4
この
僕は、左右を交互に見やりながら、さらに奥の方へと入っていった。見かけによらず、せまくるしいことはなかった。むしろ、ひとの一生のように、たえずそのかたちを変えているのではないかとさえ思われた。
どう遊ぶのかもわからないおもちゃが、いくつもあった。一度どこかで目にしたことのあるようなものもあったが、それは気のせいかもしれなかった。
店のいちばん奥の棚――僕は、身も心も釘付けになった。
そこにあったのは、大きなスペースシャトルだった。が、本物から縮尺をすると、気の遠くなるような数字がはじきだされそうだった。
たくさん星座の名前を暗記しては、それを自慢していた、子どものころの僕。しかし、いつ夜空を見上げても、頭に入れた星座を、ひとつも見つけることはできなかった。――
「お子さんへのプレゼントですか?」
その声は、僕の背中にかたりかけてきた。
振り返るとそこには、白い眉をした男性がいた。
「このスペースシャトルは、どういうおもちゃですか?」
「これは……車輪がついているでしょう」
車輪――僕はこのスペースシャトルを手に取ってみた。たしかにそのうらに、四つの車輪がついていた。
店主は、僕から渡されたスペースシャトルを、机のうえにおいて、そのはらのあたりを、しわだらけの手でにぎりこんだ。
「これを後ろに思いっきり引っ張ると――ほら、前に進むんです」
軽やかに、たてにではなく、よこに進んでいく、スペースシャトル。
「どうです。買いますか?」
僕もためしにうしろに引っ張って、不意うちのように離してみた。それでもこのスペースシャトルは、さきほどと同じ動きをした。
それは僕のこころのなかに、いいもしれない、なにかあたたかいものを運んできてくれた。いずれ僕も、日々の生活をありきたりなものにしてしまう、足かせのようなものから解放されて、前へ前へと進めるのかもしれない。
僕はこのスペースシャトルを買うことにした。
そして、緑色の袋に包んでもらい、赤色のリボンで結んでもらった。
スペースシャトル 紫鳥コウ @Smilitary
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