第5話 ホームセンター


 俺たちはモンスターを倒しながらホームセンターへと向かう。


 あれから、俺はSPをいつも通り力と防御力、素早さに均等に振った。

 その効果は俺は道中戦っていないので実感はしていない。


 道中のモンスターは全て氷華に任せている。


「ほい」


 氷華が宙に向かって腕を横凪に振るうと、その射線状に氷の柱が二本現れ別々にモンスターへと突き刺さる。

 氷華の話によると、これは新しく手に入った『多重展開』のスキルで使えるようになったらしい。

 この『多重展開』は少ない魔力量で通常時二発放つときの魔力よりも少なく魔法を使えるというスキルらしい。

 なので、このスキルのおかげで複数モンスターが出てきても少ない魔力で殲滅できると言うことだ。


 それとこのスキルにはもう一つ能力があり、そのもう一つは『同じ魔法を複数合成することにより、威力がアップする』と言う能力だ。

 氷華にもぴったりなスキルだと思う。


 それにしても……。


「人、全く見かけないな」


「ん、誰もいない」


 自転車で住宅街を走り人を探すがどこにもいない。

 家にいるのか? とも思ったが気配がないのでいないのだろう。

 その代わり、道路にはたくさんの服が落ちているが。


「中学校にいた人たちどこ行ったんだよ……」


 梨花のことが頭の隅によぎる。

 お願いだから、無事でいてほしい。


 そして、願わくば俺が向かっているホームセンターにいてほしい。

 歯を食いしばり、周りをよく見回しながらホームセンターへと自転車を漕いだ。



 だが、人が見つかるよりも先にホームセンターに着いてしまった。

 ホームセンターに着き、人の気配を探るが感知できたのはごく少数のモンスターだけ。

 人の反応なんてひとつもない。


「人の気配はない……」


「そうなんだ……なら、休憩する?」


「そうだな」


 ホームセンターの入り口に自転車を止め、氷華が降りてから降りる。

 自転車を立て、ホームセンターを見回すと、俺の目に野菜の種が目に入った。


「なぁ、氷華。これって職業が『農民』の人とか、本職が農家の人だったら問題なく育てられるよな?」


「普通の人でも育てられる」


 だよな。それに、みる限り種だけではなくもう既に身が実りそうな苗まである。

 今が七月でホームセンターに植物が並んでくれていて、とてもありがたい。


 これは後で小学校の人たちに『転移』で持っていくか。

 ダンジョンの中で育ててもらえればいいし……ん? でも、ダンジョンの中って植物育てられるのか?

 まぁ……大丈夫だろ。

 ダメだったら外で育てればいい。


「それと……氷華。この建物内にいるモンスターを殲滅するぞ」


「わかった……じゃあここで待ってる」


「いや、お前も来るんだよ!」


「えー」


 面倒くさがる氷華を連れ、俺たちはホームセンターの散策を開始する。

 いくら氷華が強いと言っても、氷華は女子だ。

 それにMPの多さ以外取り柄がない……むしろこっちが心配か。


 一人にさせるよりも一緒に行動したほうが安全だ。

 これは梨花と逸れてしまった経験から言える。


 もう、あんなことが起きないようにしないと。


 そう考えていると、俺が今歩いている通路の隣側にモンスターの気配があった。

 気配の大きさからしてゴブリンだろう。


「モンスター発見。氷華は動かなくていいぞ」


「ん」


 通路を抜け、隣の通路を覗いてみる。

 いたのはやはりゴブリンだ。


 片手に短剣を握りしめ、ゴブリンに向かって走り出す。


 先程から氷華にばかりモンスターを狩らせていたから俺も狩らないとな。


 ゴブリンがこちらに気がつくが、その時にはもう俺はゴブリンの懐にいる。

 そこから短剣を振るいゴブリンを斬る。


「ゴブリンはもう敵じゃないな……」


 レベルが上がり、ステータスが上がり、称号の補正もある。

 もうゴブリンなんかに苦戦はしない。


 ゴブリンの血で汚れた短剣を、ポケットから出した布で拭く。

 幸い、俺の体にはゴブリンの血は一滴も飛び散ってはいないようで安心した。


 近距離戦闘だと、服が汚れる心配があるので疲れる。

 汚れたときの気持ち悪さは結構なものだからな。


「お疲れ」


「おう。それじゃあ、次いくぞ」


「ん」


 モンスターの気配がする場所に向かう。

 その間、俺は周りを見て使えそうなものを探していた。


「布団とかも必要だし、工具とかもやっぱり必要だよな……それに野外調理器具も」


 ダンジョンに雪が降るかはわからないけど、一応あった方がいいだろう。

 それに工具も必要だ。家具とかも作らないといけないからな。いろんなものを。

 スコップも必要だろう。罠を作るのに必要だ。後はバケツもか。

 んー考えていると色々必要なものが出てくるな。


 まあ、一番必要なのはキャンプとかで使う備長炭とか、テント、灯り、コンロ、ガスなどだろう。

 他にも即席トイレなんかもあるからこれも必要だ。


 これらがどれくらい持つかは分からないが、あるに越したことはない。


「モンスターだな」


「やる」


 今度は氷華が前に出て腕を前に突き出す。

 そして、今度は氷ではない何かを出した。


 そう。『何か』である。


 俺は何も見えなかったし、気がついた時にはゴブリンが切り刻まれていた。

 これは……氷ではない属性か。


「氷華。その魔法はなんだ?」


「これ? 風」


 俺の顔に向かってそよ風が吹く。

 なるほど。風魔法か……。


「って、氷華他になんの魔法に適性があるんだ?」


「適正? 分かんないけど、使おうとしたら使えた」


 なるほど……これが天才というやつなのか?

 いや、天才だとしてもおかしいだろう……。

 全く。こいつのポテンシャルどんだけだよ……。


「そうか……てことは、今の実験?」


「そう」


 実戦で実験するなよ……。

 まぁ、俺がいるからいいものを。


 でも、こいつホント後なんの属性が使えるんだろう。

 あの魔法の適正を調べるスクロールを手に入れて調べてみないとな。


 そう考えながら、俺たちはホームセンターに蔓延るモンスターを殲滅していった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

地球、大型アップデート実装!?〜この世界は進化するそうです〜 時雨煮雨 @Shigureniame

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ