嘘から始まる恋〜俺は君を愛せない〜

無色透明

第1話

夢を見た。それは俺がまだ小さい頃俺は親に虐待をされていた。最初は痛くて苦しくて泣き続けた。でも徐々に泣いてもやめてもらえないことを理解した。段々と痛みも感じなくなり苦しくもなくなった。その時の俺にはもう心がすり減って何も感じなくなっていたんだと思う。結局虐待は母親の妹、霞さんに保護されて止まった。俺は2歳から保護される12歳までの10年間虐待をされていた。


目が覚める。嫌な夢だ。あれから俺は霞さんに引き取られ俺の親になってくれた。俺にとっては霞さんこそが俺の親だと思ってる。霞さんには本当に感謝してる。今年で16歳になる俺はそれでもまだ心が壊れたままだった。


こんなに良くしてくれた霞さんの事が心の底から信じれない。もし霞さんに心を開いてそれで霞に裏切られたら俺はもう全てが壊れてなくなってしまう気がするから。だから俺は愛を知らない。


ベットから降りて俺はいつものようにキッチンで二人分の朝食の用意をしたあと2階にある霞さんの部屋をノックする。


「霞さん、朝ごはんできた。早く来て、冷めるから」


えらく冷めた言葉に聞こえるかもしれないがこれが俺だからどうもできない。中から「ほーい!今行くー」と俺とは対照的に明るい声で返事を返してくれる。俺はリビングに戻り霞さんの好きなココアを入れて待ってると


「ごめんごめん、さぁ!たべようぜ!いつもありがとな、倫」


朝からとびきりの笑顔で感謝をしてくれる霞さん。俺も笑顔で返事をすればいいのだろうがどうやって笑顔にするのかわからないので「うん。」と無愛想にかえしてしまう。霞さんにとってはもう当たり前のことなのですぐに新しい話題を出してくる


「いやー倫も今年から高校生か〜なんだかあっという間ってかんじだな〜」


そう俺は今年の4月から高校生になる。俺は早く大人になって少しでも霞さんに恩を返したいと思ってる。だから勉強も頑張って今年から行く高校は進学校で俺は一応そこで新入生代表になった。霞さんは凄く喜んでくれた。今も凄く嬉しそうに語る霞さん。俺はその様子がおかしくて


「ふふ、霞さん。なんだか年寄りみたいだ」


すると「誰が年寄りだ!誰が!私はまだ24歳だぞーまだまだ若いやつにはまけんね!」と胸を張って抗議した。そう霞さんはまだ若い。俺を20歳で引き取ってからずっと一人で俺のことを育ててくれた。


「ごめん。霞さんはまだ若い。綺麗だから俺の同級生が見たらきっとモテモテになるよ」


本当にそう思ったのでそう言うと嬉しそうに「よせやい!私ももう若くないんだからあんまりからかうなよ〜」とさっきとまるで反対の言葉を言いつつ俺の頬をグリグリする。


こんなふうにいつも通りに話しながら朝食を食べ、俺はまだ春休みなので家に霞さんは仕事に向かう。霞さんが出るときに俺達はいつものをする。それはおでことおでこをひっつけて


「じゃあ今日も一日はりきってこー」

といっておでこを離しハイタッチをしてから「いってきます!」といって家をでていく。これは俺がここにきてから毎日していることだ。俺は最初は無表情で無感情でしていた。でも今では無表情には変わりないがこれをするのが楽しみだったりする。


霞さんが家を出たあと俺は外に出る支度をしてバイトに向かった。このバイト先は霞さんの知り合いの人が個人でやってるお店で落ち着いた雰囲気があり俺も気に入ってる。


バイト先につくと霞さんの知り合いで店長をしている葉月さんが近寄ってきて


「もう〜待ちくたびれちゃったじゃない!あ〜相変わらずイケメンね〜それにえろい!」


毎回葉月さんは俺をみて癒やされると言っている。霞さんも前に


「倫はかっこいいから身だしなみはしっかりしなね!髪とかも知り合いにすごいかっこよくしてくれる人がいるからそこで切ってこい!」


と言われたので俺は毎回そこで切ってる。そこの人にもかっこいいとかさっき葉月さんがいったえろいとか言われる。俺はいつものことなので


「ありがとうございます。葉月さんもいつも綺麗ですよ?じゃあ着替えてきます」と慣れた感じで交わし制服に着替えにいく。


向かう途中で後ろから「も〜いけず!そこもグット!」などと言っていたがスルーした。霞さんもそうだが葉月さんも美容師の優子さんもみんなテンションが高い。


俺自身がテンションが低いのでなんだか心地良い。自分から喋らなくていいから。


それから俺は馴染みの制服に着替えて仕事を始める。するといつもの常連さんが入店した。毎回同じ席に座り同じものを注文する彼女。年は俺と同じくらいだと思う。常連さんなので


「いつもので大丈夫ですか?」と俺が聞くと毎回


「だだだだだいじょうぶでしゅ!」と噛み噛みになる彼女。これもいつものことなので特に指摘することなく


「かしこまりました。少々お待ちください」


といって霞さんのような笑顔を心がける。その度顔を真っ赤にする彼女。どうやら今回もうまく笑えなかったみたいだ。


しばらくして常連の彼女にミルクティーを持っていきその後もまばらなお客さんの対応をしながら時間は過ぎていく。今日の業務が終わり葉月さんに挨拶をして店を出るとそこに常連の彼女が待っていた。


俺はなんでいるんだろうと思いながらも軽くお辞儀をしてその場を離れようとしたら


「………待ってください!おお話があります。少しだけ時間をもらえませんか?」


噛むのはいつもの事だがなんだか表情や雰囲気がいつもと違った。この雰囲気には既視感がある。中学のときによく感じたことだったから。


すると俺の感じた通り常連の彼女は


「………あなたが好きです!私と付き合ってください!」


「ごめんなさい。」

思わずいつものように即答してしまった。常連の人なのに失礼だったかな?もう来てくれないのかな?そんな事を考えていると


「わ、わたしじゃダメですか?」


これはどう答えたらいい?霞さんにも以前相談した。その時霞さんは


「女の子には優しくだ。気持ちに答えられなくても向こうは勇気を出してくれたんだから倫はそれを蔑ろにしてはだめだぞ!そんなのは男が廃るからな」


霞さんはそんな事を言っていたが優しくってどうすればいい?優しい、気持ちが軽くなったりされて嬉しいことが優しい事なんだろうか?俺は自分が霞さんにされて気持ちが軽くなったことを彼女にした。


できるだけ丁寧に彼女の頭を撫でた。すると彼女は目を見開いて顔を真っ赤にし、あわあわしていた。う〜ん、まだたりないのか?


「あなたはとても綺麗ですよ?でもごめんなさい。俺にはあなたが俺に思ってくれてるような気持ちになれない。だからごめんなさい」


すると少し涙を流した彼女。あ〜俺は彼女に優しくできなかったのだろう。少し残念におもっていると


「……私は!まだ諦めません!これからは

あなたの心に少しでも入れるように努力します!だから見ててください!あ、あと。また店きます!…………それと高校でも」


と言って走って言ってしまった。最後は何を言ってるのかよくわからなかった。


それにしても諦めないか。それは初めて言われた。でも俺はいくら彼女が好意を寄せても答えられない。だって俺には…………それを受け入れる心がないから。



俺は愛を知らない。恋を知らない。だからごめんね?と俺は心の中で彼女につぶやいた。


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