第6話
鼻歌まじりにシャワーを浴びるるーちぇ、さっきの星で新しく購入した石鹸を泡立て、優しい香りに胸を躍らせ体に泡を滑り込ませる。
そこへ突然soundonlyと書かれた文字だけのモニターが浮かび上がる
「るーちぇ、ちょっとええか?」
げるまんの声だ。
「どうしたの?何かあった?」
るーちぇは流していたシャワーを止め声がよく聞こえるようにしつつ体を洗う
「さっきから小さい船が1隻着いてきてるんや、全く同じ速度でや」
リミナルドライブで超長距離を移動する為の速度とはいえこちらの船は燃料の節約も兼ねてよくある船の高速航行速度より遅めに飛んでいる。
同じ方向なら追い抜けば良いのを今回は何故かその1隻の船がまるでこちらに合わせるように着いてきている。
「へんなの、とりあえず分かったすぐ向かう」
通信を切るとるーちぇはシャワーを出し体を洗い流す
綺麗になったのを確認しある程度水滴を飛ばしてから脱衣室へ戻りタオルで水気をしっかり拭き取る。
そしていつもの宇宙服を身に纏い操作室へ向かった。
「状況は?」
操作室へ着くとげるまんが既に背面を船と繋げレーダーを展開していた
「相変わらず着いてくる、高速航行やからモニター出されへんのがアレやけど、攻撃とかはしてこーへんみたいや」
「んー…ロックオンされてないなら高速航行解除して様子見てみよっか」
「はいな」
座席に座りるーちぇが操縦桿を握る、空いてる片手でパネルを触り高速航行の解除を指示する
船が一瞬ぐんと前のめりに引っ張られる感覚になり高速航行の空間から離脱する。
ドンと圧が掛かり船が通常航行に移行した
「何だったんだろう」
「船の外観に異常あったとか?チェック入れとくか?」
「うん、お願い」
ゆっくりと重力に任せて前進したままげるまんが船の外装をチェックする
信号伝達により船の各部位を細かく動かし異常を調べる
「ちょっとまった、近くにポータル開くで…さっきの船か?」
異常は無さそうだとチェックを終えようとした時、レーダーに反応があるのをげるまんが気づく。
操作室前面の窓の向こう、目の前で空間がぐにゃと歪み出しやがて船がパッと現れる、小型船だ。
「…ん?あの船…」
「さっきの船やでるーちぇ、あれが追いかけてきてたんや」
どこかで見たような気がするとるーちぇは飛んできた船を凝視する、
げるまんはそんなことは思わず何者だとじっと見つめている。
そうしていると向こうの船から連結信号が発信され、るーちぇ達の船の真横にやや強引に張り付いた
「るーちぇ、どないする?」
「…モニター繋がるかな?」
連結受理をする前にるーちぇが相手の船にコンタクトを取ろうと試みる。
げるまんは言われた通りに相手の船の人物へ通信を開始する
少しの時間を置いて、向こうとのコンタクトに成功したようで目の前にモニターが表示された
「よ!るーちぇちゃん」
画面の向こうでひとりの少女が立っている
獣人にしては小柄なネコ族のようで体毛が涼しげな水色をしている尻尾がまるで海獣の尾のようになっておりクネクネと動いてる
目はパッチリと開きオッドアイ。
可愛らしいアホ毛がぴょこんと跳ねており
髪飾りに❽と書かれた球のようなヘアピンをしている
「やっぱり、久しぶりアクアリス!」
「えへへ」
モニターを見たるーちぇがはぁと呆れたようなため息を付き微笑む
アクアリスと呼ばれたネコ族の少女もつられてニッと画面の向こうで笑った
「げるまん、連結信号を受理して。知り合いだよ」
「なんや知り合いか、ええで繋げるわ」
「よろしくたのむよー」
真横に着いた向こうの船から連絡通路が伸びる、それを入口に繋ぎロックする
その通路を伝いアクアリスがこちらの船へやってきた
るーちぇたちは客室へと招き入れ水を差し出す
「久しぶりだねるーちぇちゃん!相変わらず美味しそうな見た目してるねぇ!」
「もう、食べたそうにしないで。そういうアクアリスこそ元気そうでなによりだよ」
アクアリスは差し出された水を一気に飲み干しおかわりを要求する
るーちぇは言われるがままにコップを預かり水を注ぎ再び手渡した
「たまたま座標打ち込んでたらるーちぇちゃんの船が見えてね、一緒に並走しちゃったよ」
「そうだったんだ。これからどこへ?」
「明日あるルナボールの大会!それが終わったらちょっと観光してから母星のサニサへ帰ろうかなーって思ってたところ」
アクアリスが背中に背負っていた長い筒をポンポンと叩く
ルナボールとは地球で言うところのビリヤードのような物で、アクアリスは銀河大会の選手の1人である。
アクアリスはふふんと鼻を鳴らして水を飲んだ
「そっちはどうなの?これからどこ行くつもりだったの?」
「え、あー…こっちはただの気まぐれな旅だよ。目的もなく行きたいところに行くだけ」
アクアリスの問いかけに咄嗟に嘘をついて誤魔化するーちぇ、げるまんも隣でうんうんと何度も頷く
「気まぐれの旅?なーんか怪しい…」
しかしアクアリスが何かを感じ取ったようでジト目で2人を見つめる
「あ、怪しくないってばー」
「んーー…」
2人の頬に汗が伝う、焦りと緊張に包まれながらあははと苦笑いをするしかなく
「分かった!分かっちゃった!」
突然アクアリスが大きな声を出す、るーちぇはびくっと反応し、より冷や汗が頬を伝う
「さてはワタシの大好きなマタタビ酒とネコ缶がたくさんある星へ観光でしょ!」
いーなー!いーなー!とひとりで勝手にはしゃぐアクアリス
「ば、バレちゃったかぁーあはは」
そんな様子にホッと胸をなでおろしながらるーちぇはノリに合わせる
「大会が無かったら一緒に行きたかったなぁ、お土産お願いしてもいい?!」
「残念だったね、お土産…ていうか、こんど一緒に行こっか?」
「いぎゅ〜!」
羨ましそうにしながらるーちぇに抱きつくアクアリス
るーちぇはそのまま身を任せ抱きしめられ、頭を撫でながら改めてよかったと安心する
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「そうだ、アクアリス見て欲しい物があるんだけど」
「なに?どうしたの?」
のんびりとした空間、戸棚から持ってきたクッキーを頬張りながら突然るーちぇが自分のポッケを漁り出す
「えーとね…あった。」
コレといいアクアリスに見せたのは先の惑星でニーナから受け取った優待チケットだった。
「これ、船のパーツショップの優待チケットなんだけど、こういうのってどこで使えるか知ってる?」
「知ってるもなにも…それ、どこのステーションにもあるショップで使えるよ」
「あれ、そうなの?」
アクアリスがクッキーを手に取りながらチケットを見つめる
「ていうかこんなすごいモノどうやって手に入れたの…これ一つでどんなパーツも無料で付けれるんだよコレ…」
サクと音を立てながらクッキーを食べ、うわ言のようにすごいなぁっと何度も言うアクアリス
「ええ?!いやぁ、いろいろとね…」
改めてすごいものだったことに自身でもびっくりしながら一緒にチケットを見つめるるーちぇ
「なぁ、それってもしかしてなんやけど。こういうモンもタダで着くんか?」
そこへげるまんが割り込むようにいつかにるーちぇに見せた電磁波装置をアクアリスに見せた
「多分つくとおもうよ」
「ええ、すご!」
(続きます)
リミナルトリップ(仮) @cogenaya3
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