第2話 邂逅
魔界。
俺たちが住んでいる人間界の外には、そう呼ばれる大陸がある。
そこには魔物たちが住んでおり、そこを統治しているのが魔王だ。
魔王は代々引き継がれる『
魔界では力が全てだ。力があれば奴隷の境遇であろうと魔王になれる。人間界と比べてなんと自由で平等なのだろうか。
これらの話は、あくまでも街の人間が話していただけなので正しさに保証はない。
もしかしたら人間界と同じように自由も平等もないのかもしれない。
しかし俺は行くと決めてしまった。もう引き返すことはできない。賽は投げられたのだ。
なんてことを考えながら、夜を歩く。
足についている鉄球はそのまま歩くと地面に跡がついてしまうので、手に持っている。鉄球と足を結ぶ鎖の長さは手にもてるほど長い。鎖が長ければ歩きにくかろうという貴族の考えらしい。
俺の目的地は魔界だ。そのためには誰にも見つからずに街の外に出なくてはならない。
街は全体を城壁に囲まれており簡単には抜けることはできない。
俺はいつの日かこの街から抜け出せるようにと数年かけて城壁の下に穴を掘っていた。
奴隷法では脱走を試みたものは即、殺されるようになっている。なので、見回りの兵士や、村人の行動パターンを徹底的に把握し、誰にも見つからないように毎日穴を掘り進めてきた。
国を抜け出すために穴へと向かう。穴へは兵士に見つかることはなく、辿り着くことができた。兵士の行動パターンを知り尽くしているので当然のことだ。
穴は草で覆われている。俺が隠したので当然だ。その草をどかそうとしゃがみ込み、草に手をかけようとしたその瞬間、
『やっと見つけました!』
背後で女の声がする。
俺は草を見つめたまま考える。兵士に見つかったのか?でも兵士に女はいないはずだ。もしかしたら俺の知らないだけで女もいるのかもしれない。じゃあどうする。女一人なら倒せるかもしれない。だが女の声が聞こえただけで一人だけとは限らない。他に大勢いるかもしれない。選択肢はあるか?考えろ。考えろ。考えろ。考えろ!
穴を抜けて塞ぐ。これならなんとか逃げ切れるかもしれない。
俺は急いで、草をよけ、穴に入ろうとする。その時
『あっ!待ってください!私、あなたに会いたかったんです!』
会いたかった?妙な言い回しだ。
一体どういうことなのか、状況を把握するために後ろを振り返る。
すると、
そこには金髪の光り輝く美少女がいた。
魔王になる 糊口梅太郎 @mogi0506
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