第3後輩デート
木曜日、折坂と二人で下校していた。これから例のショッピングモールに寄るのだ。
「折坂ちゃんは何か買いたいものあるの」
「それはですね、先輩の誕プレですよ」
「僕の誕プレ!」
「はい、なにか欲しいものありますか?」
「うーん。何かなー」
「何ですかー」
「ボールペンとかかな。今使ってるやつ、もう古いし」
「いいですね。じゃあ、買いに行きましょう」
二人は並んで文房具屋に向かう。
「先輩」
「なに?」
「手、繋いで行きませんか」
折坂は、はにかむ。それに井伏は笑った。
「こちらこそ、繋いでいいかな?」
「どうぞ」
「それじゃあ……」
二人の手と手が重なり、温もりを共有した。
「こういうのどうですか?」
並んだ商品の中から折坂は一本、ボールペンを取り出した。
「へー」
そのボールペンは人間工学に基づいており、最高の描き心地を提供するらしい。
「良さそうだね」
「プレゼントしちゃいますよ」
「いいの?」
ボールペンはそこそこの値段がする。誕生日プレゼントとはいえ、後輩に買ってもらうというのはどうなのだろうか。
「いいんですよ。私は先輩に貰ってほしいんです」
「ありがとう。大切にするよ」
「分かりました。買ってきますね」
彼女はボールペンをレジに持っていく。しばらくして戻ってきた。
「どうぞ」
彼女は紙袋を差し出す。
「ごめん。わざわざ包んでもらって」
「いいんですよ。これぐらい」
折坂は手を後ろ手に組んでフフフと笑った。
「でも、先輩に贈れた物がボールペンでよかったです」
「なんで?」
「だって、ボールペンなら先輩にずっと持っていてもらえるじゃないですか」
彼女の笑顔と言葉に井伏は顔が赤くなるのを感じる。
「あれ? 照れてます?」
「なんかお礼したいんだけど、欲しいものとかある?」
急な話題転換をした井伏に折坂はまたもや笑うのだった。
「それなら先輩、私行きたいところがあるんですけど……」
「ここでいいの?」
「はい!」
二人はモール内のボウリング場に来ていた。
「いやー、私ここに来るの久しぶりです」
「僕も、小学生以来かなぁ」
二人は記入用紙に靴のサイズ等を書き込んで受付に持っていく。
「お二人はカップルですか?」
井伏は店員の突然の発言に戸惑う。
「はい! そうです!」
それに折坂が元気に答えた。
「さっきはびっくりしたよ」
「今日はカップルディなんですよ」
「だからか」
「先輩は私とカップル扱いされて嫌でしたか?」
「いや、嫌ではなかったというか、ぶっちゃけ嬉しかったよ」
「そうですか……」
きっぱりと言い切った井伏の発言に今度は折坂が赤面する番だった。
「今日は楽しかったです」
「僕も楽しかったよ」
帰り道、二人は並んで歩く、手はなんだか恥ずかしくて握れなかった。折坂は電車で帰るため、二人で駅に向かっているのだ。
「本当に家まで送ってかなくていいの?」
「だいじょぶですよ。それとも私が先輩を送ってあげましょうか?」
「いいよ。さすがに情けなさすぎるから」
「それじゃあ、先輩。また明日」
「うん、また明日」
二人は駅で別れる。井伏は折坂が改札をくぐり見えなくなるまで待ってからバス停へと向かった。
ハーレム計画進行中♡ 弾丸箱 @resato
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