エピローグ
「悪かったって!物騒なそれしまってくれよ!しょうがねぇな特別に話してやるよ。あれはな移植っていうんだよ。わかるか?」
「……他人の体の一部を自らに移すことだろ」
「ざっくりだがそういうことだ。そんでお前は外の世界に出る為に移植手術を望んでる。間違いないな?」
「ああ。それがクロ一族の悲願だからな」
「クロ一族といや叙情詩になってるくらい有名じゃねぇか。まさかお前さんがねぇ。俺なら手術は可能だし実績もある。ただブツがあればの話しだ」
「これは使えるか?」
俺は背に背負っていた荷物を下ろす。
経年劣化を防ぐため、徹底的に湿度管理をなされたケース。収納されていたのは、クロ一族の悲願。代々子孫へと受け継がれてきた『願い』
始祖クロの想い人、シエルの羽を丁寧に取り出す。
「……うむ。羽自体は相当古いが、状態は良さそうだな。これなら手術にも耐えうるし、空も飛べるようになるだろう。だが……本来あんたは空を飛ぶ生き物じゃあない。飛べたとしても、壁の向こうに辿り着く可能性は一割にも満たない。それでもいいのか?」
そんなこと、考えるまでもない。
始祖クロが聞いたのは、外界にわたる方法『移植』と『羽の管理方法』だった。
シエルの亡き後、自らは病に伏せ、己の死期を悟ったクロは自らの子供に託したのだ。
いつか外の世界へ旅立ってくれと――
そしてとうとうその悲願が叶う時が来た。
(シエルとクロが旅立っていた楽園に、俺も向かいます)
まるで、昔からその背にあったかのような安心感に包まれ、自らの体の一部となった羽を懸命に羽ばたかせると、雲一つ無い青空に向い、小さな命が飛翔していった。
灰色の国 きょんきょん @kyosuke11920212
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