第8話 素直になって
旧美術室に着くとパソコンに最後のCD-ROMを入れる。しかし、95%のところでゲージが止まり『キー・オブ・ザ・パーツ』が完成しないでいた。
俺が腕を組んで考えていると。
「ありがとう、わたしは本来の場所に戻れるわ」
穏やかな表情の入江は自分の手のひらをみている。そして入江がエンターキーを押すと。
旧美術室に落雷が落ちたように光と音がする。俺は再びパソコンを見ると『キー・オブ・ザ・パーツ』が完成している。
『最後のキーワードは『達成感』です』
何処からかともなく入江の声が聞こえる。すると、パソコンの画面に男性の姿が現れる。
男性は『室宮』と名乗り。もっとネットの開発者だと言い、十年以上昔に入江のデータ化をおこなったと言い出す。
「彼女は消える事のない悲しみ……世界に絶望して死を願った。わたしは彼女を愛していた。そして、彼女は自ら命を断ち、消えてしまった。わたしは彼女をデータの塊としてこの世に戻した。それが旧美術室の入江だ」
消えゆく入江のデータは真奈と二人で感じる事ができた。
「『キー・オブ・ザ・パーツ』は入江を大地に返すプログラムなのか?」
俺はパソコン画面の室宮に問いただす。
「そうだ、彼女の未練が終わった証拠……95%の『オーパーツ』と5%の『達成感』だ」
すると、俺と真奈は意識が失われていくのであった。
『目が覚めた時にお礼を残していくわ……』
それが最後の入江の声であった。
———……。
気がつくとここ二週間ほどの記憶がない。何故、真奈と共に旧美術室にいるのか不明であった。俺は倒れている真奈を起こすと。一緒に教室に戻る。
「ねえ、武蔵、わたし……」
「なんだよ?」
真奈はもじもじしながら『好きだよ』と言い出す。
ふ、やっと素直になれたか。
俺はこのまま、幼馴染として終わる気がしていたのに。
「わたしも不思議な気分なの、素直に『好き』って一生言えないきがしていたのに……」
それはまるで誰かが真奈に安心感を与えてくれた感触であった。
きっと、誰かの贈り物だと思う事にした。
それから……。
卒業式に日に俺と真奈は永遠の愛の約束をした。
「幽霊にでも祝福されている気分だね」
俺はにかむ真奈の手を握るのであった。
『むぎゅーとだよ』は好きですか? 霜花 桔梗 @myosotis2
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