第2話

家に帰ると今日の出来事を日課の日記に記す。これは俺が霞さんに引き取られた後、霞さんに


「これから倫にはたくさんいろんな事があると思う。楽しいことや悲しいこと、そういう気持ちを日記に書いて私と共有しよう!最初は文字で、なれたら会話で共有しような!」


今では会話で共有してるから日記にわざわざ書かなくてもいいのだがずっと日課になってたのでなかなかやめられなかった。それに霞さんは日記にもちゃんと後で返してくれるからつい書いてしまう。言葉よりも文字のほうがまだ伝えるのがかんたんだから。


だから俺は今日も今日あった出来事を日記に記してからノートを閉じた。時刻はもう16時を回っていた。そろそろ夜ご飯の準備をしないと。霞さんはいつもの18時すぎに帰ってくる。霞さんはファッションデザイナーの仕事をしていていつもは18時頃に帰ってくるがイベントなんかがある日やその前後はかなり遅いので一人で夜を食べる事もある。


今日は何にしようか。と考えているとふと、今日の常連さんとのやり取りを思い出していた。


俺は霞さんに引き取られて身なりを整えてから凄くモテるようになった。今ではろくに学校も行かせてもらえなかったのでよくわからなかった。人に好かれるのは嫌な気分にはならない。ただその気持ちに答えられない事に気分が淀む。


どれだけの人を突き放したのだろうか。いろんな人がいた。泣いてしまった人、暴れて縋った人、逆恨みをして俺を貶めようとした人、皆が必ず最後は諦めた。でも今日はいつもと違った。諦めない。この言葉が離れない。どうしてだろう?


俺は人を好きになれない。こんだけ長く一緒にいる霞さんですら心から好きにはなれてない。怖い。もし裏切られたらと思うとブレーキがかかってしまう。そんな自分がどうしようもなく嫌になる時がある。俺はこのままずっと人を好きになれないのだろうか?あの常連の彼女は一体いつまで諦めずに要られるだろうか。俺はほんのちょっとの期待と、どうせすぐ諦めるだろうというどうしようもない本音とでごちゃまぜになる。


明日もバイトがある。その時また常連さんがきたら少し自分から声をかけて見ようとほんのちょっとだけ前を向いた。

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