第六十八章 古寺の墓
第六十八章 古寺の墓
燃え盛る廊下で逃げ惑う
「
私が声をかけると、
「
「すぐに行く。」
「
「我々は
急いで
「最後に君に会ったのはこの
「お前が私に
「そう。人間だった君を鬼の首に変えた。辛かっただろう。体を取り戻すまで不自由で。だが取り戻したところで、鬼の体だ。人間ではない。」
「君とは仲良くしたい。だから君にこの人間の体をあげよう。若くて健康な体だ。体を入れ替えた後も殺しはしないから人間としてもう一度人生をやり直すといい。そうしたかったのだろう?」
「その代わりと言っては何だが、その
「私に追われるのが怖いのか?」
「怖いよ。君は本当の神様だ。私を殺す者がこの世にいるとしたら君しかいない。」
「だけど君と私は利害が一致しているはずだ。本当のところ君は人間として生きたい。そして私は神になりたい。入れ分かれば共に願いが叶う。」
「お前は神になって何がしたい?」
「それを聞いて何になる?」
「興味があるだけだ。
「ただ草木を
「それは生まれ変わってもできる。お前は人間だ。再びこの世を見られる。」
「分かっていない。私が見たいんだ。生まれ変わってすべてを忘れた私では意味がない。どうやら君とは根本的な考え方が違う。折り合いがつきそうにもないな。」
今、行かなくては。
「母さん!」
「
「
「
私は言った。
「そうかもしれない。だが私は生きたいんだ。邪魔をしないでくれ。」
「さすがは
「わらわは
「止まれ、
「・・・
「その術を使えるのは人間のみ。もはや人間ではない君には使えない。だから母君に
「そんな真似はさせない。」
その溢れ出る力を目の当たりにして
「ところで、君たちは知っているのかい?私の名を。」
「その様子から察するに知らないようだ。」
「
「やめろ!母さんに手を出すな!」
『
私が思い当たる名は一つ。
「止まれ!
私がそう叫ぶと、
時を同じくして
「神の怒りを知れ!」
戦いは終わった。
半年後、木々は色づき紅葉の季節となった。私たちは
「本当にこんなところに置いておくのか?」
もう一つの
「ここに置いて。」
穴を掘り終えた
丁寧に土を
「ようやく、
石を積みながら
「私は死なない。生まれ変わりもしない。一つの命を永遠に生きていく。
「私には
石に浮かび上がった
「母さんはこれからどうするの?」
「
私が
「
「弟か妹か分からないけど、元気に生まれて来てね。」
「お前こそ、これからどうするんだ?」
「鬼の里に戻る。鬼神としての役目を果たせるように修行する。」
「
「鬼の里へは一人で帰れるの?」
「うん。もう
「シスルナ、出て来い。いるんだろう?」
「父さんを助けてくれてありがとう。」
「
「一緒に鬼の里へ帰ろう。」
「ですか・・・私は・・・」
「
「・・・では喜んでお供いたします。」
シスルナは許されたことを知って静かに涙を流した。
「じゃあ、お別れだね。」
「
私は今生で二度と会えないと分かっていた。
「母さんもね。父さんと末永くお幸せに。」
阿修羅の墓 相模 兎吟 @sagami_togin
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