青い通勤

池田 蒼

第1話

携帯からは耳を突く音量で

アラームに設定したジャーマンメタルが

流れている


瞼は開けずに手で音のする付近を探る

やがて充電コードをみつけ、

そして手繰り寄せた


電源ボタンをおして朝の喧騒と化した音楽に終止符を打ち

右目でうっすら見た時刻は6時32分

まだ起きるには早い時間だ


再度瞼を閉じて眠気と共にやってくる

背中の暖かさを感じ出したくらいに

思い出したようにスヌーズがさっきのイントロを

もう一度奏で出した


観念してベッドから足を放り出し

上体を起こして再度アラームを止める

今度はスヌーズごと停止をして

携帯に起きたことを伝えた


遮光カーテンが窓全体を覆っているため

天気はわからないが、ふと隙間から漏れ入る

朝日に違和感を覚えた


明るさは晴天の時のそれと同じ程度だが

青い

窓にセロハンを貼られているような色合い

学生時代に文化祭で暗がりをてらしたイメージが

寝起きのぼんやりとした頭にフラッシュバックしていた


僕はその原因を知るために

カーテンをそっと開けた

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青い通勤 池田 蒼 @arsy_shijin

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