指環、カプチーノ、横断歩道

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「おっ」

「あっ」

「仕事中？」

「まあ、そんな感じ。そっちは、もう外出てもいいんだ？」

「うん。安定期に入った」

「死人の子供か」

「早く生き返ってね。お腹の子供も待ってるよ」

「戸籍とか、諸々の手続きが面倒なんだ。死人が生き返るのも一苦労だよ」

「いまは？」

「信号待ちで雑談してるだけを装ってくれると助かる。1分半だけの会話だな」

「そっか」

「子供が産まれる前には、落ち着くと思う」

「ひとりでも、育てるから」

「おい」

「嘘よ。ちゃんと認知してね」

「わかってる。有給も取るよ」

「取れるの？」

「取れるさ。脅すネタならたくさんある」

「うわあ」

「指環」

「うん。着けてない。サイズ変わっちゃったから」

「また、買いに行こうか」

「今度は、あなたのぶんも買わなきゃだね」

信号。赤から青へ、切り替わる予感。

「よし。仕事こなすか」

「死んじゃだめだよ」

「一回死んだやつはもう死なねえんだよ」

　青信号。

　まるで、他人のように。

　離れていく。

　心は繋がったまま。