7月20日

そろそろ居間に乱雑に転がった人形達を片づけなければなるまい。

娘ももうあれらは飽きてしまったようだ。

人形を片づけながら、私はおや?と思った。

この人形はいつ作ったものだったか……、彼にとてもよく似ている気がする。

そしてこれは彼女に、そしてこれはあの人に……これは先日来た刑事に似ているような気がする。

無意識だったが私は知り合いの顔によく似た人形を作る癖があるのかもしれない。

ただいつ作ったものだったかを思い出すことはできないが。

ようやく最後の一体になった時、私はそれが最高に悪趣味な状態であることに気が付いた。

何故今までこんな状態であった人形に気が付かなかったのだと思うほどその人形は見るに堪えなかった。

きっとこれに気付いて刑事たちは腰を抜かしたのだろう。

無理もない、何故ならその人形は梁から伸びる縄にぶら下がっていたのだ。

何かの拍子に引っかかってしまったのだろうか、それはまるで首を吊っているようだった。

ゆらゆらと揺れている様子は薄気味悪く、私は娘がこれを見る前に片づけなければとその人形に手をかけた。

だらりと垂れた手は傷だらけで、うつろに開いた瞳と目が合った。

この人形も誰かに似ている。はて?と私は首を傾げるが誰に似ているのか思い出せない。

とてもよく見知った顔なような気がするのだが……



妻も娘も来客が好きだ。

私はそんな来客相手に楽しそうにしている彼女たちを見るのが好きだ。

だからもっともっと来客が来てくれると嬉しいと思う。

そう、だから歓迎しよう。








今……我が家に足を踏み入れてこれを読んでいる君のことも……






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幽世の空蝉 @shiroyagisan

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