主人公のコンプレックス、劣等感。どれも、覚えがある感情だからこそ。最後の一文に、胸が掴まれました。誰も救われない、ぞっとする、けれど悲しい話でした。
遺書をテーマに扱っているからと言って、読むことを躊躇うことなかれ。本作は自殺という重いテーマを扱いながら、必要以上に悲壮感を煽ったり、沈鬱にしたりすることをしない。むしろ、その精緻な文体には美しさすら覚えるほどである。内容についてはあえてここでは言及しない。というのも安易な要約を拒むほどに物語が練り上げられている他、何がネタバレになるかわからないからである。ただ、間違いなく言えるのは読んで決して後悔しないということだろう。なるほどな、と唸る事間違いなしの名作である。
とても短い短編集ですが、最後の最後で心臓止まるほどどっきりする一文があります。でもそれは、それだけ見るとあまり衝撃的ではありません。その一文を衝撃的にするためにすべての物語があるのです。是非読んでください。私は一瞬どきりとしちゃいました。