第139話:吉と出るか凶と出るか・クラリス視点
「分かりました、アレックスの考えはよく分かりました。
でもアレックスが直接行く事は反対です。
ここはサクラの分身に任せてください」
私は必死で反対しました。
アレックスがサクラの分身と共に魔境の奥深くに行く事を考えている。
そうサクラが教えてくれたのです。
そんな危険な事は絶対にさせられません。
サクラが私に教えてくれたのは、サクラも反対だからなのでしょう。
「私も反対です、アレックス国王陛下。
そのような危険を冒さなくても、陛下と分身の絆は十分です。
離れていても接しているのと同じ早さで反応できます。
ですからどうかここに残ってください」
サクラが私の反対意見を支持するように反対意見を口にしてくれます。
「ごめん、ごめん、どうやら悩みがサクラに伝わってしまったようだね。
確かに少しは魔境の奥に行くか行かないか迷っていたよ。
いや、今もほんの少しだけ迷っているかもしれない。
サクラの分身にだけ危険を冒させるのが卑怯な気がしてしまったからね。
でもその為にクラリス達を残して死んでしまう危険は冒さないよ。
大丈夫、サクラの分身に任せるから」
よかった、本当によかった。
リークン王国もスーニー王国もアレックスを失う事はできません。
アレックスがサクラを従えて国土を改良してくれたからこそ、両国の民はとても豊かになることができたのです。
多くの貧民を受け入れたにもかかわらず、豊かな国でいられるのです。
そう考えれば、大陸もアレックスを失えないのです。
いえ、大陸がどうとか国がどうとかではありません。
私がアレックスを失いたくないのです。
もしアレックスが死んでしまったら、私は絶望してしまう事でしょう。
後を追って死にたくなる事でしょう。
ですが今の私はアレックスを追って死ぬ事もできません。
ブロアーとミネルバ、そしてお腹の中にいる3人目の子供。
この子達を無事に育てるまでは、アレックスを後を追う事もできないのです。
だから絶対にアレックスに危険な真似はさせられません。
ここははっきりと伝えておいた方がいいですね。
「アレックス、私のお腹には3人目の子供がいます。
ブロアーとミネルバはもちろん、この子が一人前になるまでは死なせませんよ。
少しでも危険だと思ったら、サクラを合体させて進化させてください。
次の進化がエンペラー級なのかカイザー級なのかは分かりませんが、進化すれば純血種竜であろうと古竜であろうと勝てるのではありませんか」
「分かった、大丈夫、分かったからそんなに興奮しないでくれ。
お腹の子供に悪い影響があったら困るから。
あああああ、止めるから、魔境の奥を探索するのは止めるから。
サクラの分身を増やすだけにしておくから。
こちらから刺激しないようにするから。
だからクラリスは興奮しないで、無事に子供を産むことだけを考えてくれ」
アレックスが考え直してくれたようですね。
これで安心して暮らす事ができます。
アレックスが寿命を迎える頃の事はその時に考えればいい事です。
それはまだまだ数十年も先の事です。
今は家族仲良く平穏無事に暮らす事だけ考えてくれればいいのです。
その為ならアレックスを尻に敷いて恐妻と呼ばれる事も厭いません。
公爵の長男に転生したけど、職業スキルがスライム従魔師だったので、王太女との婚約を破棄され追放されてしまった。 克全 @dokatu
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