折り合い☆

ゆき

第1話

蓮 side



5月のある日のこと……

「ゔー……やっぱり蓮と会えないの寂しいよぉ。」

電話口で彼女の千紘からそう言われた。"コロナ禍"の今、当然のことながらデートは出来ない(苦笑)

「こんなコトなら、昨年蓮がプロポーズしてくれたトキに受けてれば良かったー。」

そう言って、彼女は溜め息を吐いた。そう交際3年めを迎えた昨年、千紘にプロポーズをした。……けど、千紘には難色を示されて(苦笑) なんなら、『試しに"婚前同棲"してみようか?』と計画を立てていた矢先の"緊急事態宣言"だった。

「ふっ、そうだよな(苦笑) 『"婚前同棲"してみようか?』なんて話してた矢先のコトだったモンな。」

「うんうん、こんなコトになるなら……あのトキに受けてれば良かったよぉ。」

千紘は泣きそうな声でそう言った。

「まあまあ……あ、千紘は仕事行ってるのか?」

「うん……ほぼほぼお休みだけどね、週に2,3回は交代で職場に行ってる。"返却ポスト"の本を回収しないと満タンになっちゃうしね(苦笑)」

千紘は"図書館勤め"。現状はそんな感じらしい。

「蓮はー?塾もお休みでしょ?」

そう、俺はいわゆる"塾講師"をしている。

「ああ、塾自体は休みだけどな……一応出勤はしてる。"リモート授業"(?)みたいのがあるしな。」

「あ、そっかー。」

「ふっ、ああ。……あ、今年も"梅しごと"したよ。毎年『一緒にやる!』とか言いながら、千紘任せだったけどな……今年は一緒に出来ないから、ひとりで。"梅酒"と"梅シロップ"作ったゼ☆」

「そうなんだね♪解除されたら、一緒に飲もうね✨私、"炭酸"買ってくね。」

「ふっ、ああ。……解除されたら、"顔合わせ"でもする?結婚する、でいんだよな?」

「……うん。自信はないけどね、今みたいに離れてたくない。100%じゃなくても、許してくれる?」

「ああ。俺も一人暮らし長いし、サポートは出来ると思う。俺さー、はじめっから完璧は求めてねーよ(苦笑) プロポーズしたトキからそのつもりだった。とりあえず千紘と一緒に居たくてさ。」

「……頭ごなしに拒否するんじゃなかったなぁ。私が受け入れなかったのもね、自信がなかったからなんだ。……もっとちゃんと話し聞いてれば良かったー。」

そう言った千紘の声は暗い。

「ふっ、そう言ってもらえて嬉しいゼ。……再来月の千紘の誕生日には一緒に過ごせてるかな?」

「……だと、いいんだけどね。」

「もし、一緒に過ごせてたらさ……指輪買いに行こう?そろそろ"顔合わせ"の話もしてこーぜ。日程以外のトコ詰めよう?」

「うん……そうだね!そうしよう♪」

千紘にそう言われて、そこからは"顔合わせ"の話を詰めた。

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折り合い☆ ゆき @kuma0896

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