第4話 【2023年版】年齢×1000本ノック(誕生日プレゼント)
木枯らしも吹き、紅葉が世界を包みし頃。
人々は風情と非日常を求め、森に、谷に、川にと足を運ぶ。
そこに純然たる意志はない。人の遺伝子の中に、秋は紅葉を楽しむものだと刻み込まれている。
出勤時間には厚手のコートを羽織ったサラリーマンや学生がちらほらと道端を歩いている。
吐き出す息にも白い靄が見え、少しずつ冬へと向かって歩み始めているのがそこかしこに見受けられてきていた。
各ヒロイン達が住むS県K市。
合併により市とはなったが、元々が郡であり町であったこの場所のとある場所に、大きな声が響き渡る。
「おらー!真白はそんくらいちゃんと取れるぞー!」
「なんだその返球はー!明後日の方向に投げたらファーストが大変だろうがー!」
大声の合間にキィンっという甲高い金属音も響いている。
息も荒々しく、疲労を露わにしている青年……中年の男は、一つ一つの所作がやっとこさという感じであった。
「ったく、お前どの時間軸の恵だよ……」
男はぼそりと漏らした。その言葉が耳に入ったのか、襲い掛かる白球は一段と厳しいものとなっていた。
少なくとも男にはそう感じていた。
「どこの時間軸でもいいだろー!
そうだそうだーと外野の声が、金属音の元である、鬼ノッカーこと種田恵である。
「今は柊恵だ、こんにゃろー!」
どうやら当人出演の作品より未来からきた種田恵であった。
「現実世界では真白が入団する球団の元ネタの関西の球団が!38年振りのAREとAREのAREを達成したよなー!」
キィン!
一層強い打球が男を襲う。
件の登場作品の主人公である柊真白のように華麗に淡々ととはいかないまでも、必死に打球に飛びつく男。
辛うじて捕球すると、歳のせいか疲労の成果はともかく、へろへろした送球で1塁へ放る。
そう、男と恵が何をしているかといえば、S県K市のとあるグラウンドで
先にネタバレをするのは良くないのだが、現状では真白と恵はもうすぐ高校3年生になるところだ。
正確には春休みで、ライバルである一つ年下の山神学園の
とことどころ色々なところで、登場キャラが出演しては未来のネタバレをぽろぽろしている。
先程の恵の叫びもネタバレ的なものを表していた。
「お前いい加減、続きを書きやがれー!」
という登場キャラからの
他の
「そうだそうだー」
「エタらせないでくださいー」
「ノクターンに移設まだですか?」
様々な声が恵に続いて木霊していた。
「地獄の年齢×1000本ノックはまだまだ残ってるぞー!!」
なお、件の主人公である柊真白はこのノックを毎年受けている。本編でそんな描写はないが、実は恵からの愛情表現であったのである。
「そら、はっぴばーすでー!」
強烈なノックがライナーで男を襲った。
それはAREのAREを決めた最終戦、件の4番打者の第一打席、サードライナーを相手チームの三塁手がファインプレイした時のような打球。
カクコン向けの百合話で一杯だった男の脳を、再び野球が埋め尽くされたのは仕方がない。
38年振りの日本一。舞い上がるのは虎党ならば仕方がないのである。
元ネタ球団として阪神を上げているが、当然大人の事情で作品中では名前を変える事になる。
ようするに、思いつくまで卒業はさせん……
2023年の聖誕際は、作者にとってものすごく痛い身に染みる1日となるのであった。
しかし、
音子「今年、私の出番なかったですね。」
いや、お前
とても痛い聖誕祭17:50 琉水 魅希 @mikirun14
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