+第三の祈り(終)

 私の肉体は、すでに存在していない。あの忌まわしき堕天裁判の時、私は巻き込まれたのでは無く、ある男によって殺された。血迷った自身の信仰に酔いすぎた、悲しき男に。最後まで抗った私の想いは、今もなお、人の眼に見えない魂だけが、現世を彷徨っている。

 仮初の姿を使って、今も元気でやっている同僚に、私の想いが伝わったのだろうか。ニコラス。どうかお前が断ち切ってくれ。二度と同じ過ちが起きぬように。血塗られた歴史を、二度起こさぬように。そして全てが終わった後に、私が眠る場所へ……




 昨日怪我をしたクリムの様子を見に畑へと出向くアトリアは、木籠に水の入った水筒とグラス、パン、それと塗り薬に包帯を用意した。クリムは相変わらず所定の場所に座って尻尾を揺らしながら、遠くの方を見ていた。

「クリム、朝ご飯持って来たわ。その前に手当てしましょう」

「……はーイ」

 アトリアは傍にあるベンチに腰掛け、クリムを待った。

 クリムは尻尾を揺らしながらベンチに座り、怪我をした腕を差し出した。昨日アトリアが手当した包帯を取ろうと優しく触る。クリムは何ともないような素振りを見せているが、前髪の内側は何かを噛み潰したような顔をしていた。まだ火傷のような傷は痛みと熱を持っていた。血と体液で濡れた患部は、一向に治癒している気配が無い。

「アトリー」

「何? クリム」

「やっぱリ、コこ、あブない。ニげよう」

「それは出来ないって、前にも言ったでしょう。ここには大事な人が眠っているか……」

「じゃあオレは、だいじじゃ、ナい?」

「もちろんクリムも大事な人よ、でも私の心は……」

「でモ、オレより、そのヒトのほうガ、だいじ」

「……」

「なんデ、だいじ?」

 アトリアはクリムの疑問に答えられなかった。それが本当に自分の意思なのか、何かに縛られているだけの依存なのか、アトリアでも理解していないからだ。

「ごめン、アトリー。ごハン、たべヨウ」

「……そうね、食べましょう」

 包帯の取り替えが終わると、木籠からグラスに水を注ぎ、パンを取り出していつものお祈りを捧げた。

 言葉も無く二人は食事を済ませ、クリムはまた見張りの場所へ、アトリアは住まいへ戻る。

 アトリアは、まだクリムの言葉が頭から離れていなかった。なぜ『大事』だから、ここに居なければいけないのだろうか。このレレーゼ教会へ足を運ぶ人は誰もいないというのに、誰かを出迎えるわけでもないのに、ここに居るべき理由は何なのか、次第に分からなくなっていた。しかし大事な人を守るだけが使命ではない。それはアトリア自身が一番理解しているはずである。

 木籠の中身を全て取り出したが片付けをする気になれない。その足で教会の祭壇前へと向かった。そして跪き、天使像に自分の胸の内にある悩みや不安を吐いた。

「天使様、私エイブラハムは、なぜ、ここに居続けなければいけないのでしょうか。なぜ、危険な状況にありながらも、この教会を守っているのでしょうか。崇拝する者は誰もおらず、ただ私とクリムの二人だけで、守っているのはなぜでしょうか。大事な人とは、一体誰なのでしょうか……天使様、私の使命とは、何なのでしょうか……」

 ふと気付くと窓から見える雲行きは険しく、風は次第に強く吹いている。今にも嵐が来るような気配をしていた。また、アトリアの不穏な胸騒ぎが、これから悪い事が起こるかもしれないと、予感しているようだった。

 突然、猫の威嚇する鳴き声が聞こえた。

「――クリム!」

 後ろの正面扉を開けると、手前にはクリム、その奥には見知らぬ銀髪の男性が立っていた。黒く長いコートに身を包んだその男性の顔を見た時、アトリアはなぜか知っているような気がした。だが思い出せるはずはない。アトリアはあの堕天裁判より以前の記憶を覚えていないのだから。

「貴方がこの教会のシスターですか?」

 男性は単調な口振りでアトリアに問う。けれどクリムがアトリアに手出しさせまいと、屋内に戻るよう指示する。

「アトリー、だメ。へや、もどッテ」

 アトリアは戸惑っていた。ここでクリムの言う通り引き下がって何が出来るのか。ただ守られているのか。いや違う。この場所は守らなければいけない。それが天使様を崇拝する身である者の使命であり、遣名を賜った者の役目なのだ。

「いいえクリム、あなたが戻りなさい」

「でモ……」

「いいから」

「はーイ」

 クリムが教会の中へ入るのを見送り、門越しにいる男性に話しかける。

「お初にお目にかかります。ようこそ、レレーゼ教会へおいで下さいました。私が教会唯一のシスター、アトリア・エイブラハム・ミルザームです」

「あんたは覚えていないのか、あの事件を」

「それより先に、お名前を伺ってもよろしいですか?」

 アトリアは恐怖を殺すように、無理やり安堵した表情を作って応対する。

「神教啓示団体総督、ニコラス・フォーガス」

「アンチ・アンジェ・アポカリプス……」

 アトリアは小声でニコラスと名乗った男性の言葉を反復した。なぜなら聞き覚えがあったからだ。その言葉が焼き付いた刹那、脳裏には母ミラの険しく恐怖に陥った表情が過った。この世の終わりとも思える、我を忘れるほどの恐怖が母を襲った時の顔は、天使崇拝者の天敵である事を、幼いながらに理解していた。

 アトリアの中では、次第に過去が蘇っている。それはアトリア本人ではない、何かが覚醒し始めた証拠でもあった。

「ここじゃ風邪をひいてしまいそうですから、教会の中へ入りませんか?」

 ニコラスは無表情に足を動かし始め、教会の中へ入っていく。




 教会内は蝋燭を灯す事も無く、暗く湿った黴臭さが少し漂っていた。祭壇から一番近い長椅子の左通路の左端に、クリムは耳を斜めにして座っていた。どうやら虫の居所が悪いらしい。

「どうぞ、お好きな所にお掛け下さい。今温かい飲み物を持って来ますので」

 アトリアは離れの屋内へと続く扉で一度お辞儀し、教会を後にした。ニコラスはアトリアを見送って、クリムの座っている位置から一つ後ろの対角線上の位置に腰を掛けた。

「アンた、なにシにきた」

 数分の沈黙を絶ち、クリムは天使像を見つめながらニコラスに話しかけた。

「悪魔は知らなくていい事だ」

「オレはアクマじゃなイ。そレに、アンた、わるいヤつ」

 ニコラスは鼻で笑ってやった。

「貴様は人間の皮を被った悪魔にすぎない。その腕の傷、昨日私が聖水の入った瓶でやられたんだろ? しぶといな。その聖水はじわじわと悪魔の皮膚を溶かす特注品だ」

「だっタラ、そのカおのきズ、オレがつけタ」

「貴様のような低級なぞ、掠り傷とも言い難い」

 言葉に嘲笑いを含んだような口振りを、クリムは嫌ながらも聞いていた。

「何故貴様はここに居る。教会のような神聖である場所に悪魔は存在して良い筈が無い」

「オレは、すくワれた。てんしサマに。だカラ、ここニ、いる」

「やはり天使も、それを崇拝する人間たちも狂っているな。今日を以て排除せざるを得ない」

 ニコラスは袂に仕舞っている銀に輝く銃を取り出し、クリムの頭部右側に突き付けた。

「最期に言い残す事はあるか。悪魔」

 数分、沈黙が訪れた。外の風は威力を増し、枝葉が今にもステンドグラスを叩き割ろうとしていた。ニコラスは心穏やかに撃鉄を手前に引き、トリガーに指をかけた。

「――まもる」

 俯いたままのクリムは小さく言葉を吐いた。突如、クリムの背中から身体以上の大きな鋭い羽を生やし、身を包む。黒く淀んだ風はバリアのように、誰も近付く事は出来ない程の勢いがあった。

「なん、だと!」

 ニコラスは咄嗟に祭壇を壁にして、クリムから離れた。祭壇の端からクリムの様子を覗き見る。先ほどまでの可愛らしい子供の姿ではなく、漆黒の長髪は細い三つ編みで一本に束ねられ、青年男性へと成長した姿だった。背中の羽は大きな黒鎌へ変わっていた。長椅子の上には黒猫が死んでいるように眠っていた。

「あの悪魔、中に別の魂を宿していたのか」

 ニコラスは暫く息を潜めようとしたが、それは無意味だった。

「僕を侮ってもらっては困りますよ。お兄さん」

 気配の察知は並の人間では有り得ない程の能力だった。ニコラスのいる方向に突進して、背後を奪った。クリムは命もろとも奪う勢いで鎌を振り下ろしたが、間一髪、ニコラスは銃で受け止める事が出来た。

「くっ……貴様は、何者、だ」

「ここを仇名す者に、答える義務はないですよ!」

 不可解な大きな金属音が敷地内に響き渡る。その音を聞きつけたアトリアは教会へ戻ってきた。

「何事で……! ……ロド、ニー……」

 アトリアはかつての恋人であった人の名前を、咄嗟に呟いた。その顔を間近に見える事は無くとも、アトリアの忘れていたはずの記憶は鮮明に蘇っていった。目の前で行われている無意味な戦いを止めに入る事は決してしなかった。いや、出来なかった。なぜならアトリアは、すでに過去の記憶に囚われていたからだ。

「そう――思い出したわ。かつて教会を弾圧しようとした集団が無理やり崇拝者たちを、私の、両親を……」

 黒鎌を振り回すクリムがアトリアの姿を捉えた。

「アトリア、僕が守ってあげるからね!」

 生き生きとした表情のクリム、しかし声は届いていなかった。

「アトリアの両親や、天使様を崇めていた人々を、お前たちは理由も無く無惨に散らし、無下に扱ったことを悔い改めろ!」

「はっ! 外道はどちらだ、悪魔め。天使は悪魔を味方などにはしない。この地に堕ちた天使は堕天使となり、お前のような低級悪魔を連れて、誰かの体を媒介にしないと存在すら出来ぬ哀れな堕天使よ! 偶像の賜物に過ぎん!」

「黙れ! そうやって罵倒しか知らない愚か者が、天使様を口にするな!」

 攻防戦は時間が経つにつれ激しくなっていく。火花を散らしながら、二人は自分の意思をぶつけ合う。

「だめ……このままじゃ、あの時と同、じ――」

 アトリアの息が急に荒くなり始め、長椅子に突っ伏すように倒れ込んだ。首にかけている逆十字架のペンダントが眩い光を放ち、やがて人型となって現れた。光はニコラスとクリムの間を一瞬にして奪い、クリムの持っている黒鎌を取り上げた。

「クリム、感情を抑えなさい」

 背中に翼を生やし、アトリアによく似た姿の人が、クリムを落ち着かせる。

「サリエル様、鎌を使わせて下さい。あともう少しで、その減らず口を仕留められるところだったのに」

「無暗に命に触れてはいけません。例え私を非道とする考えの人間であっても」

「…はーい」

 サリエルと呼ばれた人は、長椅子で突っ伏しているアトリアを指差し、クリムが看病するように指示する。

「私の使いが手荒な事をして済まない。かつて天界十二天使のサリエルと呼ばれていたのは、私だ」

「我が団体は、貴様ら天使が神より信仰されている事が、最も気に食わん! ましてや堕天使である貴様を信仰する場所が残っている事! 我が団体は数年前に弾圧を完遂させたはずだ。それなのに、何故この教会が未だ機能しているのかが理解出来ない」

 ニコラスは怒りの感情を露わに、サリエルに言葉をぶつける。

「その答えを話す前に、貴様の集団が何故、神の下に仕える、我ら天使の信仰を否とするのか、教えてほしい」

「愚問! 神こそが、この地に立つ者全てを楽園へとお導き下さり、安寧をもたらす大いなる存在! 天使は使いにすぎん」

「ならば私からも問いたい。何故使いを信仰する事も、また神を信仰する事に繋がるとは思わないのか?」

 それはサリエルの純粋な疑問であった。神に仕える者だからこそ、その事実を知っていた。天使も神も崇拝される事自体に差別は無い、そして信仰が今も続いているからこそ意味がある事を。

 ニコラスは一度、心と息を整えるように、大きく深呼吸をした。

「神だけが信仰されていればいい。天使なぞ信仰するに値しない」

「――そうか。ならば、彼の人間の想いは無駄になってしまうのだな……」

 ニコラスの返答に、サリエルは悲哀めいた表情を浮かべ、深い溜め息を吐いた。

「彼の人間?」

「ただ一人、貴様らと同じ集団にいた者だ。中でも一際強い想いを持った男が居た。名は知らないが、澄んだ青い眼を持っていた」

 サリエルは見ていたのだ。天使崇拝者にとっては最も忌まわしき事件の一部始終を。神教啓示団体にとっては最後の成すべきだった行為を。誰一人として幸福にはなれない人間同士の皮肉な争いを、サリエルという堕天使はただ見ていた。

「青い眼……アイゼアの事か?」

「そいつは貴様と同じ顔をした人間に、最期まで抗った。本当にこれが正しい行為だったのかと。しかしその人間は、物理的な力には、やはり勝てなかった。それで臓を撃ち抜かれたのだからな」

 指をさした先にあったのは、ニコラスが握りしめている銃だった。

「まさか、父がアイゼアを殺したというのか……」

 サリエルとニコラスの会話に、腕の腐りが進行し今にも死に近づいているアトリアが割って入る。

「サリエル、様……その時、の、こと、詳しく、教えて……下さい……」

「私にとってはほんの少し前の出来事だが、人間にとっては相当昔の出来事に感じるのだな。いいだろう。だが真実は私の言葉しかないぞ」

 教会の外で大きな音を鳴らしていた嵐は、少し弱くなっていた。しかし日が完全に落ち、灯りは天使像の下にある燭台のみに揺らめいていた。誰もその事には気にも留めず、ただサリエルの言葉を待ち望んでいる。

「ここに栄えていた町は、貴様らの集団によって、破滅へ堕とされた。最後の天使崇拝であったこの場も、いよいよ終焉を迎えようとしていた。ちょうどエイブラハムが、人間としての私の使いである事を承諾する日でもあった。私はとても悲しんだ。ミカとシェムの尊き魂が私の下を通り過ぎていき、天界へと導かれていった事。そしてエイブラハムも。けれどエイブラハムはとても幸せ者だ。常に寄り添っていた男に、辛うじて天界への道を閉ざされていた。その男は勇敢だった。そしてまだ意思があった。その意思が失われないように、私がクリムへ吸収させたのだ。集団は私を崇拝する者を全ての魂を攫っていったのち、この教会の地下から脱出しようとした。そこで、集団に一人疑問を持つ者が、貴様によく似た顔の男を、殺そうとした。けれどその男は始めからそうなる運命だと予知していたかのように、先に青い眼の魂を亡き者にしたのだ」

 ニコラスは言葉を失った。父が何故、仲間の命を奪っていったのか、父が何者であるか理解出来なくなっていた。

「ならば、なぜ、私は……」

「それはエイブラハムの中で私が存在出来る世界を保つ為だ。本当なら、貴様らの弾圧行動の時に、潔く天界へと戻ってしまえばよかったのだがな」

 歯切れの悪い想いが、サリエルの心を苦しめる。クリムはそこで疑問に思った。

「なら、なんで僕はここにいるんですか?」

「先ほども言ったが、お前には勇敢な男の意思を……」

「それだけの理由なら、そのまま僕も天界へと連れていき、貴方と同じか、それ以上の罰を食らえばいいだけの話だと思います。本当の理由は別だと思います」

「気付いていたのか」

「これは僕の想いじゃないからです」

 クリムは胸に掌を当て、そのまま服を掴んだ。胸の内に騒めいている何かが、とても気持ちが悪く感じられた。

「その勇敢な男の意思は、きっとエイブラハムを守り切れなかった懺悔というものがあったのだろう。本当はエイブラハムに気付いてほしかったのだが……男はすでに亡骸となっていた。治癒は死者を蘇生させる事は出来ない。私の使命完遂の為に、何もかもが狂ってしまったから、こうして、会話出来る程度に保っていたのだ」

 サリエルは全てを狂わせてしまったのは己のせいだと、本当は謝罪の言葉以外は仕舞っておきたいと願っていた。しかし真実を伝えなければ、人間たちは決してこの皮肉な行動を終わらせる事は出来ないと思っていた。

「天使、様……私は、どう、なって……しまうの、です、か……」

 腐敗が進むアトリアは、サリエルに必死で訊ねた。

「エイブラハム、お前は私を最後まで厚く信じ、慕ってくれた。もう使いとしての役目はこれで果たされた。導きの道はすぐそこにある。安息の地へ行くといい。勇敢であった、お前の大切な男と共に」

 サリエルは黒鎌を教会の正面扉に向かって思い切り振り下ろす。床から湧き上がる大いなる光はやがて軌道になり、扉は強く光り輝いていた。これは天界へ通ずる入り口。この先へ行ってしまえば、もう生きて帰る事は出来ない。つまり、死者となり、魂は神の元へ導かれるのだ。光り輝く扉の前には、男女が待っていた。アトリアは、それに気付くと、腐敗した体を引き摺って扉の正面へと目をやった。

「おとう、さん? ……おかあ、さん?」

 男女はゆっくりとアトリアに近付き、クリムもまたアトリアを支える為に近寄った。クリムの体は青年と少年に分離し、少年の姿は長椅子に横たわるように黒猫の下へ、青年はアトリアを介抱するように体に触れた。

「アトリー。お疲れ様」

 優しい青年の声は、アトリアの心を癒やしていくかのようだった。

「ロドニー……ロドニーなのね! 会い、た、かった……わ……!」

 腐敗は急速にアトリアの肉体を蝕み、やがて躯が剥き出しになった。そして魂の体は白い一枚の服を纏って、青年ロドニーと一緒に男女の下へ向かう。ふとアトリアはサリエルへ振り返り、最後の会話をする。

「天使様。私は貴方が堕ちた天使である事を知りながら、貴方に使えていました。私には解りません。どうして貴方のような偉大な天使様が、この地へ堕とされなければいけないのか」

「……私は天界での禁忌に触れてしまった。悪魔を僕とし、不用意なまでに魂を攫ってしまったのだ。私にはそれだけの力がどうしても必要だったのだ。天界への供物として、大いなる神の王の復活を目指したが故、私は天界へ追放された。この愚行が身の程知らずと言われようが、私は何も思わない。私はいずれ、こうなる運命だったと、何処かで感じていたからな。ただ、それだけの事だ」

「本当に、愚かなだな。天使も、人間に近付き過ぎたのだ。――その慈悲なる心は、次第に周囲を見る力を失い、自己の達成に目が眩んだ証拠だな。本当に哀れな堕天使よ」

 ニコラスは使い切った体力で息を荒げながら、言葉をぽろぽろと吐いていく。その態度に、アトリアの魂は癪に障り激怒する。

「ニコラスさん、貴方はそう言いますが、自己の達成に目が眩んだ事は、貴方も同じではないんですか? 貴方がたがこの教会を襲撃する事、天使崇拝者をこの世から抹殺する事、そして、天使様を罵倒し、無下に仇の眼を向ける事。それは慈しみを失った、人間という愚かな獣がする事ではないんですか!」

「エイブラハム、止めろ。私を庇った所で、お前も変わらない事をしているだけだ」

「――そう、ですね」

 アトリアは悔しくて唇を噛み締めた。

「さあ、お前は天界へ行くがいい。皆、待っているぞ」

「天使様、私を使いとして選んで下さり、ありがとうございました」

「ああ、私もお前で良かった」

 アトリアはロドニーの手を掴んで、扉まで駆け足で軌道の上を通った。それはまるで幼少期の可愛らしい姿を思わせる、アトリアにとって一番幸せであっただろう時を想起させる。


 月が昇り、ステンドグラスは怪しく神々しい光を吸収して教会内を照らしていた。

 サリエルは黒猫と少年に近付き、長椅子の傍にしゃがんだ。

「さて、私も余計な荷物を持って、私自身を清算しに行かねばなるまい。貴様はどうする? この場所は私が去れば、跡形も無く塵と化すだろう」

「もうこの場所には何も残っていないんだろう? 私は天使崇拝という忌まわしき文化さえ無くなれば、目標は達成される」

「確かに、貴様の思う壺だな。だが、本当に何も残っていないと思うか?」

「どういう意味だ」

 ニコラスはようやく立ち上がり、サリエルと対等に会話をし始める。ニコラスの疑問はごく簡単なものだった。

 少年もアトリアと同じように風化し、躯の姿と魂の姿に分離した。そして魂の姿は、ニコラスに一言「この地下水道に眠る子らの亡骸」と残し、二度と目覚めないような、とても深い眠りへと落ちていった。

「地下、水道……」

「本当の真実は、この下に眠っているのかもしれないな」

 少年の頭を撫でながら、サリエルはニコラスに向かって話すかのように呟く。

「下へはどうやって行けばいい?」

「さあ。私より、そこの魂が知っているのではないか?」

 サリエルが指差した先に居たのは、見覚えのある布を被った『誰かの魂』だった。

「依頼人? どうして……魂って……あ……」

 ニコラスが困惑している間に、サリエルが魂と呼んだそれは、祭壇の左横に立った。

「そいつは貴様に付いて来てほしいそうだ」

 静かに宙に浮いている『誰かの魂』は、ニコラスを見ているようにも感じられた。ニコラスの心は、『誰かの魂』から発する何かで、微かに人物を特定できた。

「……アイズ……」

 かつて生存していた頃は、よく仲間の面倒を見ており、総督であったニコラスの父によく慕っていた。しかし神教啓示団体がレレーゼ教会を弾圧する堕天裁判の日、それ以来行方不明となっている。

「お前、まさか――」

 静かに佇んでいる『誰かの魂』は、そこに何かがあるように示していた。ニコラスは『誰かの魂』の下へ駆け寄り、祭壇の不自然な破壊の跡を見つけた。暗く先の見えないその穴から、風と水の音が微弱ながら聞こえた。『誰かの魂』はその穴の入り口に立つと、僅かに暖かい光を灯し、先へと進んだ。ニコラスもそれに続いて進んでいく。




 ニコラスは先導の灯を頼りに、地下水道の横道を進んでいく。湿った黴臭さが鼻を刺激する。本当なら早く脱出したい。けれど今逃げてしまえば、かつての親友であり、一番信頼を置いていた仲間の魂が報われない。真実を見つけなければならない。そんな些細な葛藤がニコラスの余裕を奪っていた。

 しばらく歩くと、人の白骨化した死体がいくつか転がっていた。服もボロ切れになり、もはや誰であったのかは特定ができないほどだった。しかし目先の行き止まりで元は銀白色であっただろうコートには見覚えがあった。総督を務めていた父の所有物だ。背中には神と十字架の足元に翼の生えた人々が十字架に掴もうと必死になっている様子が描かれている。天使は神に使え、神の持つ力を手に入れようとしているのだそうだ。

 その直ぐ傍には、ベストと深緑のネクタイが落ちており、恐らく腹部に当たる場所に血溜まりのような跡があった。

「父が、アイズを殺した、というの、か……」

 先導をしていた『誰かの魂』は、その白骨化した死体に近付き、幻影を作り出した。長身の金髪にエメラルドのような瞳を持つ青年。正しくかつての親友であったアイゼアの姿だった。

「ニコラス。この事実は変わらない。変えられない。俺はニコラスに、もう少し早く気付いてほしかった。総督であった君の父の狂った思想に、騙されないでいてほしかった」

「いや、父は偉大で正しかったはずだ。それを誰も間違いとは思いもしなかった。だから正しいと……」

「違う、正しいとか間違いとか、そういう事じゃない。信仰は何のためにあるのか。あの人は本質を知らなかったんだ」

「……」

 アイゼアの幻影に反論が出来ず、言葉や思考は止まってしまった。正誤でしか見てこなかった自分の愚かさに、初めて気付かされたのだ。

「ニコラス。君には申し訳ないと思っている。死んでも罪を償う事の出来ない、大きな物を背負わせている事に。だからこそ、ニコラスに託したい。俺が心に刻んでいた物を」

 アイゼアが指先でベストのポケットにある何かを念動している。ポケットの入り口に見えている突起物から予想出来たのは、銀の懐中時計。アイゼアは肌身離さず持っていた事をニコラスは覚えていた。

「拾って、蓋を開けてくれないか」

 指示通りに懐中時計の突起物を押し込み、蓋を開ける。そこには無理やり何かで掘ったように文字が刻まれていた。

 ニコラスはこの文字の羅列が何を意味しているか、直ぐには解からなかった。だがアイゼアが言いたい事を、生前の事を思い出す過程で見つけた。

「ニコラス。真実とは、その二つの瞳だけで見える物だけが、全てでは無い。その事を、どうか、忘れ……で……い……」

 アイゼアの魂は次第に薄れていき、光の粒子が霧散した。目の前で本当に消えてしまったアイゼアを偲び、同時にニコラスは自分の未熟さとこれまでの後悔を晴らすかのように、遺産となった銀の懐中時計を強く握りしめ、泣き崩れた。それでもニコラスは、自らの意思で神に対する信仰心を表沙汰に叫んだ。

「おお神よ! 我等が大いなる父よ! 私のこれまでの行いを罰し、この先のお導きを示して下さい!」

 地下水道に響き渡るその声と共に、大きな地響きが空気を揺らす。ニコラスは身の危険を察知し直ぐ様脱出した。




 サリエルはニコラスが居ない事を目視すると、クリムが生存していた頃の姿と黒猫を片腕に抱いて、祭壇に向かって黒鎌を振り下ろした。祭壇は教会の正面扉のような光ではなく、禍々しい渦を巻いていた。

「過去という時間は、人の思い出でしかなく、神、あるいは大地にとっての記憶。では、我等天使という存在は、どこに生きているのだろうか。そして私のように禁忌を犯し、堕ちた者たちの宛ては、この先にある破滅しか、無いのだろうか――。私は、何処で間違ったのだろうか――」

 サリエルは意を決して、渦の中へと足を入れた。渦はサリエルを黒く染め上げ、やがて、心まで蝕んでいった。


 サリエルが現世から完全に離れ、夜明けが来た。地震と共に教会や土地が地へ還り、新たな新緑の息吹が生まれた。まるで、何も無かったかの様に。

 ――レレーゼ教会が消失して一ヶ月が経過していた。ニコラスはずっと思いを巡らせていた。総督という立場に置かれた自身の言動によって、仲間たちの未来を閉ざしてしまわないだろうかと。ふと銀の懐中時計の蓋を開け、アイゼアの事を思う。

「アイズ、お前はどうしたかったんだ。何を考えていたんだ――」

 ドアをノックする音がした。先ほど呼び立てた元アイゼアの秘書が、「失礼致します」とドア越しで一声かけ、入ってくる。

「ニコラス様、紅茶をお持ち致しました。どうぞ」

「ああ、ありがとう」

「失礼致します」

「待て」

「はい、何か?」

 ニコラスは銀の懐中時計を数秒見つめて、秘書に問いかける。その前に、秘書がその懐中時計はアイゼアのものであった事に気付いた。

「それは、アイゼア様の大切になさっていた時計……」

「ああ、私はあの教会で真実を知った。そして、あいつはこれを遺していった」

 沈む空気の中、秘書は唇を噛み締めて、明るく振る舞った。

「きっとアイゼア様は最期まで職務を全うされた事でしょう」

「いや、私はそうは思わない。なぜなら私は、あいつの魂と会話したのだ。数年前の、堕天裁判事件。お前も覚えているだろう。レレーゼ教会という場所を」

「あの忌まわしき教会なんて……思い出したくもありません」

「あの場所は無くなった。跡形も無くな」

「それで正解だと思います。それで、アイゼア様は最期、なんと仰っていたのですか?」

 ニコラスは一度大きな溜め息を付いて、呼吸を整えた。

「……あいつは事故死ではなく、前総督の意思に背いた結果、殺された。何が正しい、何が間違いという二通りだけの視点で考える事自体が、間違っているのだと」

 秘書は乱心する事なく、まるで何か知っていたかのような口振りでニコラスに話す。

「やはり、そうなる事は必然だったのですね……。私はアイゼア様から、あの裁判事件を起こす前に伝えられていました。何もかも全てが終わった後、神教啓示団体を出て、世界を知りたいと、自分が如何に無知であるか、証明するために。そんな事を口にしていました」

「――そうか、アイズらしいな……。なあ、一つ聞かせてほしい。私は明日を持って、神教啓示団体を解散させようと思う。しかしそれは、仲間たちの居場所を潰す事と何ら変わりない行為だ」

 ニコラスは困惑の中で留まってしまっていた。仲間の事が気掛かりで仕方ないのだ。

「きっとアイゼア様が今も生きておられたなら、止めはしないと思います。むしろ、優しすぎると言って、喝を入れるかもしれませんね。我等、神教啓示団体は神を信仰する者です。きっと一人一人に行く道を導いてくれると、信じている事でしょう。私もその一人ですから」

 秘書は優秀だった。アイゼアの下に就いていたからこそ、考える事が出来るのだと、ニコラスはそう思った。

「ありがとう、流石は元アイゼアの秘書だな」

「アイゼア様の受け売りにすぎません。それでは、失礼致します」

 秘書はドアの前で一礼し、部屋を出ていった。

 再度、銀の懐中時計の蓋を開け、アイゼアを想いながら言葉を吐いた。

「本当にお前という奴は、心底羨ましいよ」


 翌朝、ニコラスは全員を集会場へ招集し、壇上の上手側へ身を潜め準備を整えていた。

「緊急集会ってなんだろうな?」

「総督のお考えだから、見当なんて付かないわ」

 ざっと五〇〇人はいるだろう雑踏は、期待と不安が言葉となって渦巻いていた。

「本当に、よろしいんですね」

「ああ、これが『私』の選択だ。私は人であって神ではない。また神の使いでもない。私も信仰者の一人に過ぎない。そうだろう?」

 秘書は何処か嬉しそうに微笑んで、壇上へと向かうニコラスを見送った。

「変わられましたね、ニコラス様。今や前総督の面影は見えません」

 団員たちは壇上の前に現れたニコラス総督を目の当たりにすると、集会場は自然と静寂に包まれた。息を整え、マイクのスイッチ入れた。

「神教啓示団体の皆、朝早くから集まってくれてありがとう。今日は私の意思と、この団体の今後について話したい。退屈かもしれないが、是非聞いてほしい」

 緊張感が増すにつれて、ニコラスの体は少し力が入ってしまっていた。話さなければ、そういった葛藤が膨れ上がる度にニコラスは押し潰されそうな心境だった。

「まずは私の意思を聞いてほしい。私はずっと考えていた。前総督であった亡き父は、信仰のあるべき姿を目指していた。そしてこの組織を作り上げた。しかし、私は信仰の『あるべき姿』に疑問を思っていた。なぜ信仰の形が統一されなければならないのか。人それぞれに信仰の形があり、目指す先にあるものが同じ終着点にあるからこそ、教会や組織というものがあるのではないか。脅威となる組織とするのは、全くのお門違いではないだろうか。私はそれを正すための打開策を、この一ヶ月考えてきた。一ヶ月前、あの忌まわしきレレーゼ教会へ足を運び、真実を知った。亡きアイゼアが遺したこの銀時計から、私は教わった。見えるものだけが全てではないと。見えないものの叫び、主張に答えるのもまた、信仰に値するのだろうと、アイゼアはきっと、皆にも気付いてほしかったと思う。何が正しい、何が間違い、何を排除しなければならない、何を後世に残さなければならないのか。丸か罰でしか決められない我々人間は、本当に愚かだと、私は思うのだ。自らの意を持たず、ただ筆頭の言う事に従うだけの、洗脳されたハーメルンの子供たちのような我々でいいのだろうか! だから私は、ここに宣言する。神教啓示団体は今日を持って解散とする! そして今後は、信仰する心を忘れず自身の行動に誇りを持って、生きてほしい。それが、総督としての、私の願いだ」

 一同は騒めき、やはり批判の声は絶えず飛び交った。

「では我々の居場所はどうなるんですか!」

「ここが唯一の生き場所なのに、ここが無くなれば、私たちは何処で生きていけばいいのよ!」

 ニコラスは黙って見ていた。こうなる事は解かりきっていた。しかしニコラスにはこの場を鎮める言葉を知らない。そこへ上手側で聞いていた秘書が壇上に出てきた。そしてニコラスからマイクを奪い、団員に向かって叫んだ。

「貴方方は、ニコラス総督のお話の意図を理解しましたか! 今まで人生の選択を、神教啓示団体の総督に決めてもらっていたのですか。総督だって人なんです。神ではありません。確かに神教啓示団体としての居場所では無くなるかもしれません。ですが、物理的にこの場所は、今すぐにでも無くなるわけではありません。寂しくなれば、またここに来ればいい。生きていれば、また皆さんに会えます。生きるための目標なんて今すぐに見つからなくったっていいんです。まず私たちがしなければならない事は、明日を生きるための行動を探すことです。そうですよね、ニコラス総督」

 自信に満ちた秘書の顔を見ると、ニコラスは微笑み返して頷いた。

「皆の者! 暫しの別れとなるが、生きてまた杯を交わそうぞ!」

 ニコラスと秘書は壇上の下手側にはけ、集会を終えた。

「世話をかけたな」

「秘書として当然の事をしたまでです。それで、今後のことですが」

「ここで話すより、執務室で相談しようじゃないか。ここは寒い」

「そうですね」

 集会場の雑踏を尻目に、二人は執務室へ向かった。

 その後、長い時間をかけて、団員は拠点を去って行った。国に帰る者もいれば、別の国で気ままに暮らす者もいる。または自ら事業を立ち上げる者もいれば、慈善活動に励む者もいる。迷う者は協力者として、自らの意思で活動に励む者の下につき、力を発揮していった。

「ニコラス様、これで全ての関係者との取引は終了しました。長い間、お疲れ様でした」

「もう『様』を付けるのは止めろ。団体はすでに解散し、私も総督では無くなった。最後の尻拭いをしたまでだ」

「ふふ、それもそうですね」

「私はこの後、世界を旅しようと思っている。お前はどうする?」

「私は国に帰って、家族を養う事にします。兄弟も多いので。でも、喧嘩して出て行ったような不良娘を、快く受け入れてくれるか、分かりませんが……」

「お前の活躍は、私とアイゼアが一番よく知っている。きっと分かってくれる。書類は私がやっておくから、君は帰る準備をしなさい」

「では、お言葉に甘えて失礼致します」

「あ、そうだ」

 ニコラスは部屋を出る秘書に近付き、銀の懐中時計を渡そうとした。

「それは、ニコラスさんが持っていて下さい。きっと、その方がアイゼアさんも喜ぶと思います。私はただの秘書にすぎませんので」

「なら、預かっておこう」

「はい」

 秘書は執務室を出て、自室へ荷造りをしに戻った。

「父上、私は貴方のしたかった事が解かりません。けれど貴方のやり方は、少なからず間違っていたと、今なら断言出来ます」

 亡き父の写真に向かって、険しい言葉を吐き捨てた。そして最低限の荷物に纏められるように、手持ち出来るトランクに荷物を詰める。


 暫くすると、秘書が今から帰省する挨拶にやってきた。丁度ニコラスも旅に出る準備が整ったところだった。

「長い間、お世話になりました」

「ああ、こちらも世話になった。では、汽車に向かうとするか」

「はい」

 何もなくなった部屋に惜しむ事無く、拠点を立ち去った。汽車に乗るまでは、他愛無い話で少々盛り上がった。これまでの思い出や、アイゼアの知られざる一面、それぞれの癖、そんな人生の役に立たないような事で、笑みが零れた。

 汽車は大勢でごった返していた。直ぐには乗れそうにない雰囲気だが、ニコラスは予知していたかのように、指定席のチケットを既に手配していた。

「これで乗るといい」

 チケットを手渡すと、秘書は直ぐに汽車に乗り込み、窓から顔を出した。汽車は後一分で出発するようだ。

「今まで、本当にありがとうございました」

「もし良ければ、君の所へ顔を出したい」

「ええ、何時でも構いません」

 秘書は今日までの思い出と共に、涙が溢れた。

「きっと、また会えますよね?」

「生きていれば、必ずな。きっと神が導いてくれる」

「信じています」

 汽車は出発の汽笛を大声で鳴らし、車輪が動き出した。そして一秒毎に速度を上げていく汽車を、背中で見送った。

「神よ、迷える仔羊たちに、生の導きをお示しください」

 口遊む言葉を唇に持たせ、ニコラスは世界を知るための一歩を踏み出した。

 この物語は事実か。それとも語り継がれた逸話なのか。それを知る者は誰も居ない。私の使命は果たされた。堕ちた天使の天罰への道を示し、残された信仰者の新たな導を作り、死者は還るべき場所へ還された。これで本来の安寧は見えただろうか。私には何が正解か分からない。しかし、混沌とした世界を安寧に導く事が、今、神の下にある私の魂の、やるべき事だと、信じている。


全ての祈りは見届けられた

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堕天の教会 星山藍華 @starblue_story

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