教室から、ふたりの声が聞こえてきた。それは、想いを告げるものだった。
偶然、聞こえてしまったその声に、注意をはらい中を覗く。そして、告白への返事が。
『ごめん……俺、好きな子がいるんだよね』
動揺して、その場をあとにした。
ふと、夏の日のシーンがよみがえった。
トランペットの練習中、音楽室に突然、君が入ってきた。野球部の練習で怪我をして、保健室に行く途中に立ち寄ったのだと言う。
この時は、仲のいい友だちとして、普通に振る舞えていた主人公だったが、今では、声もかけられず、顔を見ることさえ躊躇ってしまう。
自分の想いに気づかされたからこその、思い悩む時間はなんともせつなく、そして甘酸っぱい。
読み進める中、ドキドキが止まらない。
等身大の恋愛小説が、これほど素敵だなんて。どうか、同じ想いを感じてほしい……。