第10話 消失した記憶2

 シャーロットの記憶が消失していることが分かって直ぐにエドワードは彼女をギルドから連れ出した。

 敵はどこにいるか分からない。自分の記憶もいつ消されるのか分からないうえに、シャーロットの記憶がどこまで消されているのかも分からない。

 エドワードは絶対的な安全を取り、都市から抜け出し近くの森まで足を運んだ。


「シャーロットお前、どこまで覚えている?」

「どうした?」

「いいから。アークシャリア王国に来たのは覚えているか?」

「ああ、もちろんだ」

「じゃあ来てから何日が経った?」

「一週間か?」

「ちょうど調査を始めた日からの記憶か。ならいい。全部忘れていたら困っちまうからな」

「私は、記憶を消されたのか?」

「ああ」


 それからシャーロットに彼女が消された情報をすべて伝えると、疑問点が浮上してくる。


「なぜ記憶を消した者は?」


 エドワードの記憶があれば簡単に補完できる程度の記憶の消失。これに何の意味があるのか。しかも消えた記憶ももう一度調査すればその日のうちに取り戻せる程度の情報だ。


「となると消さなかったんじゃなくて消せなかったんじゃないか?」

「まあそれが妥当だろうな」


 この件に関して調査している彼らに敵意があることは分かった。この問題が早急に解決しなければいけないものになったという風になっただけだ。


「ただ敵の能力が不明だな。それに未だにバーモルの魔力質がバラまかれている理由も分からないしな」

「そうだな、俺も皆目見当もつかない。いや、、、待てよ。どこかで聞いたことがあるぞ」

「ほう。お前が私より魔法に詳しいとはな。珍しい」

「でも、思い出せない。何だったっけ」


 もしかして俺も何かを忘れているのか、そう疑問を持つエドワード。だとすれば一体何を忘れているのか、そう考え始めたときにシャーロットがしゃべりだした。


「もし私の記憶を消してお前の記憶を消せなかったのならば、犯人は少なくともギルドの入り口からバーモルたちが座っていたテーブルの間にいたことになる」

「、、、ンなこと言われてもなぁ。全員覚えてねえよ」

「だが少なくとも容疑者はいるだろ」

「まあそうだな」


 容疑者はバーモルを含む六人の少女とそして一人の男、グリージィ。この七人は明確な容疑者だろう。


「女たちの能力はギルドに確認すればいいとして、問題はグリージィか」

「でもバーモルたちと一緒に依頼をこなしたみたいなことを言っていた気がするぞ」

「なら誰かしら知っていそうだな」


 一先ずの目標がまた定まった。


「ほら行くぞ。シャーロット」


 そう言ってエドワードはシャーロットに手を伸ばした。

 その行動が普段の自分に対する態度に一致せず首を傾げた彼女は、彼の手を無視してエドワードを追い越して先に向かった。

 一方でエドワードは手を差し出した形で固まっていた。

 それは決してシャーロットに無視されたのがショックで固まっていた訳ではない。

 シャーロットに対して手を指し伸ばした時に彼は感じたのだ。

 思い出せないことがあるというレベルではない。

 



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救世の英雄と最果ての再会 十六夜 @kappaa

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