Side B:(4)

 えっ?

 なら、ドレイクの野郎は、どこの何者なんだって?

 まだ判んねぇか?

 ヤツは「ドレイク」って通り名しか使わねぇ。本名を知ってるヤツは、ほとんど居ねぇ。

 ところがだ……「レプティリア」って地名の由来を知ってるか?

 そうだよ……大昔、あの辺りは今は滅びた龍人種族レプティリアンの都だったからだよ……。

 だから、レプティリアの領主一族の家紋は……「ドレイク」なんだよ。

 ……おいおい、まだ判んねぇのか? 鈍いヤツだな。

 ドレイクの野郎の正体は……勘当されたレプリティアの先代領主の長男、現領主の義理の兄、その奥方の実の兄だよ。

 あいつは若い頃、王都の大学に留学してた。

 けど、酒に女に博打と悪い遊びを覚えて……親父から勘当されたんだ。

 そして、あいつの親父が死んだ後、新しい領主になったのは、あいつの妹の亭主だ。

 ああ、領主としては、あいつより出来がいいらしく、領民には聖人扱いされてるって話だぜ。

 そうだよ……。だから、あいつは、元からである剣と弓矢の腕は、一流じゃねぇにしろ玄人ではあったんだよ。

 ガキの頃から、一流の師匠に手取り足取り教えてもらったんだから、巧いのは当然だ。

 そりゃ、学も有るだろ。元が御貴族サマな上に、サボってたとは言え、王都の大学に入れたんだから。

 あいつの言ってるあいつの過去か? そりゃ、若い頃にウェ〜イと遊び歩いてた頃に散々観たり聞いたりした芝居や吟遊詩人のうたを適当に繋ぎ合わせてデッチ上げたモノに決ってるだろ。

 そうだよ……今の自分を強くてすげぇヤツに見せ掛ける一番簡単な手は何だと思う? 過去の自分を弱くて駄目なヤツだったと思わせれば……逆に、そこから成り上がれた今の自分を、とんでもねぇヤツに見せ掛ける事が出来る。

 ああ、その通りだ。芝居や吟遊詩人のうたの定石の中の定石だ。

 じゃあ、何で故郷であるレプティリアに行きたがらないかって?

 恥かしいからに決ってるだろ。

 悪い遊びをやり過ぎたせいで勘当された先代領主の息子だぞ。しかも……まだ、あいつの故郷には、あいつの顔を覚えてるヤツが山程居るんだぞ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「追放冒険者の成り上がり」もしくは「ファンタジー世界版『藪の中+落語・半分垢』」 @HasumiChouji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ