第3話 真也と凪は理由を求める
居残ったところまでは良かったけれど、なんとなく気まずくて一言もしゃべらずに1時間が過ぎてしまった。
「きょ、今日も二人きりっすね。どうです?勉強捗っていますか?」
「うーん、ぼちぼちってところかな。真也さんは?」
「自分もぼちぼちっすね、なんか集中できなくて」
「私もなんか集中できないんだよねーなんでだろ?ふふふ」
変に探りあっているのがわかる。
そんな顔をしないでくれ、選択を間違えそうになる。
「まぁ明日はテストっすからね。緊張しているんでしょう」
「はぁ……そうだね。…明日はテストだったねぇ!」
「ごめん、なんか怒らせちゃいましたか?」
やっぱりこの人は鈍いなぁ。
わかっている癖に。
でも変化を恐れる人に変化を強要しようとする私は悪い子だ。
「ううん、別に。……ねぇ、なんで真也さんはテスト前に学校に居残るの?理由は?」
「な、な、なんでそんなことを?うーん」
――突然どうしたんだ!?でも、ここは正直に言うのが……。
「学び舎で集中して勉強をすることで成績向上……というのは建前っすかね。」
「建前?本音はなんなのかな?ふふ」
――た、た、た、建前!?ちょっと
「本音は……まぁ凪さんと一緒に勉強ができるからっすかね。案外楽しいんすよ」
「そ、そうなんだ。ふーん、わ、私も楽しくないってことは無いかなぁ」
「まぁ勉強は捗りませんけどね。ハハハ」
「そうだね、なんでだろうね。でも楽しいからいいよね。うふふ」
――ちょっとだけ変わってしまったのかもしれない。
でも凪さんはこのちょっとした変化を受け入れてくれたみたいだ。
ただ、これ以上に進むのに僕の勇気はまだ足りない
ごめん、もう少しだけ待ってくれ。
――少しだけ真也さんの気持ちがわかったかもしれない。
つーかこれ実質告白みたいなものでしょ。
まぁ、今日のところは許してあげる。
もうあと少しだけ待ってあげる。
きっとこれ以上の変化があると信じているから。
秋の暮れは想像以上に早く訪れる。
それが冬になるともっと早くなり、生き物は眠りにつく。
だが終わらぬ冬は無い。
新たな芽吹きの春に向かって準備をしているのだ。
その小さな勇気を伝えることが出来るように。
僕と私は理由を求める 神田椋梨 @SEA_NANO
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