第5話 やったぜJDと一つ屋根の下!シェアハウス!

 ベネットさんによる探索の結果、罠はなし。少しの打ち合わせの結果、扉をキリオさんと俺で押し開ける事になった。ツートップ体制で、馬鹿が遊撃手、女子三人が遠距離からの援護の構え。さて、鬼がでるか蛇がでるか。

 思ったよりも軽い扉を開くと、そこは体育館ほどはあろうかという半球状の大きな空間になっていた。天井の中心には揺らめく闇の塊としか呼べないものが浮いており、その真下、すなわち部屋の中心には大型のワゴン車ほどの大きさのドラゴンとしか呼べない生き物がいた。

「ほう、大した消耗もせずに我の前に来るとはな……」

「しゃべったあ!?」

 馬鹿野郎が馬鹿野郎らしく素直な反応を返す。

「お前のような珍妙な輩がそれをいうのか?」

 そういや今お前頭が馬だったね。うん、ドラゴンが正しいわ。お前がいうなって感じだ。

「まあよい。汝等がこの卵を出るには、我が頭上にあるポータルに飛び込めばよい」

 ああ、あの闇の塊がポータルってことか。

「へえ、ご親切にどうも」

 ゆっくりと、警戒させない速度で剣を抜きながらキリオさんが答える。この後に続く言葉を予想しているのだろう。そしてそれは当たった。

「だが、汝等が卵を出ることはかなわぬ。ここで我の滋養になるが故に!」

 宣言と同時に口から放たれた炎の息を、男子三人は横っ飛びに避ける。後衛に届く頃にはかなり拡散した炎は、ブラックウッズさんの障壁で防がれたようだ。受け身をとって立ち上がると、たたらを踏んだキリオさんに竜の爪が襲いかかる。それを十字に構えた剣で受けて、大きくのけぞった。逆の爪がとどめを刺そうと振るわれる、その動作の起こりに俺が割り込む。棒を両手と肩で支え、半ば体当たりする形で腕を止める。体格と膂力に明確な差があっても、動き始めの腕一本と速度の乗った体当たりなら互角程度に持ち込める!

 予想外の衝撃に驚いたのかこちらを向いたドラゴンの視界に、よりわからないものが飛び込んだ。

「鹿ジャンプ!!」

 馬鹿が跳ぶ。自分の身長よりも高い跳躍でドラゴンに飛び込む。そして

「ツイン馬パンチ!!」

 両手による同時のパンチ。空手でいう諸手突き。それを馬パンチで行う。鹿ジャンプの勢いを乗せたおそらく馬鹿にできる最大威力の攻撃が、ドラコンの額に突き刺さった。ゴン、と固い地面に重いものがぶつかる音がする。したたかな威力で頭を打たれ

「っ!嘗めるな痴れ者がっ!!」

 しかし、首を振り払って馬鹿を弾き飛ばす。

 効いていないわけではないのだろう。だが致命傷にはほど遠い。やはり、ドラゴンか。

 ドラゴン。ダンジョンと魔物が世界に生じ、その魔物の中に存在した、魔物の王。10階層を超える深部にしか存在しない高位の魔物。ほかの魔物とは一線を隔す強さをもつ破壊の権化。エルダードラゴンともなればその体躯は城にも匹敵し、ふるう力は腕力、魔法ともに自然災害に匹敵する。なおたちの悪いことに人間に匹敵するどころかそれを超える知性をも備えているという。今ここにいるドラゴンはとうていそれに及ばない、言うなればドラゴンの幼子だろう。だが、そうだとしても嘗めてはかかれない。いや、死を覚悟しなければ戦いの場にたつことすら難しい存在だ。

「知れ者だと?とんだ勘違いだな、俺は知らぬ者だ!馬鹿だからな!!」

 そんな存在に、よくそんなこといえるなお前。マジかお前。

「痴れ者とは馬鹿のことだ。死ぬ前に覚えおけ痴れ者よ」

 あんたも律儀だな。

 その言葉を隙と見たかベネットさんの矢とアルナさんの氷の剣がドラゴンに放たれるが、それは翼の一振りで払われる。ベネットさんとアルナさんの攻撃をものともしないか?いや、防いだってことは体に当てれば少しは効くか?

 ドラゴンのヘイトは馬鹿に向いたようで、幾度も噛みつきにかかるがそのたびに跳んで避けられている。横っ飛びして転がってまた横っ飛びでドラゴンを撹乱する。前転受身覚えさせて良かった!もっとも馬鹿も避けるのに精一杯で反撃には移れないようだ。だが、それだけの隙があれば俺が後ろに回り込める。

 俺の武器、すなわち棒というものは、決して弱い武器ではないが肉を打つのには向いていない。早くて堅い鈍器というものは、骨を叩いて砕くか内蔵を押して潰すことで効果的にダメージを与える。皮や肉といった柔軟で強靱な組織には効果が薄い。そしてドラゴンの巨体は鱗をまとった肉の塊だ。

 こういうのに有効なのは馬鹿のやったような体重を乗せた重い攻撃か、もしくは刃で皮膚と肉を切り裂く攻撃。今手にある六尺棒ではどちらも期待できない。思い切り背中や手足に叩きつけたところで意にも介さないだろう。ならばどうするか。

 横薙ぎに振り回される尻尾を棒高跳びの要領で飛び越え、キリオさんと合流する。思った通り、何度か斬りつけて皮膚を傷つけている。だが浅い。動き回る前後脚の爪を警戒し、深く踏み込めないようだ。故に。

「暴れん、なっ!!」

 そこに俺が入る意義がある。脇腹の辺りを払おうとする前脚を、また棒を盾にした体当たりで止める。止めて空いたその隙に。

「ハアッ!!」

「ゴアアアアッ!!」

 キリオさんが呼気とともに踏み込んで剣を突き込む。切り傷に差し込まれた剣が深々と刺さりドラゴンが苦痛に叫ぶ。だが、痛みに身をよじったことで剣が抜けずもぎ取られてしまった。

「しゃらくさいわ餌の分際で!!」

 ドラゴンが体を回転させ周囲全体を尻尾で薙払う。男連中は全員飛び退いて避けたが、距離があいた。いったん仕切り直しか。

「キリオさん、間に合わせですが」

「ありがとう、助かるよ」

 1メートルほどの棒を生成し渡すと、残った方の剣で棒の先を斜めにそぎ落とす。あ、なるほど。ああすれば突き刺すことはできるな。切れなくても叩けりゃないよりいいかなと思って渡したが。

 俺の棒もそうしてもらおうかと思ったが、それより先にドラゴンが動く。

「ロウオオオオォォォォァァァァアアアア!!」

 天井に向けた咆哮とともに、その周辺に数個の魔法陣が出現しトカゲ犬が現れる。ち、数には数か。喧嘩がわかってんな。

「デクノボー君、後衛を!」

「了解!」

 指示に従い入り口に陣取る女性陣の前に走る。案の定そちらを狙っていたトカゲ犬を横から突き倒し、転んだところにベネットさんの矢が刺さる。

「……アルナは前衛の援護を、ベネットはデクノボー君が転ばせたのにとどめを」

 ブラックウッズさんの指示が出た。これでまず後衛は無事。だが、問題は手数の減った前衛が無事かどうか。

 馬鹿は鹿ジャンプで牙を避け続けているが、目に見えて挙動が精彩を欠いている。機動力のないキリオさんはトカゲ犬を優先して処理することにしたらしいが、その分ドラゴンへの攻撃の手が緩む。そして手が緩んだ分ドラゴンの攻撃が激しくなる!

 右の爪、左の爪。二回の攻撃で馬鹿が壁際に追い込まれる。体力が尽きたのか頭も両手足も変身を解き、本来の小柄な体で膝をつく。

 キリオさん。――届かない。

 アルナさん。――氷の剣は翼に阻まれた。

 ベネットさん。――トカゲ犬を射抜いた直後。

 ブラックウッドさん。――障壁の出力では牙は止められない。

 俺。――こっちに来たトカゲ犬の最後の一匹を阻んだところ。

 誰も、止められない!!

 膝をついた馬鹿を喰らわんとドラゴンの顎が大きく開かれ。

「鹿ジャンプ!!」

 その開いた口の中に、馬鹿が自分から突っ込んだ!!

 牙をすり抜け喉の奥に体ごと突っ込む。その光景に、俺は昔親父の友人から聞かされた話を思い出していた。

 曰く、腕を獣に噛まれたら引き抜こうとするのではなく、むしろ突っ込むべきだと。腕を引き抜こうとする力と得物を引き倒そうとする力に噛まれた部位が耐えきれず噛みちぎられる。故に引く力に逆らわず押し込み、相手の顎を上から抑えるか気道を押しつぶして窒息を狙うのだと。

 果たしてあの馬鹿はそれを全身でやった。ドラゴンの喉が人間一人分膨らむ。そしてその膨らみがさらに膨れ上がった!――あの馬鹿やりやがった!喉で完全変身してデカくなりやがった!!

 重さに耐えきれないのかドラゴンの首が床につく。前脚で喉をかきむしるが今更どうにもなるか!

 風を切って飛んだベネットさんの矢が、動けないドラゴンの眼球を射抜く。

 アルナさんの生成した雷の剣が追いかけるように矢に刺さり体内に電流を流し込む。

 キリオさんが一刀流の両手持ちに切り替え、膨らんだ喉を大きく切り裂く!

「~~~~~~~~~~っ!!?」

 気道をふさがれ声にならない断末魔が上がったような気がした。皮で保たれていた喉が内側から張り裂けていく。血とよだれにまみれた馬鹿の姿が割けた喉から転がり出る。無茶した代償か脚が変な方向に曲がっていた、だが、呼吸していた。大きく息を吸い、そして叫んだ。

「死ぬかと思ったああああああっ!!!つうか痛てええええええっ!!」

「……普通死ぬんだよ」


 もはや動かないドラゴン。回復魔法のために駆け寄るブラックウッズさん。そんな光景を眺めながら、俺はそんなことを言うので精いっぱいだった。 ドラゴンがその巨大な骸を横たえ、ブラックウッズさんの回復魔法が馬鹿の折れた足を治す。その間、残りのメンバーは言葉もなくその場に座り込んだ。

 馬鹿野郎のように大怪我したわけではないが、俺もキリオさんも細かい擦り傷や打ち身、関節への負荷などは残っている。緊張による疲労はその場の全員が既に限界を迎えていた。

 何処か弛緩した空気が流れる。そこに、声が響いた。


「呪われよ」


 反射的に跳ね上がり構える。殺意は感じる、だが気配はない。治療中の馬鹿野郎を中心に円陣を組む。

 

「竜を屠る者に、わが子を弑した者に、呪いあれ」


 黒いオーラ。そうとしか呼べないなにかが床から立ち上がり、俺達の体に纏わり付き、染み込んでくる。熱さとも冷たさともつかない苦痛が、全身の皮膚から心臓へと流れ込んでくる!

 自分の悲鳴か誰かの悲鳴かも分からない絶叫を耳にしながら、俺は意識を手放した。


 気を失ったのはほんの少しの間だったのだろう。まだ乾かないドラゴンの血溜まりで目を覚ました。

 頭を振って起き上がると、全員似たような状況らしい。馬鹿は変身が解けたらしく全裸で身を起こそうとしてる。

「馬鹿野郎、ちんこ隠せ」

 他に適当な物がなかったのでつけてたヘルメットを投げ渡す。後で捨てよう。

「お、おお、助かる。女性に俺の馬並みは刺激的すぎるからな」

 文明人として最低限の嗜みを取り戻して身を起こす馬鹿野郎。治療が上手くいったのか、手足は折れてはいないように見えた。手足は。

「お前、その胸の、何だ?」

「へっ?」

 馬鹿の胸、ちょうど心臓の上。そこに、握り拳程の大きさの、琥珀の色をした結晶が埋まっていた。

「え?あ?なんだこれ?」

 ……もしかして。自分の胸元を開いてみてみる。果たして同じモノが埋まっていた。

 キリオさん達も、服の上から触って確かめたようだ。皆、深刻な顔をしている。

 誰も何も言えないままの静寂。それを破ったのはパァンという音だった。キリオさんが、自分の顔を両手で叩いて気合を入れ直した。

「よし!アルナとベネットはドラゴンから素材剥ぎ取り!デクノボー君は棒とロープでポータルまでの足場組んで!馬鹿野郎君はとりあえず着替えて!ブラックウッズはポーションで自己回復!各自、体調不良があるならブラックウッズに申告!呪いに関しては、とりあえず帰って達成報告してから考える!以上!」

「ハ、ハイ!」

 反射的に応えたのは一体誰だったか。ともかくも、限界を迎えていた一行は、帰途に向かいはじめた。


 ボロボロになり帰還した俺達を待っていたのは、強制入院だった。個別に分けられ検査し、尋問じみた問診を受け、病室に軟禁された。どうやらドラゴンの幼体やら人間をおびき寄せる仕掛けやらドラゴンの呪いやらが前例の少ない事態らしく、それに関して根掘り葉掘り聞かれた。

 家族のこと、学校のこと、将来のこと、生活費のこと、冷蔵庫の牛乳の消費期限のこと。色々思い浮かぶ事はあるが、病室のテレビ以外に情報源がない状態じゃ判断しようもない。闇雲に逃げた所で胸の呪いをどうにかする当てもない。

 ないないづくしでどう暇つぶししたものかと思い始めていた入院三日目、俺達は一つの部屋に集められた。

「ああ、君も無事か」

 キリオさんが何処か安心したような声で迎えてくれた。部屋に来たのは俺が最後だったらしく、全員の無事を確認できたからだろう。軽く全員と情報交換すると、皆似たような待遇だったらしい。

「解剖とかされるのかと思ったけどな」

「まだその可能性は残ってんぞ」

 そんな軽口を叩いていると、扉を開いて壮年の男性が入ってきた。白衣ではなくスーツ。鍛えた骨太の体。しっかりした足取り。アスリートというよりは軍人を思わせる。

「失礼」

 一言断りを入れて椅子に座る。

「まず、安心できそうな事から話そうか。ギルドとしては君たちを解剖する予定は無い」

「となると、改造手術をぐっ」

 隣の馬鹿の喉に母指抜手を入れて黙らせて話の先を目線で促す。若干表情を変えたが、意図は汲んでくれたようだ。

「まずワシはギルドに勤める利根川というものだ。これからワシの言うことはギルドの見解と思って聞いて欲しい」

 一拍置いて、利根川さんが続ける。

「諸君らの体の状態だが、医学的、物理的には問題は無い。明日にも退院してもらうことになる」

 となると、それ以外の問題があると。

「問題は、その心臓の上の結晶体だ。検査の際、魔術の専門家にみてもらったところ一種の魔術的寄生生物という事がわかった。呪いとして使われる、使い魔や式神の類だな。放置すれば一年後に宿主を食い破り魔物として生まれ出る。厄介なことに、肉体を得て産まれるためダンジョンから離れた魔力の少ない場所でも活動出来ると言うことだ。もちろん無理やり取り出せば宿主は死ぬ」

「……なんて、厄介な」

 ブラックウッズさんが呻く。確かに厄介だ。肉体を持った魔物がダンジョンの中でなく、外で現れたら。町中に猛獣放つようなもんだ。

「呪いを解く方法は判明している限りただ一つだ。かけた術者を倒しその縁を断つ」

「あのー、その話からするとかけた術者ってもしかして……」

 おそるおそるベネットさんが尋ねる。利根川さんは一つ頷くと答えた。

「達川町ダンジョンにいるであろう、成体のドラゴンだ」

「そうッスよねえ!?」

「コイツは燃えるぜ!」

「燃えないで欲しいッス!」

 ベネットさんと馬鹿が対称的な声を上げる。何で喜べるんだお前は。ドラゴンスレイヤーにでもなりたいのか。なりたがってたな、そういや。興奮する二人を無視してアルナさんが利根川さんに問う。

「あの、誰かを雇って倒してもらうとかは……」

「君たち以外の誰かが殺してもいいのかもしれんが、ギルドとしては原則的に冒険者は自己責任の立場であるため、その為の予算は出せない。成体のドラゴンを倒せる冒険者は依頼料からして億単位だ。君達が出せるなら仲介はするが……無理だろう?」

 全員沈黙で答える。まあ、無理だよな。親が出すかな?ないな、ウチは。

「術者の場所が分からない、というのも問題だ。そもそも達川町ダンジョンにドラゴンがいたということすら知られていなかったからな。だが、君達は呪いという魔術的繋がりで術者とつながっている。それをたどる道具の開発を現在頼んでいる所だ」

 ……あれ?と、俺が抱いた疑問はキリオさんが口にした。

「それは、ギルドが依頼をかけているんですか?先ほど冒険者は自己責任とおっしゃってましたが」

「うむ、良い質問だ。それも含めてギルドから君達への処遇を言い渡そう」

 元から厳めしい顔をさらに引き締めて利根川さんは続けた。

「まず君たちには、学校を休学なり退学なりしてもらって冒険者に専念してもらいたい。そして、こちらで用意した寮に引っ越してもらう」

 この提案に少なからず動揺の声が上がる。かなり人生設計を狂わせる話だからだ。

「やったぜJDと一つ屋根の下!シェアハウス!」

 馬鹿は喜んだが。

「言っておくが、アパートを一棟借りて一人一部屋充てる形だ。女性の方のプライバシーに考慮してこうなった。そして、この措置は呪いの影響が今後どう転ぶか分からないためのものと理解して欲しい。授業中や就寝中に前触れ無く魔物になれば惨事は免れない」

 うっわあ、正論だけに断りにくい。

「その代わり、光熱費や水道料金などの諸経費はギルドが負担しよう。通信費もだ。動画配信は今まで通りやってもらっても構わないが、呪いの件に関しては伏せて欲しい。冒険者全体が危険視されることは避けたい」

「まあ、そうですね……」

 リーダーのキリオさんが不承不承ながら受け入れる。炎上の怖さをよく知っているんだろうなあ。

「まあ、他にも細かい話は色々あるが、以上の話はあくまで提案であり要請だ。我々は警察のような治安組織ではないため強制はできない。できないが、断った場合にそれなりの対応があることは考慮に入れていただきたい」

 ここで脅迫にくるか。

「随分と本気なんですね?」

 疑問半分、皮肉半分の心持ちで聞いてみる。想定内の言葉だったか、表情は微塵も動かない。

「ギルドとしては、君達にドラゴンを倒し呪いを打ち破るテストケースになって欲しいと考えている。知られていないだけで、今回のような罠で冒険者が何人も犠牲になっている可能性がある。また、ドラゴンの使う術についても同様だ。君達の冒険を通じて可能な限りの知見を得たい。そうして同じ驚異の対策を立てたい。そういうことなのだ」

 ド正論。その為には脅迫も辞さないってことか。まあそうか。俺でもそうする。

「もう一つ質問ですが、やっぱり今のメンツでチーム組まないと駄目ですか?」

「おや?強制はしないが、ドラゴンを狙うに当たり戦力を分ける意味があるのかね?」

「ですよねえ!!そうだろうと思ったよチクショウ!!」

 最長で、あと一年は馬鹿の面倒をみなくちゃならない。命のこととか将来のこととか家族への説明とか桁外れの面倒ごとが増えてるのに、無くなるはずだった面倒が減らない。快哉を上げるブラックスラッシュの面々。なぜかサムズアップする馬鹿野郎。さすがに状況についていけていない利根川さん。

 ダンジョンの理不尽さを呪いながら、俺は天井を仰いだ。

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「馬鹿になるスキル」をLV上げする馬鹿がいる @seidou_system

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