第9話
次の日、クレアとティアが王国軍を出迎えると言う話だったので、俺も同行させてもらった。
砦の入り口に立っていると遠方から沢山の馬に乗った兵士達がこちらに向かってきた。先頭にいる二人の男女が昨日クレアが言っていたラムダとカトレアだろうか?
やがて目の前に整列すると馬から降りて全員が片膝をついて頭を下げた。
「王国軍軍師ラムダ、ただいま到着致しました!此度の帝国の奇襲に間に合わず誠に申し訳ありませんでした」
「王国騎士団長カトレア、ただいま到着致しました!クレスティアル様とアスティアリカ様が無事であった事誠に嬉しく思っております」
やはりこの二人がラムダとカトレアのようだ。するとクレアがいつもとは違う、迫力のある言葉で話し始めた。
「ラムダ、カトレア、皆の者顔を上げなさい!私達は隣にいる召喚者アマネの力により、帝国軍ベルトールを撤退させることに成功しました!私達はまだ負けてはいません。遅れたことを謝るくらいならば、次に行うデルドア奪還作戦に全力を尽くしなさい!」
俺と話す時と違って凛々しいな。こちらがいつもの王女としてのクレアなのだろう。そしてクレアの言葉を聞いて俺の方にも注目が集まる。
「まずは、兵士達は移動して疲労した体を休めなさい。そしてラムダとカトレアは馬を置いて執務室に来なさい。これからの話をしましょう」
そう言って、俺たちも執務室に戻った。
執務室で三人で待っていると、しばらくしてラムダとカトレアがやってきた。
二人は俺を見つけると深々と頭を下げて言った。
「アマネさん、王女殿下の命をお救い頂きありがとうございました。今後は微力ながら我等も協力致します」
俺はその言葉に頷く。
「俺は当たり前のことをしただけだよ」
ラムダのあとにカトレアも声をかけてくれた。
「アマネ殿は控えめな人だな。あのベルトールに匹敵する存在が味方にいるなんて、王国にとってこれほど心強いことはないのだがな」
その後クレアが二人にアルディアの砦で起こった出来事を説明し、俺との訓練の話も取り付けてくれた。
二人も召喚者とガーディアの力を知りたいと言ったので、すぐに砦の訓練場に向かうことになった。
「まずはアマネさんがガーディアの装備した状態の強さを知りたいので、私達二人と同時に手合わせ頂いてもよろしいですか?ベルトールを撃退出来るほどの強さをもつ貴方に私達一人ずつでは訓練にすらならないでしょうから」
そうラムダが提案してきたので俺は了承した。
「分かった。まずはそれでよろしく頼むよ」
騎士のカトレアが前衛で魔術師のラムダが後衛の陣形で戦うようだ。まずは俺もガーディアを装備しよう。ガーディアに呼びかけると瞬時に鎧状態に変わった。
「準備も出来たようなので、始めさせてもらう。ラムダ殿、援護は頼んだぞ!」
そう言って、カトレアが剣を構え俺に向かってくる。その後ろからラムダが氷柱の魔術を俺の周りに展開してきた。
ガーディアを装備していると、周りへの認識力は格段に上がるので、全ての氷柱の位置どりとカトレアの剣筋もはっきりと見える。
まずはカトレアを剣ごと黒剣の側面で弾き飛ばし、襲いかかる氷柱をもう一振りで全て切り落とした。
あまりのスピードに呆然としているラムダの背後を取り、黒剣を触れさせる。
「これで俺の勝ちで良いか?ラムダ」
やはりガーディアの力は強大だ。王国の中でも強者の二人を全く寄せ付けなかったな。
「アマネさんとガーディアの力がこれほどとは思いませんでしたよ。完敗ですね」
訓練場の壁まで弾き飛ばされたカトレアも俺たちの方に戻ってくる。加減をしたから大きな怪我にはなっていないようだ。
「参ったよアマネ殿。私こそ稽古をつけてもらいたいくらいだ」
『いや、私を装備した状態ならこうなって当然だが、黒剣のみでの戦いならアマネが負けるだろう。調子に乗らずに訓練に励むと良い』
「今ガーディアに言われたけど、ガーディアの力だから調子に乗るなってさ、鎧無しでは二人に勝てないだろうとも言われたから、訓練をお願いするのはむしろこっちの方だよ」
なにやら思案していたラムダが興奮気味に話し始めた。
「今の状態でこれほどの力を持つアマネさんが味方になったなんて、私にとっては最大の喜びですよ!これで散々やられてきた帝国に反撃ができますからね!」
「いや、ベルトールには追加スキルを使ってなんとか追い返したくらいだったから、油断はできないよ。ただ、みんなに協力してもらってもっと強くなるよ!」
ベルトールは本当に強かった。次の作戦でも当然戦うことになるだろう。
そのとき訓練場で一緒に見ていたクレアがこちらに言った。
「アマネの強さは再確認出来たわ、明日以降は訓練とデルドア奪還作戦の立案と並行させるわ!作戦の方はラムダに頼ることになるわ。そして、カトレアには今日来た兵士の中から強い者を十人ほど選んで訓練に参加させて頂戴。それでどちらにとっても有意義な訓練になると思うわ。最後にティアには訓練で負傷した者の回復を任せるわ。明日以降はその布陣でよろしく頼むわ。そしてアルディアの守りを固めると共に、デルドアを奪還するための準備をするわ!」
ラムダとカトレアは膝をつき頭を下げる。
俺にも異論は無い。
一つずつできることをやっていこう。
クレアの話の後に、今度は黒剣のみの装備でラムダとカトレアと一対一で模擬戦をしたが、ガーディアの言う通り黒剣のみでは勝てず、慢心することなく明日からの訓練に臨めそうだ。
その男記憶を燃やして デュナミス @yuki1130
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。その男記憶を燃やしての最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます