ある魔女の場合
江戸端 禧丞
大公爵夫妻の場合
女性の甲高い悲鳴が、屋敷中に響き渡る。
「ああああああああぁぁぁっ!───お待ちください!お待ちくださいっ、それだけはあぁぁっ!!旦那様あああああぁぁぁっ!!!」
長い廊下で、男性の足に
ただ、結婚して間もなく夜中に薄らと血の匂いが鼻を
こうしてダンティオはやっと妻の真実の姿を知ったのだが、これが問題にならない訳がない。割合そそっかしい彼女のことだ、きっとアタリをつけて屋敷中をくまなく探せば、デッドスペースの裏側だとか、屋根裏だとかに血痕付きの何かが残されているに違いない。さて、これが昨夜のことだというのが、この屋敷に住まう者たち全員にとっての問題だった。
祝福のパーティーが催される寸前の発見になってしまったが、全員で〝痕跡〟を消しに掛かれば何とか間に合うだろう。今ダンティオが欲しかったのは、結婚から一年打ち明けてもらえなかったのは
「……なぜ黙っていた…」
「……旦那様は、ただでさえ魔女である
涙を流しながら告白をする妻を見て…確かにそうだ、と、
「…首狩りをやめることは出来ないのか?」
この一言に、カラナティクが─バッ─と勢いよく顔を上げた。そして頭をブンブンと激しく横に振り、狂気じみた言葉を発する。
「旦那様っ!!!何をおっしゃいますか!?皆や旦那様が首の美しさを御存知ないのは仕方がありません!!しかしっ!
初めて見る余りに必死な様子の妻に、ダンティオは思わず鍵をカラナティクに差し出してしまった。それを瞬時に受け取った彼女は、ジッと夫の言葉を待っていた。彼は夫として、何より領主としてどう判断すれば負の要素が減るかを考えた。愛する妻の願いは叶えたい、だが、この場合それをしてしまうとどういう末路を辿るかは目に見えている。そうして思考すること数十分、ダンティオは一つの答えを導き出して口を開いた。
「──カラナティク、そなたをこの領地の死刑執行人とする。刑は断首のみ、遺体の始末も職務の内とする……私が
彼は大公爵として、カルナティクの夫として、限界ギリギリの決断をした。この領地には、広いがゆえに様々な刑罰がある。一番重い罪に科されると、領地お抱えの
「それ以上の望みなど、あろう筈も御座いませんっ!人間の目も
夫婦揃って不老不死なのだが、まぁそんなにも感動したのだろうとダンティオは受け取った。こうして、より仲睦まじくなった大公爵夫妻の
まだ先のことだが、
ある魔女の場合 江戸端 禧丞 @lojiurabbit
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