拝啓、凛太郎様
Levi
第1話 拝啓 凛太郎様
凛太郎様、凛太郎様、
────
あの日、あなた様は
『真白、僕は仕事に行ってくるからね。今日も僕の帰りを楽しみに待っているんだよ』
と。
それは毎朝のご出勤時の挨拶のようなもので、
あの日はいつものご帰宅の時間をやや過ぎておりまして、
その時、リン、と家の電話が鳴ったのでございます。
ふと、嫌な予感が頭を過ぎったのを覚えております。
電話に出られた凛太郎様のお母様は一言二言言葉を発すると、途端に電話口で泣き叫び半狂乱となっておられました。
そのお姿を拝見し、
正直な所、この辺りの記憶はあまりございません。
その日なのか、はたまた明くる日なのかは記憶が定かではありませんが、気が付くと目の前に凛太郎様が眠っておられました。
あぁ、
近付く程にほのかに香る愛しい凛太郎様の匂い。そしてそれを上回る病院特有の匂い。
凛太郎様……?……凛太郎様…………?
『真白、僕は世界中で真白のことが一番大好きだ』
そう仰り
……何よりも、凛太郎様のお身体からは一切のぬくもりを感じる事が出来ませんでした。
あぁ、この方は
「
凛太郎様のお姉様が
「
お母様は、凛太郎様は事故で頭を強く打ち帰らぬ人になったと仰っておりました。
そんな訳はございません。
「
背筋を伸ばし玄関に座り込む
────
数日後、凛太郎様の御家族に骨を見せられました。それを凛太郎様だと仰るのでございます。何を可笑しな事を……凛太郎様は骨ではございません。そんな冗談など聞きたくありません。
凛太郎様にお会いしたい……いつお戻りになるのでしょう……?
毎日そんな事ばかりを考えていましたら、食欲も無くなり水すらも飲めなくなってしまいました。
いち早く気付かれた凛太郎様のお姉様に病院へと連れて行かれ、点滴にて栄養を摂る生活へと変わりました。
『病は気から』
そうでございますね……。いつも凛太郎様はそう仰っておいででした。ですが、凛太郎様にお会いする事が出来ない現状に心が病み、身体も弱り果て、
いくら点滴で栄養を摂り入れようとも、口からの栄養摂取には敵いません。そして生きる気力を日に日に無くした今、
凛太郎様の御家族はそんな
願わくば、一目だけでも凛太郎様にお会いしたかった……。少しづつ、少しづつ身体の力が抜け瞼が閉じて行きます……。
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