あいと五年後の犯罪

@mi-cha-n

第1話

このはなしは、5年後の日本の話だ。


5年後の日本は、今とは、少し違う。


法律が改正されたのだ。


あまりの人手不足で、中学生から、働きたい人は働いていいようになっている。


そして、このはなしは、「あい」という天才警察官の話だ。


そうだな、今でいうと、高校生だ。


今回は、ありとあらゆる事件のうち、ある一つの事件をお見せしよう。








「キャー!」


深夜0時過ぎの住宅街から離れたある路地から聞こえた女性の声をパトロール中のあいは、聞き逃さなかった。


「どうしましたか?」


あいは、急いで駆け付ける。


「ひ、ひったくり!」


女性が、指をさすほうを見てみると、自転車をこぐ、一人の男がいる。


「あなた名前は?」


あいが、女性に聞く。


「か、かほ」


女性は恐怖盗まれた恐怖で、声が震えていた。


「けがは、ありませんか?」


かほは、小さくうなずく。


「わかりました。いま、警察の応援を呼びました。警察が来るまで、この道の突き当りのコンビニで、お待ちください。」


「はい。」


警察の応援が来ると聞いて少しは、落ち着いたのか、声が震えていなかった。


そのとき、あいは気づいていなかったが、女は笑っていた。


その返事を聞いて、あいは、犯人が逃げたほうへ走る。


「まて!」


しかし相手は、自転車だ。そう簡単には追いつけないと誰もが思うだろうが、すぐに追いついた。


男のこぐ自転車は、とても遅かったのだ。


そこで、あいは不審に思った。


(見たところ、この男は30代後半というところだろうか。こんな男が自転車をこぐと、こんな簡単には追いつけないはずだ。なにか、裏があるのか)


そんなことを思いながらも、男を捕まえる。


と、次の瞬間!


男はにやっと笑い、かばんからナイフを出した。


あいは、驚いて、そのナイフをつかんだ。


それでも男の力は、とても強く、すぐに奪われた。


すると、男が自分で自分を刺したのだ!


「なっ!?」


あいは、驚いたと同時に、恐怖に陥った。


あいは怖くなった。


(俺が追いかけていた犯人が死んだのをほかの警察官が見たら、俺が殺したと疑われるだろう。しかも、あのナイフには俺の指紋が付いているし、俺以外ここには、だれもいない。つまり俺はやっていないと証言する人がいない!)


あいは、気づいていないが、不運なことにこの路地には、防犯カメラもついていない。


そんなことを思い、どう対処するか頭をフル回転して考えていると…


「あい君!どうしたんだ!」


1人の男がやって来た。


あいのことを一番信頼していて、あい自身も一番信頼している、佐間刑事だ。


あいは、佐間刑事が自分のことを信じてくれること祈り、事情を説明しだした。


「0時過ぎにここ周辺をパトロールをしていると、女性の悲鳴が聞こえたので駆けつけたら、ひったくりにあったというので、犯人を追いかけたんです。あ、さきほど、佐間刑事に無線を送ったときに、被害者は、この道の突き当りにあるコンビニにいると伝えましたが、コンビニへ、行きましたか?」


「あぁ、いってはたんだが、そんな女性いなかったぞ?」


「え?そんなはずは…」


「しかし、その女性のことは後にして、このナイフの刺されている男性はだれなんだ?救急車は、読んだのか。」


「いえ、救急車は、よんでいません。呼んでいない理由はあとで、わかりますよ。」


「いやしかし…なんでもない。」


あいを信じることにしたのだろう。


「僕は、先ほど女性がひったくりにあったから、駆け付けたといいましたよね?」


「あぁ」


「その、ひったくり犯が、この男なのですが、捕まえた瞬間、自分の持っていたナイフで、自分を刺したんです。」


「なんと!」


「そしてこの男、今よく見てみて、気が付いたのですが、龍王組の連中です。しかも結構上のほうです。」


龍王組とは、警察や、裏の世界では有名なヤクザだ。


「本当か!?」


「はい。」


「…」


佐間刑事が、考えるようにして黙ってしまう。


「あの、佐間刑事。お考え中、申し訳ないのですが。」


「ん、どうした?また何か見つけたのか?」


「いえ。この男は、先ほど自分で自分を刺したことには間違いないのですが、この男について、僕が刺したと疑われるとおもいます。」


「どうして、そんなこと思うんだ?」


「あのナイフには、僕の指紋が付いているんです。」


「なんで君の指紋が付いているんだ?」


佐間刑事は、不思議でしょうがない。


「あの男が、ナイフを取り出したとき、危ないと思い、ナイフをつかんだんです。」


「そうか。そのときについたのか。」


「はい。」


「あい君は、刺していないんだろ?」


「はい。もちろんです!」


「そうだよな。あいくん、やっていないことを証明できないのか?」


「う~ん…それは、むずかしいでしょう。ここには、目撃者がいないし、第一、証拠がありません。」


「そうか、そうだよな。」


佐間刑事は、困った顔をする。そして、決意したような顔で僕にこう告げた。


「あい君。悪いが、もしも、君が疑われてしまったら、君があの男を殺していないということを僕が証明することはできない。君も知っていると思うが、私は、刑事といっても下のほうだ。上が、私のいうことを信じてくれるはずがない。それにわたしは、君と仲がいい。だからどうせ、かばっているだけだと思われる。そんなことしたら、よけいに状況が悪化するだけだ。本当にすまない!」


佐間刑事が、申し訳なさそうに言う。


「いえ、謝らないでください。」


「あ、いたぞー!」


応援の警察が次々と、到着する。


「佐間刑事、あいさん、おつかれさまです。」


「「おつかれさまです。」」


「無線では、ひったくり事件とお聞きしましたが、あちらの死体は、なんでしょうか。」


「あぁ。あの死体は、ひったくりの犯人です。」


「犯人?被害者ではなくて!?」


「はい。そして、その被害者なのですが、この道の突き当りのコンビニで待っているようにいったのですが。いないんです。」


「いない?」


「え、いない?」


「はい。」


到着した刑事たちが騒ぎ出す。


「みなさん、落ち着いてください。」


あいは、よほど信用があるのか、すぐにしずかになった。


それに佐間刑事とあいがあれほど心配した、あいに殺人の疑いがかかるということもなく、2人は安心した。日本の警察は、警察官同士の信頼が厚いのだ。


と、そこで、佐間刑事が、気が付いた。


「あい君、なんで笑っているんだ?」


「この事件の真相がわかったからですよ。」


「本当か!?」


「はい。」


あいがゆっくりという。


「謎解きを始めましょうか。」


「あぁ。頼むとしよう。」


「まず、このひったくり事件事態が、ぼくを犯人に仕立て上げるための計画的な犯行だったんです。」


「これの事件が!?」


「はい。」


ここにいる全員が一斉に騒ぎ出す。


「静かに。」


シーン…


「何らかの恨みがあるのでしょう。まぁ、犯人の予想はついています。あの、ひったくりの被害者役をした人物になんだか、見覚えがあったんです。」


「誰なんだ!?」


佐間刑事が、驚いた声を出す。


「あの女は、殺人罪で、一度服役しています。そして昨年、刑務所からでています。そしてここからが大切です。この女を逮捕したのは、ぼくなんです。」


「じゃあ、その女は、逮捕されたことを根に持っていたというのか?」


「はい。おそらく、そうでしょう。計画では、女…いや、青間 春子(あおま はるこ)は、ひったくり犯と言って、僕に、そこに死んだふりをしている男を追わせて、」


「ちょ、ちょっと待ってくれ。死んだふりってどういうことだ!?」


「あぁ、あの男は、生きていますよ?だから、救急車を呼ばなかったんです。おそらくナイフを刺す予定の所に、血のりでも、入れていたんでしょう。」





ダッ


「捕まえろっ!」


「がっ」


自分が生きていることがばれてしまった男が逃げ出そうとするが、そうはいかない。


「逃げようとしても無駄ですよ。」


「あいさん、この男を署に送ってきます。」


「いや、ちょっと待ってください。そうですね~。せっかくなので一緒に聞いてもらいましょうか。」


「いや、でも、署に送らなくては」


「まぁ、いいじゃないですか。」


「佐間刑事、ありがとうございます。では、続きを聞いていただきましょうか。青間春子は、ひったくり犯と言ってこの男を追わせて、自分は逃げるつもりだったのでしょう。そして、逃げることに関しては、二人で話し合った。ちがいますか?」


「ふんっ。そうだよ。」


「あと、あなたの名前は大上 吾郎(おおかみ ごろう)で間違いないですか?」


「な、なんで俺の本当の名前を!」


「そこは、内緒です(笑)」


「ぜったい大上のことバカにしてるよな(笑)」


同僚の警察官達がこそこそと、小声でいう。


「ん?何か言いましたか?」


あいが、笑顔で言う。いや、正確には目が笑っていない…


「ひっ!な、なんでもないです。」


同僚の警察官でも、あいは怖いようだ。


「では、謎解きの続きをいたしましょう。この犯行は、青間と大上の二人での犯行だった。そして、予定では大上は本当に死ぬ予定だった。なのに、どうして途中で予定を変えたのか。それは、死ぬのが怖くなったからではないですか?」


「いや、ちょっと違うね。」


「?」


自分の推理が間違っていたことに疑問を持ったのか、あいが眉をひそめながら、大上を見つめる。


「俺はもともと死ぬつもりなんてなかった。あの女が、勝手に計画を立てたんだ。


おれだって、さすがに死ぬのはいやなんだよ。こんな俺でも、一応結婚していて、妻と子供がいるんだよ。それだから、死ぬのはいやだって言ったんだけどよ、あの女そんなのは、関係ないなんて言うんだよ。それで、さすがに頭にきて「俺は、自分が死ぬなら、こんな計画抜けるからな!」って怒鳴ったんだ。そしたらあの女なんて言ったと思う?こういったんだよ。<別に、死にたくないなら死ななくていい。お前の妻と子供が殺されてもいいならな。>って。おれ、あいつらを人質に取られたから、どうしようもできなかったんだ。あいつらを危険なことに巻き込みたくないんだ。だから、だから、」


そこで、大上は泣き出してしまった。


「わかりました。その件に関してはこちらで何とかします。あなたは、今生きている。青間にこのことがばれたら、本当にあなたの家族を殺してしまうかもしれない。全力であなたの家族をお守りします。」


「ほ、本当か!?」


「はい、もちろんです。しかし、この偽のひったくり事件はまた別件です。あなたと、青間は誰も殺したり、けがを負わせたりしていない。けれど、この偽物のひったくり事件は、警察の業務妨害という、れっきとした、犯罪です。」


この場が、シンとする。


「謎解きの続きを始めます。」


そこで、


「まってくれ!」


大上が、ストップをかける。


「なんでしょう」


「この事件の真相は、俺がすべて話す。」


「そうですか。」


あいが少し、びっくりした顔をする。


「でもなぜ急に?」


「さっき、あんたが俺の家族を全力で守るって言っただろ?それを聞いて俺、思ったんだ。俺、警察の業務を妨害したのに、邪魔したのに、しかもお前を殺人犯としてはめようとしたのに、俺の家族を守ってくれるなんて、って、だからきちんと、自分で、話すことにしたんだ。」


大上が、決意したような顔で言う。


「わかりました。ではお願いします。」


「あぁ」








ウゥーーーーーンパーポーパーポーーー


パトカーのサイレンが夜の町に鳴り響く。


あの後、大上はすべてを話した。


この事件にあたった警察官一同、みんなホットした。


しかし、あいは事件の真相を話すことができなくて残念だったみたいだ。





「あ、佐間刑事!お疲れ様です。今日、大上吾郎と、青間春子を送検しました。」


「おぉ、そうか。これで一応、一安心だな。」


「はい。大上が検察で、証言を変えなければいいのですが…」


「あい君、それはないと思うよ。大上は、犯罪の世界から、足を洗うだろう。」


「どうしてそう思われるんですか?」


「大上は、何かを決意した顔をしていた。きっと、この世界から、足を洗うことを決意したんだろう。私は、そう信じているよ。」


と、にっこりと笑う。


「そうなんですね。では、私も信じてみることにします。」


あいも、にっこりと笑い返す。


「あいさん、佐間刑事!大変です!○○町から、変死体発見との通報が!恐らく、殺人事件と思われます!」


刑事が、大きな声で言う。


「あいくん、ゆったりとおしゃべりしている暇はなさそうだね」


「そうですね。」


「行こうか」


「行きましょう」

















5年後の日本は、どうだったかな?


日本は、いつまでたっても犯罪がなくならない。


しかし、少しでも減らそうとしているのが警察官だ。


みんなが、一人一人が努力すれば、犯罪は減っていく。


それは、警察官を助けることにもつながる。


私達が伝えたかったのは、そのことだ。一人でも多く、わかってくれたらうれしい。


日本の未来は君たちにかかっている。


日本を、日本の未来を頼んだよ。


                    By Ai&Sama















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