【短編】シニガタリ

夜葉@佳作受賞

シニガタリ

 ――1――



 僕の通う高校で、連続した飛び降り自殺が起きていた。


 一人、また一人と、封鎖されているはずの屋上の扉を開け消えていった。


 集団心理でも働いているのだろう。そう僕は思った。


 なぜなら。



 ――――僕も死にたいと思ったから。




 ――2――


 先日、僕の彼女だったなぎさあかりが亡くなった。


 同じく、飛び降り自殺だった。


 なぜ死んだんだろう。どうして相談してくれなかったんだろう。


 何にも出来なかった事に、ただただ絶望した。


 そんな自分が嫌で、嫌で……。


「……? 開いてる……?」


 屋上の古びた取っ手を握ると、鍵がかかっていなかった。


 こんな事件が続いて、鍵どころか立ち入りすら難しいというのに、既にもう先客がいるようだ。


 もう死んだのかな。それともこれからなのかな。


 死体を見ながら飛び降りるのは嫌だなぁ……。もしこれからだったら、一緒に死のうと誘ってみようか。


 一人じゃないならお互い少しは気が楽だろう。


 そんな事を考えながら、恐る恐る扉を開けてみた。


「冬月……さん?」


「綾瀬、くん……?」


 そこには、僕のよく知っている顔があった。


 冬月紡ふゆつきつむぐ。あかりの一番の親友だった女の子。


 どうして彼女がここに居るのか。そんな事は考えなくとも分かっていた。


「冬月さんも……?」


「……うん。私もあの子の……あかりの力になってあげられなかったから」


 彼女もまた、あかりの死を受け入れられない一人だった。


 僕達はあかりを中心によく喋ったり遊んだりしていた。


 最初は友達の友達程度の関係だったが、あかりのおかげで仲良くなれた。そんな気がしていた。


 でも、こうして二人、あかりのいない場で出会うと、妙な居心地の悪さを覚えてしまった。


「でも、これで安心だね。あなたも居てくれればあかりも寂しくないよ」


「……うん」


 これから死のうというのに、彼女は相変わらずあかりの心配をしていた。


 だから、今の彼女は魂が抜けたように別人に見えた。


 共通の友人のための自殺だというのに、僕も冬月さんも何も話さず、淡々と死ぬための準備を進める。


 落下防止のために設置された屋上の柵を無理やり乗り越え、何もない空中に背を向け、靴を揃える。


 これでもう、後は飛び降りるだけだ。


「あかりも喜んでくれる……よね」


「そう……だね」


 あかりのために死ぬ。そう思うと、最後の踏ん切りがつく。


 お互いの顔を見合わせ、腕を掴み合うように段取りを進める。


「3、2、1で行こっか」


「分かった」


 何もない屋上を見つめながら、二人は最後の言葉を交わす。


「じゃあ」


「うん」



「3」




「2」




「1」




 ――――ゼロ。




 気持ちの悪い浮遊感が、僕の身体を包み込んだ。


 ――3――

 …………。



 ……。



「ここは……」


 飛び降りたはずの屋上から、景色ががらりと変わっていた。


 そうか、これが死ぬ前に見るっていう走馬灯か。


 見上げた空は、どこか懐かしい青空だった。


 今よりも少し前の、あの日の空と一緒だ。



「ダメえええええーーーーー!!」



 大きな声が聞こえて、思わず振り向く。



「早まらないで!!」



「ぐへっ!」



 誰かに背を引っ張られ、僕は固い地面へ頭を打ち付けた。



「死んじゃダメだよ!! 生きていればきっと、きっといい事あるから!!」



 何を言っているんだ、この子は。


 顔を固いコンクリートで擦られながら、目の前の今にも泣きだしそうな女の子へ返事をした。


「……空見上げてただけなんだけど」


「へっ?」


 そうだ、僕は人の少ない橋の上で、ただ空を見上げてただけだったんだ。


 それなのに、いきなり訳の分からない子に引っ張られ、僕は頭を痛めていた。


「しっ、失礼しましたーーーーー!!」


 短距離なら賞でも取れそうな勢いで、女の子は景色へと紛れていった。


「…………」


 犬にでも噛まれた。そう思ってその日の事は忘れるようにした。


 そうしたかったのに……。


「あーーーーー!!」


 次の日の学校での出来事だった。


 聞き覚えのあるうるさい声が耳に入る。


「君ってこの前の……! 同じ学校だったんだー!! じゃなくって、この前は本当にごめん!!」


「いや……大丈夫だけど……」


 彼女との出会いは特殊だった。


「あかりどうしたの? ……その人、知り合い?」


 彼女の友人と思われる少女が会話に割って入った。


 二人の親し気な様子が、少し鬱陶しく感じた。


「いやぁ……昨日、ね。今にも橋から飛び降りそうだったから止めに入ったんだけどさ……」


「だから、空を見てただけだって」


「まーたあかりは首突っ込んだの? 変な人もいるんだから、正義感の早とちりは辞めなさいって何度も言っているのに」


「……変な人で悪かったよ」


「別に……そういう意味で言ったんんじゃ……」


「はいはいそこまでーっ! 私は渚あかりで、こっちの可愛い子は冬月紡ちゃんっていうの。君は?」


「綾瀬……透……って、もういいよね。授業始まるし僕は行くから」


「まぁまぁだったら始まるまでお話しようよ透っち!」


「とっ、透っち……!?」


 再び出会ったその日から、あかりに巻き込まれる形で僕達はよく話すようになった。


 孤独が好きだった僕は、彼女を通して冬月さんや他の同級生と交流を深めていった。


 彼女と触れ合ううちに、いつしか僕の考えは変わっていた。


 明るくて、ポジティブで、みんなを引っ張るような存在。


 そんな彼女の言動に、いつしか僕は惹かれていった……。


 今でもよく彼女の口癖を思い出す。


「生きていればきっと、良い事あるよっ」


 希望に満ち溢れた、彼女を象徴する言葉だった。



 …………。



 ……。



「はっ!」



 ガキンッッッ!!



 寸前のところで、僕の手は柵に届いた。



「綾瀬くん!!」



 額から汗が流れ落ちる。汗は、遠い遠い地面へと消え去っていった。



「違う……こんなの間違っている……」



 遠い記憶の彼女に、その身を引っ張られてしまった。


 二人の自殺は、失敗に終わった。


 ――4――


 顔を自分の腕に埋めながら、僕は呟く。


「……ごめん、怖気づいた」


 遠い空を見上げながら、冬月さんも言葉を返した。


「いや……私も動けなかったから……」


 彼女も飛び出す事が出来ず、屋上の隅で立ち止まっていた。


 放課後の夕焼けが寂しそうな二人へと落ちる。


 あかりを、彼女の事を思っての行動だったのに、そのはずだったのに、足が踏みとどまってしまった。


 ふと飛び降りた直後の事を思い出す。あの時見た走馬灯の事を。


 そこでの彼女言葉が、どうしても引っかかっていたのだ。


「…………思ったんだけど、さ。何であかりは飛び降りたのかなって」


 ぐるぐると残り続ける感情を、水が零れるように口に出す。


「考えて、考えて、考えて……。それでも分からなかった」


 あかりが死んだ時の事を思い出して、後悔の念に押しつぶされそうになる。


「分からなくって……辛くて……悔しかった」


 それでも、この違和感が気持ち悪かった。何でそんな事考えてしまうんだろうって思ったけど、それでも違和感を拭い去る事は出来なかった。


「悔しかった……けど」


 僕は立ち上がった。冬月さんにもこの違和感を伝えないといけない。そう思ったから。


「今考えると、思うんだよ」


 あかりの事を考えて覚えた違和感は、間違っていないと信じて。


「やっぱりあかりは、自ら死を選ぶような人じゃないって」


 彼女の口癖が、胸を熱くする。


「悩んでも辛くても……それでもあかりは!!」


「黙って」


 凍てつくような冷たい声で、冬月さんは僕の言葉を止めた。


「なんで。ねぇなんでなの?」


 おぞましくも感じるような、怒っているのに冷静だと錯覚するような、とても冷たい声で。


「なんであの子の事、分かってあげようとしないの!?」


 冬月さんは声を荒げる。僕とは対照的に、彼女の死を受け入れようとして。


「死ぬぐらい悩んでいたかもしれない。辛かったかもしれない。それでも私やあなたに言えなかった」


 僕も冬月さんもあかりの事を思っているのに、そのはずなのに。


「彼女に限ってそんな事はない、そんなイメージを押しつけていたから、あかりは言えなかったんじゃないの!?」


 冬月さんは酷く、怒っていた。


「…………もういいわ」


 突き放すような声で呟く。


「やっぱり私、一人で行くから」



 彼女は死に、憑かれていた。



「まっ、待ってよ!」


 思わず止めに入る。


「こんなの間違ってる! 冬月さんが死ぬ意味なんて何にもないよ!!」


 あかりを信じていたから、違うあかりを信じる冬月さんが許せなかった。


「あかりだって、こんな事望んでいないはずだ!!」


 あかりとの付き合いは冬月さんの方が断然長い。だけど、あかりはそんな事を望むのだろうか。冬月さんの見ているあかりの姿が、僕には微塵も見えなかった。


「だったら」


 凍てついた言葉を吐きながら、冬月さんが近づいて来る。


 履き直した靴が、屋上の地面を擦って気味の悪い音を響かせていた。


 目前で彼女は止まると、おもむろに襟首を掴まれ引っ張られた。



「あなたがあかりのために、死んでよ」



 その言葉と同時に、僕の視界は遠い遠い建物の外へ移っていた。


 無理やり、柵の外まで身体を引っ張られたのだ。


「どう……して……」


 柵に身体を押し付けられ、息が苦しい。


「お願い……彼女のもとへ行ってあげて」


 冬月さんはそそのかすように、そっと耳元で呟く。


「あの子のために……死んでよ」


「はっ、離せ!!」


 無理やり腕を振り払い、冬月さんから離れる。


「……なんでなの?」


 脅すように、見下すように、冬月さんは言葉を漏らす。僕の事が気に入らないというのが見て取れた。


「あかりのために死にに来たのに、どうして生きようとするの……?」


 呼吸の乱れる僕の顔を見ながら、彼女は言葉を浴びせ続ける。


 あかりのために死ぬ。それが彼女のためになると信じて。


 だから僕は、あかりのためと言って死のうとする冬月さんが、許せなかった。


「……あかりは言ったんだよ。生きていればきっといい事あるって」


 彼女の口癖を思い出す。僕を救い続けた、彼女の言葉を。


「あの時僕は、空を見ていただけなんて言ったけど、本当に死のうとしていた。あの言葉のおかげで、思いとどまれた。だから僕は今まで生きて来れた。でもあかりが死んで、後悔と絶望で、何も見えなくなっていた」


 そうだ。今の僕達を見たら、彼女は絶対に怒るに違いない。彼女の言葉は、生きる意味を与えてくれていたのだから。


「……けど、あの口癖を思い出して、それではっきり分かったんだよ」


 これは、彼女の選択じゃない。だから。



「あかりは自殺なんかするわけない」



 これが、違和感の答えだ。あかりを思うなら、こんな選択を僕達がしてはいけないんだ。


「冬月さんも、あかりの親友なら分かるはずだよ。だから、僕達が死ぬ意味なんてないんだよ」


 だから、違和感があった。冬月さんの言動に。どうしてそこまで死にたがるのか。


「なんで冬月さんは、そこまで死ぬ事にこだわるの?」


「…………」


「僕達が取る選択は、こんな事じゃないはずだよ!!」


「…………ねぇ綾瀬くん」


 僕の言葉を聞いた冬月さんの様子が、変わった。


「最初に自殺した相原さんってさ」


 冬月さんの目が、変わった。



「なんで死んだのか、知ってる?」



「相原……さん……?」


「そう、あの相原さん」


 どうしてここで最初の自殺者の話をする? 冬月さんは何を考えているんだ?


「私ね、小学生の時あの子にいじめられていたの。それを助けてくれたのが、あかりだったんだよ」


 どこか虚ろな目で、冬月さんとあかりの出会いを語りだす。


「そうしたらその子、どうしたと思う?」


 寂しそうに。


「私からあかりにいじめの対象を移したのよ」


 嬉しそうに。


「でもその後いつの間にかいじめは無くなってて、今では普通に話す仲になってた」


 最初の自殺者を思いながら。


「自分のやった事なんて忘れて、憎くてたまらなかったわ」


 自分の感情を添えて。


「次に自殺した森君はね、昔あかりにしつこく言い寄って来てたの。彼が傷つかないよう遠回しに断ってたのに、何度も何度も……」


 死んでいった人の事を思いながら。


「次の加藤君とその次の藤井君は、ふざけてあかりにぶつかったのに謝りもしなかった」


 死んでいった人の行為を思い出しながら。


「次もその次もみんなそうだわ」


 彼らの罪を唱えながら。


「あの子に酷い事をして、本当に許せない……」


「何を……言って……」


「だからね、私」


 ただ一人、あかりの事を思いながら。




「みーーーーーんな、殺しちゃった」




 冬月さんは、笑っていた。


 ――5――



 あまりの異常さに、言葉を失ってしまう。


「何を驚いているの? あなただってそうよ」


 冬月さんは笑いながら、目の奥を真っ黒にして話しかける。


「あかりに助けられたとか知らないけど、ずっとあの子の優しさに甘えて困らせて……」


 どこまでも冷酷な感情を、冬月さんはぶつけてきた。


「だから決めたの。あなたも殺すって」


「なっ……!?」


「でも、そんな事したらあの子が悲しむわ。あの子優しいから、ずっとあなたの事を引きずって生きてしまう……」


 どこまでも狂っているのに、冬月さんは眉をひそめ、困った様子で話を続ける。


「そんなのは嫌、あの子の悲しむ姿なんて見たくない。でも、あなたには消えて欲しかった」


 今日の服は何を着ようとか、お昼のデザートはどっちがいいかとか、その程度だと言いたげに彼女は人の命を扱う。


「それで、考えてみたの。考えて考えて、やっと見つけたの。あの子の悲しむ顔を見ずに、あなたを消す方法をね」


 もう、やめてくれ。


 僕はもうそれ以上聞きたくない。


 次に出てくる言葉が、分かってしまった事が本当に嫌だった。


 だが冬月さんはそんな事を気にしてくれない。


 とびっきりの笑顔で、素敵な事を思いついたと言わんばかりに、次の一言を告げた。




「簡単な事だった。あかりが先に死ねば良かったんだ」




 冬月さんの言う、両方を叶える方法。それは地獄よりも醜いものだった。



「そうすれば、あかりは悲しまずあなたも消せる。あの子の悲しむ顔を見なくていいって……!」



「本気で……言っているのか……?」



 我慢の限界だ。これ以上、もう何も耐えられない。



「そんな事のために、あかりを殺したのかッッッ!!」



 彼女に掴みかかる。距離感も力加減も分からないままに、冬月さんの襟元を掴み上げる。


「そんな事……? そんな事なわけないでしょう!?」


 乱暴に腕を振り回され、掴んでいた襟元から手が離れた。


 意見が合わないなんて話では済まない、冬月さんの言うあかりがどうしても僕には理解出来なかった。


「みんなひどい事をしたのにその事を忘れて平気な顔をして。あの子が優しいからみんな甘えて、みんな許されてるって勝手に勘違いして……、何も知らないで……」


 冬月さんから力が抜けたのが見て取れた。怒りよりも悲しみが増したような、そんな切なげな顔で、彼女はあかりの事を思い続けていた。


「あの子は……あかりは私の代わりにいじめられて、泣いてたの。その顔を見た時、辛くて、怖くて、見てられなかった」


 それは冬月さんとあかりの話。僕が知るよりずっと前の、二人の出会いの話。


「次の日、何事も無かったかのように笑顔で登校して来て。いつものように声をかけられた時、自分がとても嫌になった」


 彼女があかりを思い続ける、きっかけとなった話だった。


「だから決めたの。あの子を悲しませないようにするって」


 それが冬月さんの生きる理由だった。それだけが、彼女を突き動かしていた。


「だから私はあの子を殺したの。あの子に、あかりに幸せになってもらいたかったから……」


 冬月さんは言葉を詰まらせた。それと同時に、溢れるように涙を流し始めた。彼女は気づいてしまったのだ。自分の歪な思いに。




「……あれ、おかしいな。私あかりを殺しちゃってる」




 とても強くて強靭で、ひたすらに思い続けたその感情は、いつの間にか歪んでいた。悲しませたくないと、幸せにしたいと願い続けたばかりに、彼女は取り返しのつかない事をしでかしていた。


「あかりを幸せにするためにあかりを殺したの。でもそれじゃあ、あかりは幸せにならない? あれ、アレ、おかしいな……」


 どう考えたって、幸せにならない。悲しみを奪うと同時に、彼女は幸せになる権利まで奪ってしまった。


「あかりが幸せになってない、あかりが幸せになれない。どうしたらいいのかなあかり……ねぇ、あかり」


「お、おい!!」


 彼女はおもむろに歩き出した。その先は、あかりの消えた場所。何もない、柵の向こう側へ。



「助けて、あかり…っ!!」



 柵を乗り越えようとした、そんな彼女を、僕は考える間もなく止めていた。


「……離してよ。私はあかりのもとへ行きたいの」


「……このまま行かせてたまるか」


「ねぇ、離してよ。離して、離して、離して、離して、離せええええええッッッ!!」


 何も分からず彼女は声を荒げた。ガサガサとしたノイズのような声で、必死に助けを求めて。


「私は、あの子のもとに行って謝りたいだけなの……だから!!」


「このまま、なんの償いもしないまま彼女のもとへなんか行かせない。絶対に、あかりには会わせない」


「……どうしてこんな私を止めるの。私はあかりを殺したのよ。殺したいほど憎いはずでしょう……?」


「憎いよ。ああ、憎いさ。憎くて憎くてたまらない。けど、それじゃあダメなんだよ」


 死は救済でも、贖罪でもない。


「君はこのまま生きて、生きて生き続けるんだ」


 生きるという呪縛。殺したという十字架。


「死なずに生き続ける。それが、あかりに対して、……いや。みんなに対しての償いだ」


 とある高校で起きた連続飛び降り事件。それは、ある少女の思いが起こした惨劇だった。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 事件から数週間が過ぎた。


 一連の事件はニュースなどで大きく取り上げられ、しばらくの間世の中を騒がせた。


 冬月さんはあの後、共に付き添って警察署へ自首をしに行った。全ての出来事を、彼女は受け入れたのだ。


「やっぱりここの鍵、壊れているんじゃないか……?」


 僕はというと、またあの屋上に立ち入っていた。


 柵にもたれかかり、携帯に映った3人の写真をしばらく眺める。


 僕を救ってくれた彼女も、彼女を共に慕っていた友人も、もういない。


「生きていれば、きっといい事がある……か」


 そう呟くと、携帯から3人の映った写真を削除した。


 生きていれば、きっといい事がある。


 彼女の言葉を、信じて――――。

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