ザ・バンドマン

丸 子

全1話

ぼくの大好きなおじいちゃん。


若い頃からバンドに入っていてサックスを吹いている。

でも少しずつ忘れることが多くなってきて、得意なサックスを吹くことも忘れてしまうことがある。


おじいちゃんのバンド仲間もみんなおじいちゃん。

ぼくのおじいちゃんを温かく見守ってくれている。

時々おじいちゃんが自分のパートを忘れて座っていても他のメンバーがカバーしてくれるんだ。


でも、ついに1ステージ終わるまでおじいちゃんは座ったままだった。

一度もサックスに触らなかった。

メンバーのおじいちゃん達が寂しそうに笑い合う。

それが合図だった。

おじいちゃんに手を挙げて一人ずつステージから去っていく。

ステージに残されたおじいちゃんはいつまでもいつまでも座ったままだった。

おじいちゃんにあてられたスポットライトが消えた。


おじいちゃんの最後のステージ。

バンドにとっても最後のステージ。


ぼくのおじいちゃん。

最後のステージもかっこよかったよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ザ・バンドマン 丸 子 @mal-co

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る