第8話
砦の執務室をノックすると返事が「あったので部屋に入るとクレアとティアがいた。
二人はすぐに俺に気づいたようだ。
「あらアマネ。どうかしたのかしら?」
クレアの横でティアも小さく会釈をする。
「いや、二人に聞きたいこととお願いしたいことがあってな。今聞いても大丈夫かな?」
「もちろん良いわよ。今日やらなきゃいけないことは大体終わったし」
ふとティアの方を見ると、目を逸らされてしまった。何か悪いことでもしたかな?
「それなら良かった。あとちょっと気になったんだけどティアはあまり俺としゃべってくれないけど、俺って怖がられてる?」
俺がそう言うとクレアは大声で笑った。
「まぁティアは私みたいなおてんばと違ってシャイだけど、今無口になってるのはアマネが格好良いから緊張してるのよ」
姉にそんなことを言われたティアは顔を真っ赤にしてうつむいた。
「ハハ、嘘でも嬉しいよ。俺は元の世界でそんなこと言われたことはなかったからね」
「あら、そちらの世界の女性は見る目がないのかしら?私もアマネはとても恰好良いと思うわよ。それに私達二人のヒーローなのだし」
クレアはそう言って無邪気に笑う。慣れない会話になってしまい戸惑うが話を戻そう。
「その言葉はありがたく受け取っておくよ。話をそらして悪かったけど、本題に戻らせてもらうよ。まずは俺が元の世界に帰る方法があるのはガーディアに聞いたんだけど、説明は二人にしてもらえって言われたんだけど教えてもらえるかな?」
クレアはその言葉に大きく頷く。
「うん、召喚者が元の世界に帰る方法は二つあるわ。召喚術士が送還するか、術士が死ぬかのどちらかよ。ただ、召喚の術式によって召喚者が自分を召喚した術士を殺すことは不可能になっているわ」
「ふむ、なら例えば二人が帰ってもよいよって言えば帰ることが出来るんだな」
「それはそうなのだけれど、今の王国が劣勢の状況であなたを送還したりするのは自殺に等しいから出来ないんだけどね。申し訳ないけれども」
クレアはそう言って申し訳なさそうに目を伏せる。
むしろ勘違いさせてこっちの方が悪かったな。
「ああ、ごめんクレア。言い方が悪かったね。俺もこちらでやることをすべて終えてからじゃないと戻る気はないから安心してほしい。ただ、思ったよりも条件緩かったから驚いたんだよ」
俺の言葉を聞いて二人は安堵の表情を浮かべる。
「それなら良かったわ。あのベルトールを徹底させた英雄をすぐに返したりはしないわよ」
「それともう一つのお願いなんだけど、俺はベルトールや他の敵に勝つために訓練をしたいんだが、そのための場所や訓練相手を用意してもらえないかな?王国にも強い人はいるだろうし」
するとクレアは何か名案を思い付いたような顔でとんでもない提案をしてきた。
「ふふ、そのお願いを聞くには条件があるわ!私とデートして!」
あまりに予想外の条件に拍子抜けしてしまう。
「戦争中なのにのんきなものだな」
俺がそう言うとクレアはむすっとして頬を膨らました。
「良いじゃない。生きるか死ぬかもわからない状況なんだし、次の作戦まで時間もあるし思い出作りに協力してくれたって……」
そこまで言われたら無碍にはできないじゃないか。
たしかに出会った瞬間から死ぬ寸前だったし、それくらい付き合ったって良いのかもしれない。
それにクレアみたいな美人とデートする機会なんて俺にはないだろうしなぁ。
「ああ、分かったよ。俺なんかで良ければエスコートさせてもらうよ」
それを聞くとクレアは嬉しそうに笑った。その横でティアがむすっとした顔で呟いた。
「姉さまずるいです。私もアマネ様とデートしたいです」
「ならティアともデートするってことにしましょ」
クレアが俺の返事を待たずに答えると何故かティアも満足そうだ。
「じゃあ条件成立ね!アマネの訓練の件はちょうどよかったわ。王国軍の軍師ラムダと女性騎士団長カトレア、王国内でもトップ戦力である二人が元々アルディアの救援のために兵を率いてこちらに向かっている最中だから、その二人に訓練相手は頼んでみるわ」
「ありがとうクレア、よろしく頼むよ」
次の作戦までに鍛えられるだけ鍛えないとな。
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