第7話 ENDmarker 3.

 自分は、死んだ。


 ニュースにならないと思ったけど。官邸が世論を動かすための切り札に使ったらしい。自分の死は、大々的に報道された。名前は伏せられたが顔が思いっきり雑誌にリークされ、多くの企業を敵対的買収から守った現代の英雄とまつり上げられていた。


 いい気なものだと思う。人の死さえ、駆け引きの道具。孤独な自分には、おあつらえむきの死にかたなのかもしれない。

 誰にも知られず。誰にも理解されず。ただ、その死の事実だけが、ひとり歩きして勝手に広まっていく。


 そんなものだった。自分の人生なんて。たいした価値はない。普通の人の普通を守るためなら。命は惜しくない。


 街を歩く。

 死人が大手を振って歩いても、誰も気付くことはなかった。英雄と言われ囃し立てられても、結局は死人。目の前にいる人間のことなど、気にかけていないのだろうか。


 死は偽装され。

 今日も、街に融け込む。


 見知らぬ誰かの、普通を守るために。


 電光掲示板下の、横断歩道。信号が赤に変わる。


 カプチーノが飲みたい。

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