#2初めての野宿

 来てしまいました…。夜が、夜が来てしまいましたー!!

 私はほうきに乗れないので、お母さんが立ててくれた最初の国までの予定より大幅に遅れています……。なので、当然野宿をするハメになってしまいます。なにせこの国『ハイド』は" 野山の国 "なんて呼ばれてしまうくらいには田舎なのですから。

 まわりに国もなく、一番近くの国ですらほうきで六時間くらいは掛かってしまいます。


 それはさておき。


 まずは、既に空は漆黒に染まり切っているので焚き火を焚くとしましょうか。そうすれば、モンスターなども近寄りにくいですし。

 私はそう考えると、周辺から薪を集めます。そんなに遠くに行かなくても、ここら辺一帯は森なので沢山落ちてます。

 薪をある程度集め終わったら、次はそこに火を付けます。流石に魔女を目指してる身なので、火くらいは付けれます。……意外だと思った貴方は、明日の朝には髪が燃えていることでしょう。


 …冗談ですよ?


 懐から杖を取り出して呪文を唱えます。

 「サモン:ファイア!」

 私が薪に杖を向けながらそう呪文を唱えると、杖から火の塊が出ます。そしてその火の塊が薪の山に触れると、薪が燃え始めました。

 「さて。焚き火が出来たことですし、夜ご飯にしましょうか」

 寂しさを紛らわせるために独り言を呟いてから、カバンからパンを取り出しました。

 「今日は何のジャムにしましょうか」

 そこから2、3分ほど悩み、今日は無難にこの国の名物であるイチゴジャムにしました。ナイフを取り出してパンに塗りたくりました。美味しそうです。私は思いっきりパンに齧り付きました。

 ……そういえば、こうやって齧り付くのは行儀が悪いってお母さんが言ってましたっけ。でもまぁ、誰かが見てるわけでもないのであまり気にしないでいきましょう。……お母さん、ごめんなさい。こうやってあなたの娘は少しずつ堕落していくことでしょう。

 そしてお味の方は……

 「やはり美味しいですね」

 と、案の定美味しかったので、あっという間に食べ終わってしまいました。何だか少し物足りない気もしますが、今日は明日に備えて、早めに寝ておきましょう。

 そうそう。言い忘れてましたが『ハイド』の夜は暑いです。特に夏。今の季節ですね。なので普通に服を着て寝るのはやめた方が良いです。

 これ、『ハイド』に来る時の常識なので、もし来る時があるならぜひ覚えておくことをお勧めしますよ?

 なので私も服を脱いで下着になりました。……外で下着になるのは恥ずかしいです。まぁ良いでしょう。誰が見てるわけでもありませんし。でもさっさと寝ちゃいましょう。

 寝袋を取り出してと……。おやすみなさーい。




 …………眩……しい……。……はっ!知らない天井……?いえ、外……?って旅に出たんでした。てへ。

 おはよーございます。

 「ふわぁ〜ぁ」

 まだ眠いですが、早めに出発しなければ今日中には辿り着けません。なのでさっさと朝ご飯を済ませてしまいましょう。

 因みに朝ご飯のメニューは、昨日と同じです……。ですが、やはり美味しいのであっという間に食べ終わってしまいました。

さて、服も着たことですし出発しますか。

  というか、また徒歩なわけですが……。

 流石に乗れないのはあれですし、不便なのでここらで少し練習していきますか。いやまぁ、正確に言えば乗れないのではなく、乗ってる時の恐怖に怖気付いて乗れない、ですけどね。

 私は、そんなことを考えながらカバンの近くに置いてあったほうきを手に取ります。

 ほうきに乗って飛ぶ方法は至ってシンプル。ほうきにまたがって、簡単な呪文(?)を唱えるだけです。

 「ほうきよ、飛べ!」

 と。そうしたら、しっかりとほうきに捕まります。

 あ、ちなみにですが、ほうきにまたがらなくても飛べます。むしろまたがっているとお尻が結構痛いです。

 と、説明をしてる間に結構な高さまで来ていました。乗った後は私が思った通りに動いてくれるのですが……落ちたら怖いです。怪我しちゃいますって!でもでも、ほうきに乗れなければ……。

 私は意を決して、ほうきに乗って進むことにしました。こんなこともあろうかと、荷物は既に持っています。

 「ふー。ふー……。しっかり捕まって……。行きます!」

 そしてスピードを上げました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

エナン遣いは旅に出る。 迅な_シスターズ @sisters02

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ