ハンディキャップを綺麗な言葉で言い替えて、子供に余計な夢を見させるな!!

@HasumiChouji

ハンディキャップを綺麗な言葉で言い替えて、子供に余計な夢を見させるな!!

 その日、子供が通っている小学校の担任の先生に呼び出された。

「健康診断の結果、お子さんが色覚異常と判断されました」

「は……はぁ……でも、日常生活は普通に……」

「そう言われますが、軽度とは言え、赤と緑の判別に難が有るとの結果が出ました」

「いや、待って下さい。ウチの子、写生で賞をもらった筈……」

「色覚異常が有るのに、写生で賞をもらった事がおかしいので、既に、賞の取り消しの申請をしています」

「はぁっ?」

「将来、映像やデザインや絵画や出版に関する仕事は、絶対にさせないで下さい。車やバイクの免許も厳禁です。赤信号と青信号の区別が付かないので」

「いや、待って下さい。赤信号と青信号の区別が付かないのなら、どう考えたって、これまでの人生で、何かの支障が……」

「有る筈です」

「いや、そんな事を言っても……」

「明らかに障害がある児童なのに、その障害に気付いてないとは、一体全体、貴方は親としての責任を、ちゃんと果たしているのですかっ⁈」

「待って下さい……。何か色々と……」

「科学的事実です。受け入れて下さい。お子さんには、今の内に、将来の職業選択の幅は狭まったと言ってきかせて、夢が有るなら、それを諦めさせるのが、お子さんの為です」

「ええっと……職業としてではなく、例えば、趣味でYoutuberをやるのも駄目でしょうか?」

「確実におかしな映像になる筈です。お子さんが作ったり撮った映像をYoutubeにUPすれば、画面全体が『こいつ(作者注:差別用語につき一部自粛)かよwwwww』と云う弾幕で埋め尽される筈です。そうなれば、お子さんは絶望して自殺するかも知れませんよ」

「そ……それは、Youtubeではなくニコニコ動画では?」

「どっちにしろ、お子さんは残念ながら障害児です。変な夢を見させないのが、お子さんの幸せに繋ります。障害児が変な夢を見たら、その夢を叩き潰すのが……」

「あの……先生……」

「障害児の分際で、健常者並の幸せを得ようなど巫山戯た事態を許す訳には……俺だって、自宅に仕事を持ち帰ってるのに、給料は、たった……」

「先生っ‼」

「ああ、失礼。ともかく、お子さんは障害児です。障害児として扱って下さい。私もそうします。クラスの生徒にも、そう言って……」

「あの……ウチの子は、どう云う検査で色覚異常と判断されたのですか?……そもそも、最近は『色覚異常』ではなく『色覚多様性』と呼んでるみたいですが……」

「あなたは、言葉狩りを肯定する表現の自由の敵かっ⁈ 親のあんたがそうだから、あんたの子供は障害児の分際で……」

「だから、どんな検査で、どう云う結果が出たんですか?」

「はい、石原表の……」

「石原表? その検査法は古くないですか? あと、何年版の石原表ですか?」

「何年版だろうと、『色覚異常』の定義は『石原表を読めない事』なのです。石原表で色覚異常と判定された奴が描いたフルカラーの絵が評価されたのなら、それは、世の中の方が間違っているし、信号を識別出来たのなら、その信号が壊れているだけで、自動車運転やまして飛行機の操縦に支障が無いのなら、その飛行機や自動車が欠陥品……」

「あの……で、どのページが読めなかったんですか?」

「はい、このページを見せたら正解の数字ではなく『すいません、ちょっとおしっこ行っていいですか?』と答えたのです」


 数日後、学校から、ウチの子の担任に関して「仕事のストレスで健康を害し、療養の為に休職した」との連絡が有った。

 更に数週間後、保護者の間で「あの先生はSNSで変な奴をフォローした挙句、そいつのタワ言を真に受けて自分もおかしくなった」と云う噂が流れたが、真偽は不明である。

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