捨て子となり、ヒトの身でありながらケモノの集落に拾われた少年イオ。
だが、イオはケモノの集落でヒトに対するありとあらゆる恨みをぶつけられて育った。
決して幸せではなかったイオの人生は、ケモノの集落を滅ぼしたヒトに処刑されることで幕を閉じる。
そんな彼を唯一支えていたのは、長の娘であるキノだった。
イオが処刑された後、キノはただひたすらにイオを想いながら死に場所を求めて歩き続けるーー
衝撃的な冒頭から始まる物語。イオを思うキノの悲痛な独白に胸が張り裂けそうになります。
読者の心を捉える共感性の高い文章と構成が、作品の魅力を一層際立たせているのでしょう。
キノの独白で進む物語ですが、幸せな一時を過ごした恋人同士の情景がありありと浮かび、ラストは思わず涙してしまいます。
短い中に、哀しくも美しい愛を表現した素晴らしい作品です。