手紙は届きました

誰かのプロローグ

 2021年2月1日(月)


 朝、いつも通り起きてマスクをつけて外に出た。

 人がまばらの電車に乗る。

 わたしは、今年20才を迎えたばかりの社会人だ。

 つまらない毎日を送っている。

 人とも…うまく関われない。

 どうして生まれてきたんだろうと、ふとしたときに考える日々だ。

 ときどき、無性に死にたくなる。


 唯一の楽しみが通勤時間に無料の小説を読むことだ。

 お金がないわたしに、違う場所に連れて行ってくれる。

 こんなわたしをスーパーヒーローにしてくれる。

 人生の勝者になった気分が味わえる。

 安い娯楽だ。

 

 いまや、スマホさえあれば誰でも小説家になれる時代だ。

 いろんな人が書いたいろんな小説は、読んでいて楽しかった。

 そのときだけ、死にたいとは思わない。


 わたしは読む小説を最初の数行で決めている。

 読んで面白そうなら読むし、つまらなかったらすぐに閉じて、次の物語を開く。

 お気に入りに登録してあるWEBサイトをスマホで開く。表示されたページを眺めながら、読む小説を物色していると、とあるタイトルが目に止まった。

「ん?受信BOX…?」

 今どき、珍しいような気がしなくもない題名。最近の小説はだいたい題名でどんな話かわかりやすいタイトルが主流だ。

 あらすじは、郵便局員の話。

 自分と同じ職業に、少し読んでみるかと思った。

「ふーん…」

 スマフォの画面をタップして小説のページを開いた。

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