第5話「ここが前世でプレイしたゲームの世界だって説明したかな?」
ここは前世でプレイしたゲームの世界。
「銀の
アルーシャはベルンシュタイン公爵家の跡取りとして生を受けた。だがアルーシャは母親の不貞の結果生まれた子で、ベルンシュタイン公爵家の血を引いていなかった。
エドワードはルビーン伯爵と後妻との間に三男として生まれた。
だがルビーン伯爵の血の繋がりはなく、ベルンシュタイン公爵との不倫の末に生まれた子だ。
俺とエドワードの年は同じ、どちらも同じ時期に伴侶以外と性行為をして子供まで作ってるダメな人たちだ。
ベルンシュタイン公爵がエドワードを屋敷に連れてきたのは、アルーシャが七歳のとき。
今まで公爵家の跡取りとして何不自由なく暮らしていたのに、突然父親がよそで作った子を連れてきて養子にすれば誰だって驚く。
しかも自分は母親とどこかの貴族が不倫した結果生まれた子だと聞かされ「お前には公爵家を継ぐ資格はない!」と父親に言われたら、なおさら。
ゲームのアルーシャと母親は、エドワードにベルンシュタイン公爵の血を引く後継者であることを告げず、エドワードをいじめ殺そうとする。
ベルンシュタイン公爵は仕事が忙しく、領地に帰ることがなく、エドワードがいじめられていることに気づかない。
エドワードの母親は身分が高い貴族ではなかった。ベルンシュタイン公爵はエドワードが死んだらまた、別の女と子供を作ればいいと考えていた。
エドワードをベルンシュタイン公爵家の養子にしたのは、浮気をした妻と浮気の結果生まれたアルーシャへの当てつけだ。
アルーシャの母親は最初は躍起になってエドワードをいじめていたが、一年後新しい愛人を見つけ、そちらに関心が向いてしまう。
不倫相手に甘い言葉を囁かれ、ベルンシュタイン公爵家のことも、息子のこともどうでもよくなり、浮気相手のいる王都へ行ってしまう。
父親にも母親にも捨てられたアルーシャ。
アルーシャはちょっとわがままなところはあるが最初は普通の子供だった。エドワードが家に来たことで、自分の出自を知り悪役令息へと覚醒していく。考えてみれば父親と母親の不倫騒動に巻き込まれた可哀想な子だ。
エドワードの熱烈なファンから言わせると、「家庭の事情なんて関係ない! エドワードをいじめる奴は許さない! アルーシャには悪役令息の素質があった! エドワードがいなくても同じ運命を辿った! 一ミリも同情出来ない!」とのこと。
アルーシャはエドワードファンからゴミのように嫌われている。
俺が前世の記憶を取り戻したのは七歳の誕生日、ベルンシュタイン公爵家にエドワードが連れて来られたとき。
エドワードはゲームの推しキャラだったので、母親の暴力からエドワードを守り、母親が外に愛人を作り家を出ていってからは、仲良く同じ家庭教師のもとで学んだ。
ゲームでは、アルーシャの家庭教師が公爵家で虐待されていたエドワードを気の毒に思い、勉学を教える。そしてエドワードの類まれな才能に気づく。
エドワードと一緒に勉強していて、ゲームのアルーシャがやさぐれた気持ちが分かった。
アルーシャは決して愚鈍ではない。一を聞いて十を知るぐらいの頭をもっている。
だがエドワードは一を聞いて百、いや千を知る天才なのだ。
両親に放置されるわ、父親と血が繋がってないわ、親父が外で作った子は連れて来られその子に公爵家を継がせると言われるわ、母親は新しい愛人を作って家を出て行くわ、親父の実子のエドワードは自分の百倍優秀だわ……前世知識がなかったら、確実にグレてる。普通の精神ではやってられない。
エドワードが優秀なのは、母親の伯爵婦人が勇者の末裔だからだ。伯爵家の長男と次男は伯爵と前妻の子だから、エドワードと血は繋がっていない。
このゲームはエドワードが様々な試練を乗り越え、勇者として旅立つまでの物語。王立学園での恋愛がメインに描かれている。
公爵家でアルーシャに奴隷のような扱いを受けて育ったエドワード、父である公爵の推薦で王立学園に入り、そこで良き教師や友人に出会い才能を開花させていく。
そして七色の花こと、個性豊かなヒロイン(男)たちと恋をする。
アルーシャは学園に入学後もエドワードに意地悪する悪役令息のままだ。エドワードに嫉妬し、ヒロインとの仲を引裂こうとして返り討ちにあう。
昨日俺に絡んできたイーゴン・ヤーデもヒロインの一人。
俺はゲームのアルーシャのようにエドワードをいじめたりせず、むしろ過保護なぐらい甘やかして可愛がり親友になった。
十二歳のときにエドワードに告白されて(というより押し倒されて)、恋人になった。
エドワードとは、学園でも家でもイチャイチャラブラブしている。
そのことがヒロインの目には異様に映るのだろう。
ゲームの通りならエドワードにちやほやされ、エドワードとイチャイチャしているのはヒロインたちだ。
エドワードはヒロインたちを完全に無視し、悪役令息である俺とイチャイチャしている。ゲームの流れを知らなくても、なんとなく歪な感じがするのだろう。それがヒロインたちの中に、嫉妬や恨み憎しみといった負の感情となり溜まっていく。
そうして彼らはエドワードが俺と一緒にいるのは、俺がエドワードの弱みを握り奴隷のように扱っているからだと決めつけ、言いがかりをつけにくる。
エドワードが無意識に「恋の奴隷」と言っているのも、ゲームのなんらかの強制力が働いているからかもしれない。
ゲームのアルーシャは悪事の限りをつくし、卒業パーティーでエドワードとヒロインに断罪され、平民に落とされ娼館に売られる。
当然、俺はゲーム通りに生きる気はない。断罪されるのも、娼館に行くのもゴメンだ! そして何よりエドワードの隣に俺以外の誰かが立って笑っているのが嫌だ!! 耐えられない!
ゲームのヒロインにも、ゲームに出てこないモブにもエドワードは渡さないっ!!
「アルーシャ・ベルンシュタイン様ですね! あなたはエドワード様の隣に立つにはふさわしくありません! エドワード様を解放してください!!」
今日もゲームヒロインが可愛い顔を怒りで歪ませ、俺に難癖をつけに来た。
俺はヒロインを見据え口角を上げる。
さぁて、今度はどんないたずら(仕返し)をしようかな?
ーー終わりーー
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