202011 ジャパロボF

渋谷かな

第1話 ジャパロボF

「オーライ! オーライ! さとみちゃん! もうちょっと右ね!」

 学校が休みの土日はさとみたちは母親の祐奈のチームで自衛隊のパイロット候補生としてアルバイトをしている。

「麻衣さん!? どうして自衛隊なのに治安維持活動でなく、東京ツリースカイの窓ふきなんかをやるんですか?」

 さとみは悪い犯罪者とジャパロボで取っ組み合いの戦いができると思っていた。

「仕方がないでしょ。人間がやるには危ないし、他のジャパロボに飛行ユニットを付けても安定しないし、あんたたちの4大精霊ジャパロボは自由に空を飛べるんだから。」

 風の精霊シルフィード・ジャパロボなら高層建物の窓ふきもお手の物であった。

「そんな!?」

「恨むんなら生まれの不幸を恨みなさい。この仕事を引き受けたのは、あなたのお母さんなんだから。」

「無理です!? だってお母さん寝てだけなんだもの!?」

 駐車場には指令車が来ていた。

「zzz。」

 もちろん祐奈は寝ているだけだった。

「祐奈、遅い。手伝おうか?」

「イリスお姉ちゃん!? もう終わったの!?」

「もちろん。タワー東京なんか一瞬で水洗いしてピカピカにしてやったわ。」

 水の精霊ウンディーネ・ジャパロボのスキルを使い大量の雨を降らせたのであった。周囲の住宅が浸水していない保証はない。

「そうか! その手があったか!」

 さとみは何かに気がついた。

「いくぞ! シルフィード! 我、さとみの名において命じる! 優しい風!」

 風の精霊シルフィード・ジャパロボのスキルで優しい風を起こしツリースカイの窓を風圧できれいに掃除する。

「できた! 私にもできた! うん! キレイ!」

「さすが私の妹だ。アハッ!」

「おまえら姉妹は何でもありかい!?」

 普通の人間の麻衣には理解できない。

「まずい!? もしもヒルズ六本木を掃除しに行ったすずちゃんがサラマンダー・スキルを使ったら、ヒルズが火柱になっちゃうよ!?」

「そんなことをしたら炎上だ!? 早く消化に向かわないと!? いくぞ! さとみ!」

「はい! お姉ちゃん!」

 イリスとさとみは六本木に移動する。

「全く騒がしい姉妹だ。」

 麻衣は呆れる。

「zzz・・・・・・もう飲めませんよ・・・・・・え? もう一杯だけ・・・・・・そうですか・・・・・・うまい! アハッ! ・・・・・・zzz。」

 騒がしくても眠り続ける祐奈。

「ああ~、久美と麻理子が羨ましい。どこか遠くに行ったり、美味しいランチを食べたり、オシャレな服を買いたいな。」

 久美はすずとヒルズ六本木、麻理子は優子とミッドタウン六本木の高層ビルを掃除している。麻衣は祐奈のお守りでストレスがたまっていた。

「女子会するぞ!」

 突如目覚める祐奈。

「祐奈教官!? 起きてたんですか!?」

「私が関心のあることと私の悪口だけは聞こえてくるのだ。」

「なんて都合のいい耳なのかしら!?」

「麻衣、女子会で挽回できなければ上官侮辱罪でボーナス無しな。」

「そんな!? それだけはご勘弁ください!?」

「私が綾教官に歯向かえない気持ちが分かったか? 人の痛みを知れ。」

 目覚めた祐奈が動き出す。

 つづく。


「女子会!?」

 緊急招集されたチーム祐奈の面々が衝撃を受ける。

「何か悪い物でも食べたんですか!?」

「食べてないよ。だって寝てたもの。アハッ!」

「お母さん!? どうしたの!? 仕事が終わったら、お家に帰って温かい布団で寝るんでしょ!?」

「大丈夫。指令車両に枕と布団を積んでいるから。アハッ!」

 いつでも、どこでも、誰とでも眠れる祐奈。

「いったい何があったんだ!?」

「おまえたちは私をなんだと思っているんだ?」

 一同は祐奈の口から女性らしい言葉が出ることに恐怖を感じる。

「祐奈教官! 自衛隊本部からエンペラーの使用許可がおりました!」

「よく使用許可が出たな?」

「チーム祐奈は綾幕僚長の直属の部隊だからね。」

「よくやった! 麻衣!」

「麻衣!? おまえが祐奈教官を止めないといけない立場だろうが!?」

「上官の命令は絶対です!」

 祐奈のパワハラで冬季ボーナスを人質に取られている麻衣。

「おまえたちの4大精霊ジャパロボは目立ち過ぎるから、自然に返しとけ。私のエンペラーで、どこか遠くに行こう。軍服から着替えたらエンペラーのドックに集合な。」

「はい!」

 こうしてチーム祐奈は女子会準備に入ることになった。


「イリスお姉ちゃん。」

「なに? さとみ。」

「女子会って何をするの?」

 臭い汗をシャワーで洗い流している広瀬姉妹。

「ご飯を食べて、服や雑貨を買い物するんじゃない?」

「私、近所のコンビニとスーパーしか行ったことがないんだけど。大丈夫かな?」

 さとみは不安だった。

「私は女子会よりも家族旅行がしたいな。お母さんが寝てばかりだから、家族でどこかに旅行したことなんかないもんね。」

 眠り姫、祐奈を母親にもった娘の悩みである。

「ダメよ!」

 そこに麻衣が割り込む。

「祐奈教官とあなたたちでお出かけされたら、どこか道端で3人とも眠ってしまって、私たちが迎えに行くことになるんですから。絶対に許可できません!」

 麻衣の苦労は尽きない。


「し、しまった!?」

 エンペラーのドックに集まってきたチーム祐奈の隊員に致命的な問題が発生した。

「女子会に行くにしても、私たちの私服がダサすぎる!?」

 女性自衛官たちの私服は男勝りな格好ばかりだった。OLらしい通勤姿は麻衣だけだった。

「お母さん!? どうしてパジャマなの!?」

「寝坊したのでパジャマでやって来たのを忘れてた。アハッ!」

 祐奈はこういう奴である。

「あなたたちこそ、もっと良さそうな服はなかったの?」

「お母さん、娘に服を買ってくれたことがあるの?」

「・・・・・・zzz。」

「寝るな!」

 寝てとぼける祐奈。

「久美、ブラくらいしなさい。」

「誰も見ないって、しがないメカニック女なんて。」

「あちゃ~。」

 チーム祐奈の風紀は乱れていた。

「麻衣、なんとかして。」

「はい! こんなこともあろうかと潜入捜査ということで衣装協力も取り付けておきました!」

「でかした!」

 全員着替え直し女性らしい服装になる。

「これで行けるぞ! 女子会! ワッハッハー!」

 エンペラー・ジャパロボが空に飛び立つ。

 つづく。


「やって来ました! 横浜!」

 さとみたちは女子会のためにオシャレなイメージで横浜にやって来た。

「はい! ここより先に入らないで! 入ったら大日本帝国自衛隊法違反により逮捕しちゃうぞ!」

 チーム祐奈の隊員たちはエンペラー・ジャパロボの周囲に規制線を貼る。

「これでよし! いざ! 出陣じゃ!」

「祐奈教官は女子会を理解しているんですか?」

 麻衣の不安は高まる。

「人生、寝てばっかの私が知っていると思うか?」

「思いません。」

 想像通りの答えだった。

「オシャレなフレンチ勝利のお店を予約しておいたので行きましょう。」

「さすが麻衣ちゃん。ボーナスアップも夢じゃないぞ。」

「やったー!」

 こうしてフレンチ料理が何か知らないままチーム祐奈はお店に行く。


「こ、これは!? なんだ!?」

 チーム祐奈の面々は見たこともない敵に震えた。

「かたつむりを食えというのか!?」

「フランスではエスカルゴっていうんです。フランスでは高級食材ですよ。」

「恐るべし!? フランス驚異の食文化!?」

 案の定、フォークをエスカルゴに突き刺すのに苦戦して転がして遊ぶ。

「これが女子会というものなのか!?」

「違います!? 女子だけで美味しい食事を食べて、ガールズトークするんです!」

「ガールズトーク!?」

 聞きなれない言葉に祐奈は興味深々。

「なんていい響きなんだ! みんな! ガールズトークするぞ!」

「おお!」

「良かった。やっと女子会らしくなる。」

 麻衣は少し安堵する。

「でね。今度カナダのグリンゲイブルズって所でテロの情報があってね。綾教官が出張しろっていうのよ! 酷いでしょ!?」

「やったー! 修学旅行はカナダだ!」

「おやつは300円までですか!?」

「四大精霊ジャパロボを解体させてよ!」

「嫌です。」

「久美ちゃん・ジャパロボをパワーアップさせるんだ。アハッ!」

 普通の女子会は崩れ去った。

「美味しい。」

「こらー!? 未成年がワインを飲むな!?」

「グレープジュースはお酒ではありません! ヒクッ!?」

 酔っ払う優子。

「zzz。」

 寝てるイリス。

「余は満足じゃ! 女子会は大成功だな! アハッ!」

 祐奈は娘たちや隊員たちを見て微笑んでいた。

「麻理子、あなたただけでも、この人たちに馴染んじゃダメよ。」

「は、はい。」

「今度、二人だけで女子会しましょうね。」

 麻衣は麻理子以外の仲間を切り捨てた。

「さあ、楽しい一時も過ごせたし、帰るとするか。麻衣、お会計を頼んだぞ。」

 これはレジでの一コマである。

「ええー!? 祐奈教官のおごりじゃないんですか!?」

「バカ言うな!? 私はお金なんか持ってきていないぞ!? 自慢じゃないが私はATMからお金を下ろしたことはないんだぞ!?」

 全てAIロボットの明治天皇にやらせていたからである。

「分かった。私の実力を見せてやろう。みんな先に出ていろ。店長を呼んでくれるかな?」

 なにやら祐奈はレストランの店長と話している。

「さあ、帰るぞ。」

「祐奈教官、ちゃんとお金は払ったんですか?」

「いいや。代わりにレストランの壁に私のサインを書いてきた。明日から、あの店は大行列ができるぞ。ワッハッハー!」

 国民的英雄の祐奈だから許される行為である。

「次は締めのラーメンだ!」

 二次会が始まる。

 つづく。


「おやじ! ラーメンを7人前!」

 祐奈は昔の屋台のラーメン屋、イマドキではフードトラックのラーメン屋でラーメンを頼む。

「すいません。席が少ないんで相席でもいいですか?」

「いいとも!」

 祐奈たちはラーメンにありつけた。

「すいません。失礼しま・・・・・・あ!? あなたは!?」

 親切に相席の挨拶をする麻衣たちが見た者。

「前田みなみ!?」

 ラーメン屋にいたのは反大日本帝国同盟ジャパカイダのリーダー前田みなみであった。

「ブー!?」

 みなみはラーメンを喉に詰まらせて噴き出した。

「大丈夫ですか!? みなみ様!?」

 みなみは敦子、まゆ、由紀と4人でラーメンを食べに来ていた。

「こいつらは自衛隊だ!?」

「自衛隊!? 我らの宿敵だ!?」

「しかも! 祐奈隊だ!」

 祐奈がひょっこり現れる。

「サインください!」

「写真撮ってもいいですか!」

「握手して下さい!」

 ミーハーな敦子たち3人も、みなみ同様に国民的アイドルの祐奈のファンであった。

「裏切り者!?」

 みなみは敦子たちを疑う。

「おお! 我がチーム祐奈の新人隊員のみなみちゃんじゃないか!」

 祐奈はみなみを見つけた。みなみはチーム祐奈の隊員募集に応募して、書類選考を通過し面接を受けて入隊が決まっていた。

「連絡が取れないから、事故にでもあったのかと心配したんだよ。」

「え?」

 麻衣がみなみにコソコソ声で耳打ちをする。

「祐奈教官はあなたが反大日本帝国同盟ジャパカイダのリーダーとは知らないのよ。」

「え!? どうして?」

「祐奈教官は寝ていたからよ。」

 いつでも、どこでも、誰とでも眠れる祐奈は新人採用面接中でも眠る。

「お友達かい?」

「は、はい。女子会です。」

 テロリストも女子会はする。

「おお! 奇遇だね! 私たちも女子会なんだ! 一緒にガールズトークしよう!」

「いいんですか?」

「いいんです。今日は私の奢りだ! じゃんじゃん食べて飲んでくれ!」

 気分が良い太っ腹な祐奈。

「ありがとうございます!」

「祐奈さん! カッコイイ!」

「昭和の大スターって感じ!」

 敦子たちは祐奈の外面だけを見てときめいた。

「よし! みんなでガールズトークだ! アハッ!」

 褒めらえて機嫌が良い祐奈は更に盛り上がる。

「紹介しよう。私の娘のイリスと下の子のさとみだ。」

「宜しくお願い致します。」

「いつも母がお世話になってます。」

「まだ世話はしてないんだけど。アハッ!」

 みなみに祐奈は自分の娘を紹介する。 

「どうも、こちらこそお世話になってます。」

(祐奈さんには娘がいる!? 私は結子お姉ちゃんを失ったのに!?)

 みなみに殺意が芽生える。

 つづく。


「私はシングルマザーなんだよ。」

「え?」

 祐奈は自分のことをみなみに話す。

「私は結婚もしていないし、まだ男性と付き合ったこともないんだ。ある日、怖い上官が私の細胞を使って、遺伝子操作で娘を生み出したから育てろって言うんだ。無茶苦茶だろ!?」

 もちろん綾幕僚長のことである。

「そんなことが許されるんですか!? 人権侵害だ!?」

 いつの間にか、壮絶な話を聞いたみなみに生まれた祐奈家族に対する殺意は消えていた。

(そうだ。祐奈さんは何も知らなかったんだ。知らない間に自分の戦闘データを使われて、知らない間にクローンの娘さんまで作られて、なんて可愛そうな人なんだ!)

「あ。」

 祐奈に同情していることに気づくみなみ。

「さあ! 今日は無礼講だ! みんなで楽しく女子会しよう! レッツ! ガールズトークだ!」

「おお!」

 こうして敵と味方の交じり合った奇妙な女子会が始まった。

「どうしてあなたたちはみなみちゃんと知り合ったの?」

「はい。私はジャパロボ世界大戦の時の戦争孤児で、良心を失くしお腹が空いていたんです。」

「可哀そう!?」

「空腹に耐えかねた私は1枚の食パンを万引きしました。しかしパン屋の店主に見つかり捕まりそうになった所を「おいで。」とみなみ様と亡き結子お姉さんに助けられたんです。」

 これがみなみと敦子の出会いである。

「なんて良い話なんだ!? ウルウル。」

 祐奈は同情して涙ぐむ。

「ただの窃盗の協力者にしか思えないんだけど?」

 麻衣は首を傾げ疑う。

「囮に使われたんじゃない?」

「そういえば・・・・・。」

 確かにみなみと結子の手には大量のパンが握りしめられていた。

「でもでも!? 私を助けてくれたのはみなみ様だけでした! 困っていても日本政府は助けてくれなかった! もしみなみ様に出会ってなかったら、今頃私はお腹を空かせて死んでいました!」

 本当に困った時に助けるから信頼が生まれる。

「なんて良い話なんだ! ウルルン。」

 子育てをして母性が強くなっている祐奈は感動の涙を流す。

「君たちも同じ境遇なのかい?」

「私は駅で置き引きをしている所をみなみ様に助けてもらいました。アハッ!」

 まゆとみなみの出会い。

「私はカレー屋で食い逃げしている所をみなみ様に助けてもらいました。アハッ!」

 由紀とみなみの出会い。

「さすがみなみ隊員だ。私が見込んだだけのことはある。」

「祐奈教官。こいつら罪を自白したんですから逮捕しましょうよ。」

「貧しくて罪を犯さなければ生きていきなかったんだ。彼女たちを裁くことができるか? 私にはできない。」

 名奉行、祐奈裁きである。

「祐奈さん!」

 テロリストたちは猛烈に感激していた。日本政府に見捨てられたとテロリストに復讐を志したのに、当の復讐の対象が自分たちを理解してくれるのだ。

「ドカーン!」

 その時だった。横浜に爆発が起こる。

「何事だ!?」

「祐奈教官!? ジャパロボです!?」

「なに!?」

 破壊活動を行うジャパロボが現れる。

 つづく。


「我々はアイルランド解放戦線だ! 我が国を侵略した大日本帝国に復讐してやる!」

 横浜に潜水艦型ジャパロボが5体現れた。

「テロリストだ!?」

 大日本帝国は全世界を征服したと同時に、全世界から恨まれている。

「日本人は皆殺しだ!」

 ドカドカドカっとミサイルを打ち込むアイルランドのジャパロボ。略してアイルロボ。

「キャアアアアアアー!?」

「助けてー!?」

 日本人は恐れ恐怖し逃げ纏う。

「ワッハッハー! 我がアイルランドの国民が感じた恐怖を知ればいい!」

 テロリストの猛攻は続く。

「チーム祐奈! 出動・・・・・・!?」

「ここは私に任せてもらいます。」

 祐奈を遮るみなみ。

「ジャパロボ!?」

 みなみの後ろに空からみなみ専用AI結子搭載ジャパロボ・シスターが現れる。

「祐奈さん、今日は楽しかったです。ありがとうございました。」

 そう言い残すとジャパロボに乗り込むみなみ。

「素晴らしい。隊長に戦わせずに自ら先陣をきって戦ってくれるなんて。素敵。」

 祐奈はみなみ隊員の姿勢に感極まる。

「おまえたちもみなみ隊員を見ならえ!」

「zzz。」

 既に寝ているさとみとイリス。

「さとみちゃん風ひきますよ。」

 優しくブランケットをかけるすず。

「チッ。ノームさえ持ってきていれば!?」

 テロリストに出し抜かれて舌打ちする優子。

「大丈夫ですか!? ラーメン屋さん!?」

 吹き飛ばされたラーメン屋を助ける麻理子。

「みんな! チーム祐奈の初めての女子会は面白かったかな? 今日の久美チャンネルはここまで。バイバイ!」

 SNSで生中継する久美。

「麻衣。おまえは出撃しないのか?」

「はい。私はジャパロボの操縦ができませんから。アハッ!」

「・・・・・・私の部隊だから仕方がないか。ガクン。」

 隊員の自由さは統制が管理できていない隊長の責任である。

「防衛省ですか? 横浜でテロリストのジャパロボが出現! 町を破壊しています! 至急、応援を寄こしてください!」

 麻衣ができることは速やかな連絡である。


「ダブリン!? コーク!?」

 アイルロボが次々と撃破されていく。

「なんなんだ!? こんなジャパロボが日本にいるなんて聞いたことがないぞ!?」

 アイルランドのテロリストたちは1機のジャパロボの圧倒的な力の前に恐怖する。

「いくよ! 結子お姉ちゃん!」

(ええ! みなみ!)

 みなみのジャパロボであった。AIとして生きている結子が返事をしているようだった。

 つづく。


「私は反大日本帝国同盟ジャパカイダの者だ! アイルランド解放戦線に告ぐ! 武力行使はやめろ!」

 みなみはスピーカーでアイルランド解放戦線に訴えかける。

「何を言ってやがる!? おまえらもテロリストじゃないか!? テロリストが破壊活動をしないでどうする!?」

 アイルランド解放戦線はすんなりとは引き下がらない。

「罪のない人々を巻き込むな! 戦争行為は新しい悲しみを生み出すだけだ! それが恨みとなり復讐心を育て、自分たちに帰って来るぞ!」

 負の連鎖である。

「何を!? 先に仕掛けたのは日本だ! なんの罪のないアイルランドの人々に、いきなりミサイルを打ち込んで皆殺しにしたのは日本じゃないか!」

 アイルランドのテロリストの意見に正当性がある。

「でもどこかで誰かが耐えなければ、世界から戦争はなくならない!」

「それは攻撃した方の言い分だな。」

「なに!?」

「なら私たちが日本に復讐を果たした後に、おまえたちが耐えろ! 我が恨み晴らさねば死んでいった同胞たちがうかばれない!」

 アイルロボは魚雷を撃ちまくる。

「やめろ!」

 みなみの脳波をAIの結子が読み取る。姉妹だけに人間とAIのリンク率が非常に高い。

「ドカドカドカ!」

 全ての魚雷をみなみはビームで破壊する。

「一般市民を巻き込むな! 私たちが倒さなければいけないのは、一部の権力者だけだ! そいつらは国民の死などでは心は痛めない! 民衆の反感感情を利用して、新たな戦争を始めるだけだ! なぜそれが分からない!」

 同じテロリストの立場のみなみは問いかける。

「フッ、所詮テロリストでも、おまえは大日本帝国の恵まれたテロリストだ。国土を焼かれ、民を人質に取られ、いつも日本人如きに怯えて生きている。支配されている人々の絶望は、おまえには分からないんだ!」

 あくまでも徹底抗戦の構えのアイルランド解放戦線。

「この分からず屋!」

 みなみも応戦しようとする。

「ドカーン!」

 その時だった。どこからか飛んできたビームがアイルロボに直撃する。

「なんだ!?」

 3体のジャパロボが現れる。

「あいつらは!?」

 祐奈は知っているみたいだった。

「我々は大日本帝国自衛隊明日香隊である! 速やかに投降しろ! テロリストには2度も警告はしないぞ!」

 現れたのは自衛隊の明日香隊であった。

「謀ったな!? 説得するフリをして増援を待っていやがったんだな!?」

「違う!? 私は時間稼ぎなどしていない!? 自衛隊とグルではない!?」

「クソッ! こうなれば死なば諸共だ! でやあああああー!」

 アイルロボは明日香隊のジャパロボ目掛けて突進していく。

「くたばれ! テロリスト!」

 ビームサーベルの一撃でアイルロボの首を刎ねる。

「アイルランドに栄光あれ!」

 ドカーン! っとアイルロボは爆発した。

「次はおまえの番だ! テロリスト!」

 ターゲットはみなみだった。

 つづく。


「なんだ!? こいつらの動きは!? 今までの自衛隊機とは違うぞ!?」

 みなみは3体の明日香隊のジャパロボに手こずる。

「なめるなよ! テロリスト! 我が隊のジャパロボは04タイプだ! 03とは違うのだよ! 03とは!」

 ジャパロボのランク付け。民間用は02タイプ。03が自衛隊専用機。この機体のデータが奪取され全世界に広まってしまった。それで開発されたのがアイルロボ。04タイプは03の性能アップ版で強いのである。

「それがどうした!? 私のジャパロボはおまえたちを凌駕するのだ!」

 みなみは1対3でも互角以上に戦ってみせる。

「こいつ!? できるぞ!?」

「テロリストなんかに負けてなるものか!?」

「電気ネットを仕掛けるぞ!」

 明日香隊のジャパロボは3方向に分散し、ネットをみなみに投げつける。

「私の動きを封じ込めるつもりか!?」

 まだみなみはネットの本当の恐ろしさを分かっていない。

「スイッチ、オン。」

 ジャパロボから電流が流される。

「ウワアアアアアー!?」

 みなみの体に電気が流し込まれ気絶してしまう。

「これで中のテロリストも丸焦げだ。ワッハッハー!」

 明日香隊のジャパロボたちは勝利を確信する。

「ドピュン!」

 空から無数のビームが降り注ぐ。

「なんだ!?」

 ビームが電気ネットを破壊する。

「私は大日本帝国自衛隊綾幕僚長直轄部隊チーム祐奈隊長広瀬祐奈だ!」

 そこに祐奈がみなみを助けに現れる。

「え、エンペラーだ!?」

 大日本帝国自衛隊エースパイロットの祐奈の乗るジャパロボは、大日本帝国の最新鋭の科学技術が詰め込まれている最強のジャパロボであり、大日本帝国の強さの象徴でもあった。

「私は明日香隊隊長の安倍明日香だ。いくら国民的英雄の祐奈隊長のお願いでもテロリストを逃がす訳には行きませんな!」

 明日香は仕事熱心だった。

「違う! みなみ隊員は私の命令でテロリストの潜入捜査を指せていただけだ!」

「苦しいいい訳ですな。」

「麻衣ちゃん。」

 麻衣はカバンから電子パットを出す。

「はい! 見てください!」

 明日香は光学レンズで拡大して見る。 

「こ、これは!?」

 確かにみなみの履歴書に祐奈が押した採用のハンコが押してあった。

「見たか! みなみ隊員は私の部下だ。それとも、まだやるというのならエンペラーの権限でおまえたちを皆殺しにすることもできるんだぞ!」

「失礼しました!? 祐奈隊長!?」

 皇帝に乗る祐奈には様々な特典がある。

「あそこにテロリストの残党が1機残っているぞ! 早く退治してこい!」

「ギョ!?」

 アイルロボの残りが気づかれたので逃げ出す。

「待て! 待て! 御用だ! 御用だ!」

 明日香隊はアイルロボを追いかける。

「ああ~楽しかったな、女子会。今夜はぐっすり眠れそうだ。ふあ~あ!」

 人生で初めての女子会に満足している祐奈であった。

 つづく。


「結構です! 嫌です! パス!」

 麻衣は断り続ける。

「久美ちゃんは?」

「今日は久美チャンネルの生動画配信の日なので無理です!」

 久美も断る。

「ええ~ん!? 誰も私と女子会に行ってくれないよ!?」

 祐奈は第2回女子会がやりたかった。しかし第1回のチーム祐奈の女子会が散々であったので誰も祐奈とは女子会に行きたくなかった。

「当然です! あの後、私は各家訓系部署に頭を下げに行き、反大日本帝国同盟ジャパカイダをチーム祐奈直属の部隊にすることで丸く収めたんですから! 私の苦労が分かりますか!?」

「そうだ! そうだ!」

「久美! あんたは何もしてないでしょうが!?」

「したよ。私の久美チャンネルで日本からテロリストはいなくなりましたって放送したもん。」

 久美チャンネルのチャンネル登録者数は国内外に10億人以上。久美は絶対的な影響力を持つている。

「zzz。」

「大切な話をしている時に寝ないでください!」

「遂。私は地上では3分しか起きれないので。アハッ!」

 ウルトラマンチックな祐奈。

「寂しい。どうせ隊長なんて中間管理職。上官の綾幕僚長には裸逆さ刷りで防衛省に吊るされたり、部下には寝るなと怒られて、私は孤独な生き物さ。」

 哀愁が漂いながら一人で帰ろうとする祐奈。

「お母さん。」

「イリス! さとみ!」

 防衛省の出口に祐奈の娘のイリスとさとみが待っていた。

「たまたま、こっちに用があったのよ。」

「お姉ちゃん、素直にお母さんを迎えに来たって言おうよ。」

(ああ~! 私には愛する娘たちがいる! 最後に残るのはお金でも地位でも名声でもない! 家族だ! 私は幸せです!)

「イリス! さとみ! ありがとう!」

 笑顔で祐奈は娘二人に抱き着くのであった。

 つづく。

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