしょうか?』
『そうですね、簡単に説明すれば付与に係る時間の違いでしょうか』
なるほど・・・よほど極端でなければ時間の違いはそれほど気に
ならないし、それより距離の問題かな・・・
『あまり遠くでない方が希望なんですが・・・』
その条件でお願いしたところ、ここから徒歩で3時間程の町外れに住む
魔女を紹介された、ちなみにランクはBらしく名はカルグスレン、今から
訪ねる事にした。
一度家に戻りシャナに魔女の所に行く事を伝え4時間程で到着した。
魔女に会い魔石の付与を依頼したが、報酬は金銭ではなく魔女が心踊る
出来事、または魔女が見たこともない物品の提供を条件としたきたのだ。
面倒くさいな、この魔女は・・・どうしようか・・・
彼女が心踊る出来事なんて、考えもつかないしな・・・
であれば魔女が見たこともない物で考えた方が良いだろう。
僕は以前ヤニスに好評だった虹色に輝くグラスを空間収納から取り出し
魔女に見せた。
『ま、何だいこれは!信じられない・・・』
だよね〜異世界ではガラス製品は貴重品だし百均製品だけど、こちらの
世界ではかなりクオリティーは高いのだ。
『これでどうですか?魔女様?』
『ちょっと鑑定しても構わないかい?』
『どうぞ』
魔女は何かの魔法を発動した、その後しばらく考え込んでいたが
僕の目をじっと見つめ質問してきた。
『お前は何者で何処から来た?』
『え、なぜその様な事を聞くのでしょうか?』
『この魔法は物の過去を遡り見る事ができるのです、見えたのは
雰囲気がまるで違う町と見たことも無い機械、不思議な格好を
した人々、こことは異なる世界に思える。
どうゆうことか説明してもらいましょう、商談はそれからですね』
そんな魔法があったとは・・・これは多分誤魔化せないな。
リケッツにも話したし、絶対的な秘密と言うわけでもないが今回の
場合は魔石に付与依頼する関係上話さないと断られそうだな・・・
でも、口外はしない事を条件にする。
『わかりました、でも僕から聞いた話を口外しない事、そして約束を
守る為の手段を提示してください、これが話す条件です』
『そうだな、契約魔術ってのが有るんだよ、互いに条件を定め条件が
守られなかった場合は予め決めた制裁を受ける魔術。
これでどうだ?』
そんな魔術が有るのか、なら大丈夫そうだ。
こちらの条件としては、この件で僕から得た情報は僕以外には口外
してはならない。魔女側は正確な情報を得る。
制裁としては少し厳しいが内容が内容なだけに消滅だろうな。
僕はこの条件を魔女に伝え契約魔術を実行した。
『驚いた、君は異なる世界から来たのか?・・・
思考を覗かせてもらったが、こちらとはかなり違う世界のようだね
魔法は無い世界みたいだが、それに変わる技術が存在していて
なかなか興味深い・・・そしてこのガラス製品もその技術で作られた
物なんだね』
驚いたな、そこまで詳細に見えるのか・・・契約魔術を行ったのは
正解だったようだ。
魔女の言葉を聞くと鑑定魔法の域を超えてると思うのだが、何処まで
見通せるのか確認しなくては!
『確認したいのですが、鑑定魔法ですよね?何かそれ以上見えてる様な
気がするのですが?』
『ああ、すまん。鑑定とは言ったが今使ったのは時遡の魔法と言われる
魔法で対象物と周辺を見渡す事が出来るのさ、あまりにも異質な物
だったので、念の為見させてもらった』
これは下手な誤魔化しは不審がられるだろうな・・・
付与魔法を断られるのは避けたいし魔女がどの様に理解するかは
分からないけど正直に話してみるか。
『実は僕は異世界からの転移者なのです・・・・・・・』
僕は元の世界から来た経緯と自由に行き来出来る事を説明し、今回の
依頼も理由も話した、色々な戦いやリケッツ達の事は話してはいない。
話している間、魔女は興味津々な眼差しで聞き入っていたが、話を終え
ると話しかけてきた。
『なるほど・・・面白いね。分かった! 付与の件は引き受けよう
しかし条件が有る、「私も同行させる」これが条件だ、その代わり
付与費用は必要無い。どうだ?』
この魔女は好奇心が旺盛らしい、同行には問題は無いが勝手な行動
をされるとマズイと思う、変な要望や行動を僕が抑えるのは難しそうだ
実力の有る魔女みたいだし・・・どうしよう。
そうだ、リケッツにも僕の来た世界の事は話したし同行できるか聞いて
みるか、彼なら魔女を抑える事ができるかも、よし!
『同行する事は問題無いけど、約束してほしいことがある。
単独行動と勝手な行動はしない事、持ち帰りたい物は僕に相談する事、
魔法は使わない、あちらの世界では争い事は絶対ダメです。
服装の事もあるので少し準備期間が必要です。
この条件を承知するなら良いですよ』
魔女は少し考えていたが、この条件を受け入れると約束した。
話は纏まったので魔石に魔法付与を行い、転移する日が決まれば知らせる
と約束し家路に就いた。
帰宅した僕はシャナに魔石付与を終えた事、転移に魔女も同行する事を
話した、魔女の勝手な行動を警戒する為にリケッツも同行させる事を考えて
いる事などに彼女の考えを聞いてみた。
『良い考えだと思いますよ、私は賛成です』
と了承を得、早速リケッツに連絡したところ
『行くで!、任しときなはれ』
だよね、僕の世界の事はリケッツも興味あったみたいだし、この返事は
僕も予想してた。
転移の為の準備、洋服や子供達への注意事項の説明、リケッツや魔女と
細々しい事の打ち合わせを済ませ出発は1ヶ月後と決まった。
大丈夫かな・・・不安・・・。
たのむよ異世界 ton @nakajin
★で称える
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