SNSでの炎上対策としてのリアル爆殺

@HasumiChouji

SNSでの炎上対策としてのリアル爆殺

『今時、○○党を支持してるなんて、お前、阿呆かよ?』

『はぁ? 多数派が常に正しいのか? なら、お前がナチの時代のドイツ人だったら、ホロコーストに協力するのか?』

『これだからポリコレ肯定派はwwww。今の基準で過去を裁くなよwwww。はい、論破wwww』

『どこがどう論破か、さっぱり判んねぇよ』

『じゃあ、やるか? 「爆風消火」勝負を』

『ああ、じゃあ、明日の夜の9時ぐらいから開始でどうだ? もう夜も遅いしな』

『いいよ。今からやったら、こっちが勝つのは目に見えてるので、少しぐらいはハンデを与えてやらないと面白くないからな』


 それは、SNS上の炎上対策として始まったモノだった。

 千人以下……下手したら2桁のフォロワーしか居ないクズでも、一度、「炎上」を起こす事に成功すれば、万単位・十万単位のフォロワーを持つアカウントや、与党政治家のアカウントを停止に追い込み、大企業の広報アカウントの「中の人」を変える事が可能だ。

 だが、そんなな事態を許す訳にはいかない。この社会の秩序や法治は、各自が「分際を知る」からこそ維持されているのだ。弱者が強者に、少数派が多数派に歯向かって勝った実例など存在してはならないのだ。

 少なくとも、俺を含めたこの社会の多数派は、そう考えていた。

 弱者や少数派がSNSを社会を変えてしまう為の道具として使う……そんな事態を防ぐ為に作られたのが「爆風消火」システムだ。

 SNSで「炎上」を起こそうとしてるヤツが居たり、弱者・少数派のクセに強者・多数派に粘着してる阿呆が居た場合、誰かが、そいつに「決闘」を申し込む。

 申し込まれた相手が、「決闘」を拒絶した場合、そいつのSNSアカウントは停止される。

 そして、その「決闘」で「論破」された側は……全国民および永住資格を持つ外国人・無国籍者に埋め込まれているIDチップが爆発して死ぬ。もちろん、どっちが「論破」されたかを決めるのは「観客」なので、フォロワーが多い方が有利になる。


 そして、翌日、「決闘」が始まった。

 ヤツをを9割方「論破」するまで2時間半以上……。思ったよりも時間がかかった。

 相手も相手のフォロワーも頑張ったが……今はSNSのフォロワー数こそが戦闘力なのだ。今の時代、「事実」や「真実」の意味は「SNS上のフォロワー数が多い方が言ってる事」だ。

『なぁ、あんた、ここで勝負を放棄する気は無いか?』

 なぜか、ヤツは自撮り写真らしき画像と共に、俺にそう言ってきた。

 もちろん、自殺行為だ。

 ヤツがそう言った瞬間、ヤツが『論破』されたと判断した『観客』数が既定値を超えたのだ。

『自分で負けを認めたも同然だなwwww』

『それはこっちのセリフだ。俺の本当の目的は、この「爆発消火」システムそのものを無効化する事だ』

 ヤツの爆発までのカウントダウンが始まる。どうやら、ヤツは恐怖で頭がおかしくなったらしい。

『ところで、あんたの部屋まで臭いは行ってないのか?』

 何の事……? いや待て、何だ、天井から垂れてくる変な臭いの液体は?

 それに、写真の中のヤツの体も、何かに濡れて……それに……こいつ見た事が……。

 俺が「論破」した相手が、同じアパートの真上の部屋のヤツだと気付いたのとほぼ同時に、ヤツのIDチップの爆発により引火したらしいガソリンか何かの炎が俺の部屋の天井を突き破り……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

SNSでの炎上対策としてのリアル爆殺 @HasumiChouji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ