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彼と選んで、一緒に買った指環。
もう、机の上にはない。箱ごと捨てた。
「今から行きます」
彼。警察から、正式に死亡通知が来た。あれだけ梨のつぶてだった連絡も、死亡通知だけは、早かった。
「
「先輩」
先輩と後輩と合流して、仕事に向かう。
「素ちゃん」
「大丈夫です。わたし。大丈夫」
「休んだほうが」
家にいるのは退屈だった。さびしくなってしまうから。
「おねがいします。仕事、させてください」
「でも」
「いえ。大丈夫です」
あらかたの外回りを終えて、仕事場に戻る。いつもより仕事がはかどった。外貨投資会社が立件されたからだろうか。
「すいません、お手洗いに」
化粧を直しに行く。
多少、吐き気があった。
「おええ」
普通に吐いた。
鏡に映る、自分の顔。目の下。大きな、くま。
彼に、親族はいない。わたしがはじめての彼の家族になるんだと、意気込んでいた。彼は、警察関連の仕事をしていると言っていたから、深くは聞かなかった。
あのとき。もっと聞くべきだった。一緒にいてあげるべきだった。
「よし」
吐くだけ吐いたら、元気になった。
元気でいなきゃ。
彼のぶんまで。ちゃんと生きなきゃ。
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