遊び場用

四季巡

悲しみのバレンタイン

 バレンタインはあまり好きでない。

 というか。バレンタインが苦い日だから嫌いだ。

 そんなことを思いつつも私はお菓子を作っている。

 なんでだろう·····。勝手に手が動く。そのケーキは前の彼氏が大好きなモンブラン。

 甘い物が大好きな彼には、いつもケーキを差し入れしていた。そうバレンタインまでは·····。

 そのモンブランは口に届くことなく、いなくなってしまった·····。

 なんでだろう。作っているだけでも不思議だ·····。

 白あん、チョコレート、タルトの土台、そしてダマンド。彼の好きなモンブランを口に出来なかったのに、なぜ作っているのだろうか·····。

 懺悔なのか·····。贖罪なのか·····。

 あの喧嘩が無ければ、死ぬことはなかったかもしれない。

 でもなんで作ってるか分からない。

 ただ分かることある。

 それは彼が好きだったから。

 どうしても。忘れることができない。このモンブランを作らないと気が済まない。

 それほど私は後悔をしている。本当は彼に届けたかったバレンタイン。

 でもそれが出来ないから、もどかしい。

 そしてタルトの土台に栗、生クリーム、ショコラの餡、ココアパウダーに粉砂糖をかけて完成。

 このモンブランは本当は彼に食べさせたかった。誰に食べさせるべきか·····。

 私は悩む。悩み続ける·····。

 そしてある事を思い出す·····。

「バレンタインは大切な人に送る、お礼の日なんだよ」

 その言葉を思い出し、私はお店に同じモンブランを出した。

 このお店は私と彼が守ったお店に。彼の父と母が経営したお店を守りたい。

 その感謝の言葉はお客さんに送りたい。

 彼を無くしたバレンタインデーの時。お客様がいつも私を慰めてくれた。

 もし誰も救いの手がなかったら、落ち込み続けていたかもしれない。

 だから私は感謝をしたい。私に大切にしてくれたお客様。彼のお店を愛したお客様。これは恋バレンタインデーとしてでなく、感謝を送るバレンタインデーとして·····

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

遊び場用 四季巡 @shikisyuichi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る