引っ越し
そして、夏休みも後半を迎えた頃 ―――
「梨生、母さん。父さんの転勤が決まったんだ」
「えっ!?」
「まあ…急なのね…」
「9月から新しい職場で働く事になっている」
「そっか……じゃあ準備しなきゃね」
「梨生……」
急な引っ越し。
好きな人と離れ離れになる。
荷物をまとめ大体の片付けも終わらせた頃、私の携帯に一本の電話が入る。
「もしもし」
「藤原?俺、駿河だけど、お前また引っ越しすんだって?」
「あ、うん……」
「ちょっと付き合え!」
「えっ?」
「デートしようぜ!」
ドキン
まさかの誘いに胸が大きく跳ねる。
「デート?」
「色々、準備大変だろうけど、お前の気持ち知ってるし出掛ける位良いかな?と思って」
「そっか。分かった」
お互い電話を切り、私は準備をする事にした。
私達は出掛けフレンドデートを楽しむ。
夕方帰るとアパートの建物の前ではバーベキューの準備に取りかかっていた。
私は一旦荷物をおきに部屋に戻る事にしエレベーターに乗り込み後を追うように駿河君も乗って来る。
「駿河……」
キスされた。
ドキン
胸が高鳴る私。
「悪い…お前の気持ち正直嬉しいけど、今はまだお前と付き合う事は出来ない。だけど……俺の事…好きでいて欲しい」
そう言うと2階にエレベーターが止まり私達は降りる。
「正直、急な引っ越しで整理ついてなくて、お前に対する自分の想い良く分かんなくって…だけど、必ずお前の事は一番に考えてやるから。正直、お前以外いない気がするから」
「駿河君……うん…分か……」
再びキスをされ、私の頭をポンポンとした。
「先に行ってる」
「うん…」
私達は一旦別れ、みんなと合流。
私達の送別会含む夏休み最後のバーベキューをした。
引っ越し当日 ――――
「梨生、準備出来たか?」
「うん、大丈夫」
「じゃあ行くか」
「うん」
私達はアパートを後に車に乗る前の事。
「梨生!」
名前を呼ばれ振り返ると駿河君がいた。
「駿河君……今……名前…」
「別々になるなら呼び捨てにしても大丈夫だろう?お前も下の名前で良いし」
「じゃあ雄平だね」
「ああ」
「梨生、先に車に乗っているわね」
「うん」
両親は私から離れ車に向かう。
グイッと引き寄せ雄平はキスをした。
ドキッ
「ちょ、ちょっと……」
「バレてない。狙ってキスしたし!向こうの高校でも頑張れよ!他に男つくるな!」
「えっ!?」
「予約のキスだから」
ドキン
「でも、俺よりもイイ男いたら……そん時は言ってくれよな」
「雄平よりもイイ男いたらね。モテモテの雄平にかなう奴いるかな?」
「俺は自分の事、カッコイイと思った事はねーし。周りがそう言ってるだけだから」
「そう?それじゃ」
「ああ」
私達は別れた。
ある日の夜。
私の携帯にショートメールが入って来た。
ドキン
「……雄平……?」
♪♪~
『梨生、元気か?メール届いたら返事頂戴。時間がある時で良いから』
♪~
『大丈夫だよ。元気してるよ。雄平は?』
♪♪~
『俺も元気』
♪~
『それなら良かった!』
私達は近況報告しあう。
♪♪~
『それと最後に一言お前に言っておく』
『お前と離れて気付いた……まさかと思ったけど、俺もお前が好きみてぇ』
ドキン
♪♪~
『付き合うとか付き合わないとかよりも連絡取り合うようにしようと思ってる』
『会いたくても会えないかもしれないけど、やっていける?』
♪~
『うん、頑張る!』
♪♪~
『そうか。同じ学校なら付き合おうって言っても良いけど好き合っていても、お前に触れたくても触れる事出来ないのって付き合っているって言葉は適してんのかな?って俺は思うから』
『付き合うなら徹底的に二人の時間あった方が良いじゃん!デートしたりキスしたり体の関係あったりとか。お互い好き合っていても、それが出来ないわけだし』
♪~
『そうだね』
♪♪~
『何か変な感じだけど両想いっていう所で留める方が良いような気がするし。相思相愛っていう言葉が良いような気もするし』
♪~
『うん』
♪♪~
『それでも良いか?』
♪~
『うん、良いよ。それでも雄平は私の彼氏に一応なるわけだし』
♪♪~
『そうだな。梨生も俺の彼女になるから。改めて宜しくな!梨生』
♪~
『うん。宜しくね!雄平』
いつか必ず手を繋いで街歩いたり
キスしたり出来るまでは
両想いって事になっちゃうけど
お互いの事を信じて ―――
同じアパートの住人 ハル @haru4649
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