第2話 楽しみの使い方
俺は誰もいない自分の部屋にやってきた。あの部屋は俺以外誰も使わないので俺の部屋と呼んでもでいいだろう。階段も登れるようになったので二階にある。
「よし、やるか。」
今からやるのは魔法だ。この世界に来て気になっていたこと。こっちの世界に来て1年、まだ魔法のようなものは見ていない。
そしてやっと、1人で動けるようになった。やるしかない。
俺は部屋のドアを閉め、周りにあるものを片付けて、魔法を使おうとした。だが、、、
「…あれ?魔法ってどうやって使うんだっけ」
白い部屋でミカエルに言われたことを思い出す。
(たしか、魔法はイメージって言っていたよな。どんなイメージを浮かべればいいんだ?)
俺はとりあえず、火を出したらやばそうなので水をイメージした。体から水が出るイメージ。
(・・・)
何も起こらない。
(あれ?出ないぞ?何が違うんだ?)
次は声に出してやってみた。
「水よ出て来い」
(・・・)
「ウォータボール」
(・・・)
やはり何も起きない。
(どうすればいいのだろうか。もしかして魔力が足りないのだろうか。)
そんなことを考えていると、エルサから声がかかった。
「ルシア〜、お昼寝の時間よ。降りてらっしゃい。」
「わかった、ママ。」
俺もまだ体は1歳だ。睡眠は沢山とらないと背が高くならないかもしれない。前世はそこまで高い方ではなかったので、やはり背が高い人には憧れる。
そんなことを考えながら俺は寝室に向かった。
昼寝を終え、俺は考えていた。
(うーん。魔力ねぇ、魔力、魔力、魔力…)
「……あっ!!」
「どうした!?ルシア。大丈夫か?」
今日は狩りの日で朝早くから狩りに出かけ、早く帰ってきたロイドが心配の声をあげた。
「あっ、うん。なんでもないよ、パパ」
「おう、そうか。」
(もしかしたら根本から違っていたのかもしれない。)
次の日、また自分の部屋に行った。
(前までは体から水が出るイメージだったが、魔力って言うぐらいだから、魔力は何かの力、この力を使って何かを操作するのでは…?)
俺は空気中にある水を出すイメージをした。
「おぉー、出来た!」
思わず叫んでしまった。空気中に出てきた小さな水の塊は出来てすぐ落ちてしまった。だが、成功だ。
ここで一つの仮説が浮かんだ。魔法は体内にある魔力という力を使い空気中にある魔力分子のような何かをコントロールしているという説だ。魔力はエネルギーだ。
この仮説を成立させるために色々試した。
まずは水以外の魔法。前世ゲームをしていたから知っていた四大属性を試してみる。
最初は風属性魔法、風を作ってみる。これは空気を動かすイメージで。
「よし、出来た。」
だが、その風もすぐに消えた。
次は土属性魔法で土を試してみる。岩だとこの床が抜けたらやばい事になる。
土を空気中から固めるイメージで。
「うわっ、やらかした。なんかめっちゃ出てきた。」
何故か土が大量に出てきてしまった。と言ってもこれまでの魔法に比べて多いだけだから大惨事までは至らなかった。
やべぇ、この土どうしよう。
魔法で動かせないか試したが出来なかった。
窓から出して捨てた。
1歳児の俺からすると結構な重労働だった。
最後は火属性魔法。これは危険なので今度外で試してみる。
これで魔法が魔力によって作られることがわかった。魔力でなんらかの物質を操っていることは確定だろう。だが、今は作ってもその後すぐに消えてしまう。その水や風を動かすことはできない。土だけは何故か大量に出てきた。
この違いを見つけなければならない。
あの時のイメージを思い出す。
水は出すイメージ
風も起こすイメージ
土は…固めるイメージ
「…そういう事か。」
俺は水を固めて出すイメージをした。結構ガチガチに固めるイメージをした。
土みたいに地面に落ちて濡れたら嫌なので、窓の外に向かってやった。
「あれ?」
氷が出来た。そして落ちてった。
窓の方を見に行こうとした。
だが、体が思うように動かない。これは多分魔力切れだ。
(意識が…飛ぶ…)
初めての魔力切れの感覚をしっかり噛み締めながら寝てしまった。
~~~
起きたら窓から見える空は赤く染まっていた。昼前から夕方まで寝ていたらしい。
「ルシア、寝る時はベッドで寝るのよ。すごい心配したんだから。」
俺はエルサにしっかり叱られた後、ロイドの所に行った。
ロイドは仕事でほとんど会えない。朝早くから出かけ帰ってくるのは俺が寝る頃だ。畑仕事の時はお昼に帰ってくるが、すぐに仕事に戻る。
だが、今日は週に一度の休みの日だ。
ゼノに1週間という概念があるかわからないが、7日に1回休みの日があるので、わかりやすい。
週休1日制はなかなかの重労働だ。
そんな疲れて、だら〜っとしているロイドに戦士だった頃の話を聞きに行った。もしかしたら魔法のことについて知っているかもしれないからだ。蒔かぬ種は生えぬと言うしな。
「ねぇ、パパ。昔パパって戦士だったの?」
「ん?なんで知ってるんだ?」
「ママから聞いた。」
「おぉ、そうか。もう戦士って言葉がわかるのか。」
さっきまでだらけていたロイドは自分の話になると、起き上がり真剣な顔で話してくれた。
「俺は昔、戦士だったが冒険者でもあった。魔物を倒して暮らすんだ。仲間たちと協力して色んなところに行ったんだ。」
ロイドは旅での、思い出を自慢げに聞かせてくれた。
ロイドは前衛で、3人のパーティを組んでいたらしい。
「だがな、旅の途中、仲間を亡くした。守れなかったんだ。」
なんだかいきなり重たい話になったな。
「仲間を守れず悲しみと無力さに明け暮れていた時、近くの村の周辺で魔物に襲われている女の人がいたんだ。助けようと思ったんだが、その時の俺はどうもそんな気分にはなれなかったんだ。何もかもがどうでも良くなっていた。だが、救える命があるなら救わなければ、たとえ知らない人であっても目の前で2度も殺されることになる。少しでも罪滅ぼしなるかと俺は助けたんだ。疲労していたのもあって無傷でとは行かなかったがな。その助けた女の人がエルサだったんだ。」
前にエルサが言っていた事の裏にはこんな事があったのか。
俺は黙って話の続きを聞く。
「エルサは心と体に傷を負っている俺に治癒魔法を掛けてくれて、それからも心の看病もしてくれたんだ。そして一目惚れしてしまった。そしてプロポーズして結婚したんだ。」
え?治癒魔法?ゲームではあったがこの世界にもあるとはな。
「どうした?ルシア。難しい顔して。いや、今の話は難しいか、今の話わかったか?」
おっと、気を取られていた。
「うん。パパすごい大変だったんだね。でもパパ、治癒魔法ってなに?」
「治癒魔法か、傷を治す魔法だな。魔法のことに関しては説明が難しいから、エルサに聞いてみろ。エルサはこの村じゃ治癒魔法が使える天才魔術師だったらしいぞ。」
「そうなの!?わかった!!ありがと、パパ」
「おう、可愛いな ルシアは。いつでも聞いてこい。また色々教えてやるよ。」
「うん!」
エルサが天才魔術師だったとは、そんな見た目には見えないんだがな。イメージで言うと、元気系の村の看板娘のような感じの見た目だ。
次の日俺はエルサに魔法について聞きに行った。
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退屈な魔法使い~退屈な世界を超えて、異世界に没頭中~ まっさん @hosomasa
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