二人の夜遊[The Missing People]

週寂

短編その6

「ちょっとお伺いしますが、クイーンズ・ウェスト・ロードはどこですか」と見知らぬリュックサックの娘が尋ねた。

「分かりませんね。すみません。遠いですか」

「私もよく分かりません。では、どこに行けばいいか知っていますか」

「何?」

「実は、どこへ行っても構いません、私」

 そうすると、ここにとどまってもいいじゃないか、と私は思った。

「とどまることができません」

「ああ、それなら助ける方法がないです」

「しばらく一緒に行かせていただけますか。あなたが到着したら別れます。いかがでしょうか」と彼女は言った。

 私は悪いとは言えない。それは私にとってノーと言う必要がないものだ——もちろん、彼女はきれいだからだ——歩きながら何か話し合えるかもしれない。


 それで私たちは街を歩いていた。これは私にとってなじみのない街だと言うのを忘れてしまった。

 超高層市政党委員会と市政府ビル、超高層刑務所ビル、超高層監査局、超高層治安局、超高層裁判所、超高層民事局、超高層財務局、超高層公安局及び若干の支局、超高層検察庁、超高層警察署、超高層交通警察部隊、超高層都市建設局、超高層都市管理所、超高層人事局、超高層土地局、超高層労働組合、超高層税関ビル、及び未知の問題を抱える工事中の人権局を私たちが通過した。これらは都市面積の大部分を占領している。

 歩ければ歩くほどステップはますます重くなっていた。私はこの都市の権力崇拝に窒息しそうになった。

 私たちは人のいない広場を通り過ぎ、たくさんの車の大通りに立ち止まり、頭上の狭い空に戸惑った。


 1時間近く歩いていたようだ。

「しばらく休みませんか」

「いや、とにかく休む場所はありません」と彼女は言った。

 また、隅の物乞い、道路にいる狂人、暗闇の中の泥棒や詐欺師、バスの運転手、拾屋、パニック障害者、出版社の編集者、愚か者、俳優、無駄で無感覚な労働者、セールスマン、御先真っ暗な者、怠け者、下品な者、老人と子供、美人、肥満者、落ち着きのない者、傲慢者、麻薬中毒者、貪欲で利己者、馬鹿な人、加害者、偽造者、傍観者、主婦、喜怒哀楽のアナーキスト、自営業者と役人、ボスと夜警、不動産営業マン、投機家、売春婦、セキュリティー、警察、無頼漢、スパイ、酔った人々、仕事を休んだ人々、女性交通警察、法律にうとい人、大学教授、皮肉屋、指導教員、中学校教師、小学校教師、幼稚園教師、ピアノ·ダンス教師、パートタイム英語、日本語、ロシア語、ポルトガル語、韓国語、モンゴル語、アラビア語、インドネシア語、ヘブライ語、フィンランド語、フランス語、ルーマニア語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語教師、道徳的堕落者、テロリストと夢想家、指名手配被疑者とホステス、作家、農民と批評家、監督、掃除人、自殺未遂者、臆病者、不可知論者、モデル、個人主義者、共産主義青年団員、外国人、マネージャー、近目の者、公務員……などの人々は混ざり合っているように見え、その中には複数の身分の者もあれば、この都市で生まれて決して将来離れたくない、ここに対して懐かしさと誇りに満ちている人々もいた。


 空は暗くなり、お腹が空いた。そして交通は流れ続けた。私たちはある幹線道路の末を歩いていた。

 トイレに行きたいが、一時的に我慢しなければならないと悟った。

 そこで彼女は突然言ったが、

「毎日多くの人が都市で行方不明者になり、二度と見つからないって言われています」

 私は立ち止まり、彼女を見て、自分の目で彼女に意思を尋ねた。その答えは「止まるまい」だ。

「どこに行き着いたのかわかりません。超神秘、知りたい」

「どこで聞いたの?」

「えっ?」

「噂の出所」

 彼女は少しためらった。「新聞だと思いますね。それはポイントじゃないです」

「しかし、なぜ新聞はそれを報じたのですか……」

「ねえー!」彼女は怒って私の話を遮った。「でも、もし彼らが一緒にいっそう優れている、誰も知らない、理解できない到達不可能な余所に行ったらどうでしょう、と私は時々そう考えます」

「 『到達不可能』って?」

「ほんの一例です」

 私が返答に窮した。


 再びさっきの無人の広場にきたが、今回は満腹の方で賑わった。男性と女性、老いと若き、運動する人と座る人、観望する人と散歩する人、遊ぶ人とおもちゃの売り手……

 私たちはまだ開始していない(またはすでに噴水は終わったか)噴水の前に着いた。

 道に迷うのを恐れないかと私は尋ねた。

「一人でいるなら、恐れる可能性はあるが、今は怖くない」

「なぜ?」

「今は2人です。 二人は道に迷うわけはありません」

 なるほど、これは彼女の理論だ。

「続けていこうか」と彼女は言った。

 私は異議ない。


 私たちは、一度停止すると地表が崩れるかのように、話を停止し、歩き続ける——それともは我々はすぐに石像になるか? 石像になるなんかは無理なので、地表が崩れるはずだ。私たちは歩いて、他には何もなく、動物も鬼も獣もない。半時間も経って車さえ通り過ぎなかった。

 真夜中の街は廃虚のように見える。この秘密は私たちだけが知っている。


 私たちは、夜明けに別々に行くと約束した。

 ——でも、私は本来どこに行くつもりだったのか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

二人の夜遊[The Missing People] 週寂 @Zhouji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ