第2話 真白

真白ましろ……真白ましろ……』



 ……!凛太郎様のお声が……!凛太郎様のお声が確かに聞こえました。気力を振り絞り、わたくしは瞼を開けます。 目の前には泣きそうなお顔の凛太郎様が立っておられます!



「……ワンワン!」

 ……凛太郎様!



「……クゥーン……」

 ……お会いしとうございました……



真白ましろ……僕の言い付けを守っていたんだね?だけどそんなになるまで待たなくて良かったのに……辛かっただろう……?』



「……クゥーン……」

 ……身体よりも凛太郎様にお会い出来ない心がつろうございました……。ですが一目お会いすることが出来て、わたくしは幸せでございます……。間もなく、わたくしの命は尽きようとしております……。



真白ましろ……迎えに来たんだよ……これからは待たなくて大丈夫だ……ずっと一緒に居られるよ』



「……ワン!」

 ……あぁ……こんなに幸せな事など、誰が想像できたでしょう……。捨てられていたわたくしを拾ってくださり、雪のように白いと褒めてくださったこの毛皮に因んで「真白ましろ」と名付けてくださいましたね。



『おいで、真白ましろ



 あぁ、ようやく、ようやく抱きしめられ、凛太郎様の温もりを感じる事が出来ました。もう、お待ちする事はございませんからね。これからはずっとずっと凛太郎様のお傍におります。



 では凛太郎様、わたくしたちの新たな旅に参りましょうか。地平線の彼方まで咲き乱れるたくさんの花で足元が見えませんので、どうぞお気を付けてくださいね。

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拝啓、凛太郎様 Levi @_Levi_

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