妖精の父とその娘

西の果てのぺろ。

妖精の父とその娘

 ─妖精、それは善良な人にしか見えないと言われる存在。

 いたずら好きで、人の物を隠したり、ちょっかいを出す事もある。

 現代ではおとぎ話で度々登場する架空の存在。─



 その日の夜は暴風雨で、大気を切り裂く音が不気味に鳴り響き、雨が屋根を叩き、子供でなくても、とても不安な夜を過ごした。


 翌日。


 とある閑静な住宅街、比較的裕福な親子が住む一軒家。

 その家の4歳の一人娘が、朝から慣れない料理に奮闘する、父親の服の裾の端を掴んできた。


「どうした沙羅?」


 卵焼きを焦がし慌てていた父親が娘に気づいた。


「ねぇねぇ、パパは妖精さんなの?」


「うん?ちょっと後でいいかな?今、ご飯を作ってるから。」


「うん、わかった!」


 そのかわいくてわがままを言わない聞き分けの良さに、父親はほっこりしながら新たな卵焼きに挑戦した。




「ごめんな沙羅。パパが料理ヘタで…。」


 申し訳なさそうにする父親。

 食卓に並んだ料理は茶色か黒という色合いだった。


「ううん。大丈夫だよ、おいしいよ。」


 愛娘の優しさに、朝から癒される父親だった。

 その沙羅は、椅子の上で足をプラプラしながら食べる姿が愛らしい。


「それで沙羅。さっきの話は何だったのかな?」


「?」


 小首をかしげる沙羅。

 さっきした質問を忘れたらしい。


「ほら、パパが妖精とかなんとか。」


「あ、そうなの。パパって妖精さんなの?」


「え?違うよ?パパは妖精さんじゃないよ。」


 娘の可愛さに頬が緩みながら答えた。


「違うの?でも、妖精さんはいたずら好きなんでしょ?」


 父親はそれを聞いて、「以前読み聞かせたおとぎ話の事かな?」と思い、


「妖精さんはいたずら好きだけどパパは、沙羅にいたずらしないだろ?」


 笑顔で答えた。


 娘は少し、考え込む素振りをみせて


「うん、パパは沙羅にいたずらしないね。」


「そうだろ。」


「でも、パパは妖精だと思うの。」


 珍しく沙羅が食い下がる。


「どうして、そう思うんだい?」


 娘の新たな一面、ムキになる姿を見て父親は嬉しくなった。

「ここは何を言われても俺が折れて、妖精になって上げるか。」と内心思いながら聞き返した。


「だって、パパ。昨日の夜、お庭にママを埋めて隠していたもの。」




 暴風雨明けの晴れた朝、閑静な住宅街にサイレンの音が鳴り響く、何かあった様だ。

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妖精の父とその娘 西の果てのぺろ。 @nisinohatenopero

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