06 ENDmarker 2.

 彼と選んで、一緒に買った指環。


 もう、机の上にはない。箱ごと捨てた。


「今から行きます」


 彼。警察から、正式に死亡通知が来た。あれだけ梨のつぶてだった連絡も、死亡通知だけは、早かった。


もとちゃん。こっちこっち」


「先輩」


 先輩と後輩と合流して、仕事に向かう。


「素ちゃん」


「大丈夫です。わたし。大丈夫」


「休んだほうが」


 家にいるのは退屈だった。さびしくなってしまうから。


「おねがいします。仕事、させてください」


「でも」


「いえ。大丈夫です」


 あらかたの外回りを終えて、仕事場に戻る。いつもより仕事がはかどった。外貨投資会社が立件されたからだろうか。


「すいません、お手洗いに」


 化粧を直しに行く。

 多少、吐き気があった。

 

「おええ」


 普通に吐いた。


 鏡に映る、自分の顔。目の下。大きな、くま。


 彼に、親族はいない。わたしがはじめての彼の家族になるんだと、意気込んでいた。彼は、警察関連の仕事をしていると言っていたから、深くは聞かなかった。

 あのとき。もっと聞くべきだった。一緒にいてあげるべきだった。


「よし」


 吐くだけ吐いたら、元気になった。


 元気でいなきゃ。


 彼のぶんまで。ちゃんと生きなきゃ。

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